点滴1回3,000万円超の新薬「キムリア」、患者負担はいくらか?

先日、白血病の新たな治療薬である「キムリア」が保険適用になることが発表されました。キムリアの公定価格は3349万3407円だそうです。点滴1回でこの価格なので、おそらく現時点で、最高額の薬になると思います。では、この薬を使った場合、患者の負担はどれくらいになるか、解説したいと思います。

 

 

  

 

キムリアとは?

キムリアによる治療は、CAR-T療法と呼ばれ、がん細胞への攻撃力を高めるように患者さん自身の免疫細胞に遺伝子改変を行う治療法で、「がん免疫遺伝子治療」にあたります。まず、患者さんの血液から免疫細胞のひとつであるT細胞を取り出し、白血病のがん細胞を標的として攻撃するためにCARと呼ばれる分子を作り出すことができるように遺伝子を導 入し、CARを発現したT細胞(CAR-T細胞)を作ります。これを患者さんの 体内に戻せるように製造された製品がキムリアです。
(上記は、ノバルティスファーマ株式会社のパンフレットより抜粋)

キムリアを一回使った場合、患者の負担はいくらか?

では、キムリアを1回使った場合の患者の負担額について解説したいと思います。

まず、キムリアの価格について確認します。キムリアの価格は先日、中央社会保険医療協議会で3349万3407円と承認されました。

これが保険適用になりましたので、単純に3割負担だと約1000万円となりますが、もちろん高額療養費の対象になります。

高額療養費制度を利用した場合の負担額を計算してみます。今回は年齢が70歳未満で協会けんぽの被保険者を前提として計算します。

高額療養費を利用した場合の患者負担額は、その収入(標準報酬月額)によって変わりますので、順番に計算していきたいと思います。

標準報酬月額が83万円以上の方の場合

計算式は、252,600円+(総医療費-842,000円)×1%になりますので、総医療費のところにキムリアの価格を当てて計算すると
252,600円+(33,493,407円-842,000円)×1%=579,114円となります。1,000万円の負担に比べれば、かなり軽減されますね。ちなみ、キムリアは基本的に1回のみの治療のようですが、例えば、他の治療などで、以前1年間に3ヶ月以上、高額療養費制度を使った月があれば4ヶ月目以降は、「多数該当」として、自己負担額が「140,100円」まで軽減されます。

標準報酬月額が53万円から79万円の方の場合

計算式は、167,400円+(総医療費-558,000円)×1%になりますので、同様にキムリアの価格を当てはめると
167,400円+(33,493,407円-558,000円)×1%=496,754円となります。
「多数該当」の場合は、93,000円となります。

標準報酬月額が28万円から50万円の方の場合

計算式は、80,100円+(総医療費-267,000円)×1%になりますので、同様にキムリアの価格を当てはめると
80,100円+(33,493,407円-267,000円)×1%=412,364円となります。
「多数該当」の場合は、44,000円となります。

標準報酬月額が26万円以下の場合

標準報酬月額26万円以下の方の場合は、計算式はなく、一律、57,600円が自己負担の限度額になりますので、キムリアを使っても57,600円のみの負担になります。「多数該当」の場合は、先ほどの標準報酬月額28万円~50万円のかたと同じ44,000円となります。

標準報酬月額が50万円以下で、かつ、市区町村民税が非課税の方の場合

標準報酬月額が50万円以下で、かつ、市区町村民税が非課税の方の場合は、さらに負担額が減って、自己負担限度額は35,400円になります。「多数該当」の場合は、24,600円となります。3,000万円以上の薬を使ってもわずか24,600円の負担で済むことになります。

高額なくすり等を使うことがあらかじめ分けっている場合は、健康保険限度額適用認定証の交付を受けましょう。

ここまでご説明したようにキムリアのような高額なくすりを使った場合でも高額療養費制度を利用すれば最大でも60万円弱に抑えることができます。しかし、高額療養費は、原則としてあとで、限度額を超えた分が返ってくる制度です。そのため、一旦、窓口で3割負担分を支払わなければなりません。キムリアの場合は1000万円以上になってしまいます。これを避けるために、このような高額なくすりによる治療を受ける前に協会けんぽ等に申請し健康保険限度額適用認定証の交付を受けましょう。これを受けておけば、窓口では、先ほど説明した自己負担の限度額まで支払えばOKになります。

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