派遣社員の2018年問題を詳細解説

前回は、労働契約法における2018年問題を解説しました。今回は、派遣法による2018年問題です。

派遣会社も一般の会社と同様に、前回ご説明した労働契約法の2018年問題の影響をうけますが、派遣会社はさらに、労働者派遣法による2018年問題の影響も受けることに注意しなければなりません。

いままで特定の業務(いわゆる政令26業務)に派遣として働いていた方は、派遣期間の制限がありませんでしたが、2015年の派遣法改正に伴い、すべての派遣労働者に対し、個人単位で派遣可能な期間は同じ企業同じ部署に対し「3年」とされました。つまり、これまで、ずっと同じ会社の同じ部署に何年も派遣労働者として働いてきた方についても2015年10月からは3年が上限とされることになりました。よって2015年10月から3年後の2018年9月いっぱいで3年を迎えることになり、これらの方は、派遣先で直接雇用してもらうか、派遣元で無期契約に切り替えてもらうかなどの選択となります。

今回は、これらについてもう少し詳しく解説していきたいと思います。

 

  

労働者派遣法の「2018年問題」の概要

派遣労働者の個人単位による派遣期間制限の導入

今回の労働者派遣法の改正は、平成27年9月30日に施行されましたが、改正前までは、いわゆる「政令26業務」(ソフトウェア開発や機械設計、ファイリングの業務など)については派遣期間の制限はありませんでしたので、ずっと同じ業務で派遣を続けることが可能でした。しかし、この平成27年の改正により、すべての業務で期間の制限が設けられるようになりました。

なぜ、この26業務を無くしたのでしょうか?その背景として、まず、この政令26業務は本来、専門性が高い業務だとされてきましたが、実際には、その運用はあいまいで、一般的な事務職でさえもここに含まれてきました。つまり、実際には専門性が高くない業務もここに含まれていたため、わざわざ26業務に限定する意味が薄れてきたといえます。また、この26業務では、期間制限がないため、半永久的に派遣を使用することができるため、派遣労働者の正社員への道が阻まれてきたと言えるためです。それらを是正するため、26業務は廃止し、すべての業務で期間制限を設けることになりました(ただ、実際に、この改正が本当に派遣労働者のためになっているかは疑問です)。

現在、期間制限については派遣先事業所単位の制限と派遣労働者個人単位の期間制限の2つが設けられています。両方ともご説明しますが、重要なのは派遣労働者個人単位の期間制限です。

事業所単位と個人単位の期間制限

 事業所単位の期間制限とは、派遣先が派遣労働者を受け入れられる期間が、3年に制限されることを指します。ただ、この「派遣先」というのは「会社」単位ではなく、「事業所」単位となります。では、事業所単位とはどういうことかと言うと、雇用保険における適用事業所の単位と同じになります。これでもわかりにくいと思いますが、本社、支社、工場、営業所などはすべて別の事業所となります。もちろん、飲食店など複数の店舗がある場合でも、それぞれの店舗が一つの事業所とみなされます。

事業所単位の期間制限は3年ですが、実はこれは、延長することが可能です。延長するためには、派遣先は、その事業所の過半数が所属する労働組合または、過半数労働組合が存在しない場合は、その事業所の過半数を代表する者に対して、意見を聞けば足ります。1回の意見聴取でさらに3年間の延長が可能なので、3年ごとに意見聴取すれば、半永久的に延長が可能ということになります。

つまり、一応の期間制限は設けられましたが、この事業所単位の期間制限についてはそれほど大きな意味を持たないことになります。 

(画像は厚生労働省HPより抜粋)

もう一つの個人単位の期間制限は、派遣先での同じ組織単位(一般的な会社での営業課や経理課などの「課」単位を想定しています)で派遣労働者として働くことができるのは最長3年とされました。派遣労働者として働きたいのであれば、まったく別の会社の派遣先で働くか、同じ会社でも別の「課」などに移って働く必要があります。例えば、営業課で3年働いたら、次は会計課などに移らなければならないことになります。

もちろん、それだけでは派遣労働者に不都合が生じるので、派遣元は3年に達した派遣労働者に対し、派遣先へ直接雇用してもらえるように依頼したり、別の派遣先を提供したりと派遣労働者の雇用の安定が図られるように講じなければなりません。

(画像は厚生労働省HPより抜粋)

尚、この個人単位の期間制限については、以下の方は対象外になります。

 〇派遣元で無期雇用されている派遣労働者

 〇60歳以上の派遣労働者

これらの方は、個人単位の期間制限はありませんので、事業所単位の期間制限にかからない限り、ずっとそのまま働くことが可能です。

 

まとめ

如何でしたでしょうか?これらの期間制限の対象となる派遣労働者が発生するのは今年(2018年)10月からになります。

特に、個人単位の期間制限については、その時点で、派遣労働者に大きな選択が迫られることになります(派遣先で直接雇用してもらうのか、同じ派遣先の別の組織に移るのか、あるいは、まったく別の派遣先に移るのか、あるいは、派遣をやめて自分で新たな就職先を探すのかなど)。

期間制限を迎えるまであと半年ほどですが、該当する方は、今から派遣元や派遣先とよく相談して、これからの方向性を今から決めておくことが重要です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です