採用から14日以内なら無条件に解雇できるか?

今回は、知り合いの経営者の方からのご質問を紹介したいと思います。

ご質問の内容は次の通りです。
「先日、新しく従業員を雇ったけど、思ったほど使えないから、解雇したい」「まだ採用から14日以内だから即日で解雇しても問題ないよね?」というものでした。実は、この会社には別の社労士さんがついているようですが、その社労士さんは、「問題ない」と答えたそうです。

本当にそうでしょうか?解説したいと思います。

  

 

14日以内なら無条件に解雇できるは誤り

採用から14日以内であれば、解雇の理由にかかわらず、解雇予告も必要なく、解雇できるというのは、誤りです。実は、このように誤解している経営者の方は多いですし、今回のように社労士さんの中にも誤解している人がいるのが事実です。

では、なぜ、このような誤解が生じているのでしょうか。それは、以前も紹介したことがある労働基準法の21条が関係しています。もう一度、労働基準法21条をみてみましょう。

労働基準法第21条
 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
1.日日雇い入れられる者
2.二箇月以内の期間を定めて使用される者
3.季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
4.試の使用期間中の者

非常に分かりにくい条文ですが、この条文は、本来、解雇する場合、「解雇予告」といって解雇日の30日以上前までに解雇日を通知するか、30日分以上の解雇予告手当を支払って即日解雇する必要があります。しかし、例外として、この「解雇予告」や「解雇予告手当」が必要ない場合を示したものです。

問題なのが、上記の「4」です。上記条文をわかりやすく言うと、「試用期間中で、採用から14日以内であれば解雇予告や解雇予告手当の必要なく解雇できますよ」と言っています。

これだけ見ると、14日以内の解雇は自由にできると解釈しそうですが、そもそも解雇は例え上記のように試用期間中で14日以内であっても自由にできるものではありません。

解雇するためには、解雇するのに客観的に正当な「理由」が必要です。特に「理由」もないのに解雇、または不当な理由により解雇すれば、それは解雇権の濫用になり、解雇自体は「無効」との判断を受けることになります。これは、労働契約法16条に記載があります。

労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

今回の場合、社長は「思ったほど使えなかったから」という理由で解雇しようとしています。おそらく、1週間程度の勤務で判断したと思いますが、本当に1週間でそんな判断が可能だったのでしょうか?「思ったより」というのは社長自身の個人的な感覚で、他の方からみれば、普通に仕事をしていると判断されるかもしれません。そんなあいまいな理由で、解雇すれば、やはり無効とされる可能性は極めて高くなります。
解雇するためには、例えば、その仕事について経験年数が長いと言っていたのに、全く知識がなく、誰の目にもあきらかに経歴を詐称していたケースなどは、認められる可能性もあるかもしれません。あるいは、暴力をふるって同僚にけがをさせたり、金品を横領したりといった場合でも解雇は認められるでしょう。
しかし、思ったより使えない程度では、解雇は当然、難しくなります。

まとめ

基本的に、14日以内での解雇は、余程のことがない限り、不可能と思っておいたほうが良いです。結局、正当な解雇の判断までには14日以上を要するので、試用期間中であっても、解雇する場合は「解雇予告」や「解雇予告手当」は必要となると考えておきましょう(もちろん解雇するのに正当な理由は必要です)。

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