夜勤から日勤への連続勤務は違法か?

今回は、顧問先から頂いたご質問です。
「当社では日勤と夜勤がありまずが、夜勤を終えた後にすぐに日勤となるようなシフトを組んでも労働基準法に違反しないのでしょうか?」
というものです。
この場合、労働者の方は徹夜で働き、日勤の日の夕方まで帰れないことになります。一見、違法性があるように感じますがどうなのでしょうか?
解説していきたいと思います。

  

夜勤後に日勤を行う場合

具体的に説明していきたいと思います。
A社では日勤は、9時から18時までの8時間勤務(休憩1時間)、夜勤は21時から翌日6時までの8時間勤務だとします。
そして、Bさんは、夜勤として21時から翌日の6時まで働いた後、3時間後の9時から再び勤務を開始し、18時まで働いたとします。
この場合、労働基準法違反にはなりません。また、割増賃金についても、深夜分として、上記勤務のうち10時から翌日5時までの25%加算のみで良いことになります。一見、連続勤務なので、夜勤後の日勤分はすべて残業だと思われがちですが、最初から所定労働時間としての勤務であれば、基本的には残業扱いにはなりません(ただし、この日勤勤務が突発的なものであり、この勤務により週40時間を超える場合等では残業(時間外労働)が発生する場合があります)。

上記の件に関し、平成11年の通達で「 時間外労働が継続して翌日の所定労働時間に及んだ場合、翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、 法第37条の割増賃金を支払えば、法第37条の違反にならない。」
というものがあります。つまり、「 翌日の所定労働時間の始期までの 」とあるので、割増賃金が発生するのはあくまで翌日の所定労働時間が始まるまでですので、上記の例で言えば、9時までということになります。
Bさんが、仮に、夜勤が長引き残業した場合、翌日の6時から9時までは時間外労働として割増賃金が付きますが、9時からは本来の勤務なので割増賃金は付かないということになります。

法令違反になる可能性

上記で説明したように、夜勤の後に日勤をさせても直ちに法令違反になるわけではありません。ただし、上記のような勤務状況は、労働者にとっては負担が大きいのも事実です。ごく稀にこのような勤務状況が起きるのであれば、問題ありませんが、頻繁に発生している場合には、問題となる場合があります。
労働契約法第5条は以下のように定めています。

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

これは企業に対する「安全配慮義務」を定めたものです。労働者を雇用する企業は、当然、労働者が安全に働くことが出来るように配慮しなければなりません。
 上記の勤務形態が頻繁に発生するようでは、とても安全に配慮しているとは言えないと判断される可能性もあります。そうなると安全配慮義務違反となり、損害賠償等が発生する可能性もでてきます。

日勤後に夜勤を行う場合

先ほどのBさんの例で今度は、日勤9時から18時までの勤務をした後に、再び21時から夜勤を行う場合はどうでしょうか?
この場合、同じ日に、始業時間が2回あることになるので、夜勤分については所定労度時間としては認められません。そのため、夜勤分はすべて時間外労働(残業)扱いとなります。ですから、125%の割増賃金の支払いが必要ですし、22時から翌朝5時まではさらに25%が加算され150%の賃金支払いが必要になります。
基本的には、この割増賃金の支払いを行えば法令違反になることはありませんが、企業によっては法令違反になる場合があります。

36協定違反の可能性

企業は、労働者に残業をさせる場合は、必ず労働者代表と「時間外・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署に提出しなければなりません。この 「時間外・休日労働に関する協定」 を通称36協定と呼びます(労働基準法第36条に規定されていることからこう呼ばれるようになりました)。
この36協定は、労働者にどれくらい残業させることが出来るかを労働者代表との話し合いによって決めるものです。
36協定には通常は1日の限度時間、1ヶ月の限度時間、1年の限度時間をそれぞれ協定しますが、1日にの限度時間を5時間~6時間にしている企業が多いです。もしそうなっていた場合、上記の例では1日で8時間の残業をさせているので、この段階で36協定違反になり、罰則の対象となります。
仮に、1日の限度時間を10時間などにしていた場合は、36協定違反にはなりませんが、先ほどの夜勤から日勤の場合でもご説明したように安全配慮義務違反になる可能性はあります。

まとめ

夜勤から日勤への連続勤務、日勤から夜勤への連続勤務のいずれの場合も、直ちに法令違反になるの可能性は低そうですが、場合によっては、法令違反を問われる場合もあるので注意したいところです。
ただ、どちらにしても労働者の健康を考えれば、法令違反にならなくても、こういった連続勤務は避けるべきでしょう。
労働者の不満が高まれば、定着率も低くなり、経営にも多大な影響を及ぼすことになります。

社会保険労務士事務所アクティブイノベーション

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