今回は、社会保険の観点からブラック企業かどうかを判断してみたいと思います。会社組織になっているにも関わらず社会保険に加入していない会社は論外として、社会保険には加入するが、入社から2~3ヶ月経たないと、社会保険に入れてくれない会社も存在します。そのことについての問題点と巧みに法律をかわす会社の手口についても解説したいと思います。
簡単に社会保険に加入すべき人の要件を解説
会社に勤めていれば、すべての人が社会保険に加入するわけではありません。パートさんのように労働時間が一定時間よりも短い方や、日雇いの方、契約期間が2ヶ月以内の方などは社会保険に加入することができません。逆にパートさんでも労働時間がある程度長い方は、社会保険に加入する必要があります。
ここで社会保険へ加入する義務のない方をご紹介します。逆に言うと下記に該当しない方はすべて加入する必要があります。
①日々雇い入れられる人(いわゆる日雇い労働者の方ですね)
ただし、この方でも同じ会社に1ヶ月を超えて雇われた場合は、その1ヶ月を超えた日から被保険者にならなければなりません。
②2ヶ月以内の期間を定めて雇用される方(イメージとしては短期アルバイトなどです)
労働契約書において明確に2ヶ月以内で雇用関係が終了することが記載されている必要があります。この方もその契約期間を超えて引き続き雇用された場合は、その日から被保険者になります。
③季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用されるも方(例えばスキー場での仕事や海の家などの仕事が該当します)
この方もこの4ヶ月以内の期間を超えて引き続き雇用される場合は、その日から被保険者になります。
④臨時的事業の事業所(6ヶ月以内)の事業所に雇用される方
なかなか例が難しいですが、例えば、6ヶ月以内で終了することがわかっている博覧会や展示会などがあげられます。
⑤事業所の所在地が一定しない事業に雇用される方
こちらもレアなケースですが、例えば、各地を転々としながら行う演劇や演芸のお仕事などが該当します。
⑥一部のパートタイマー・アルバイトの方
細かい規定がありますがわかりにくいのでここでは一部割愛してわかりやすく解説します。
例えば、正社員の方の勤務形態が1日8時間勤務で月~金が出勤日の会社の場合、1日6時間以上で同じく月~金で働くパートの方は被保険者になります。これが1日5時間のパートさんの場合は被保険者になりません。
1日は8時間勤務だけど月、水、金のみの出勤のパートさんも被保険者になりません。
だいたい正社員の方の3分の2以上の時間で働く勤務形態であれば被保険者になります。
ただし、現在は、従業員数が501名以上の会社にお勤めのパートさんで以下すべてに該当する方も被保険者になります。
①週の所定労働時間が20時間以上
②給与の月額が8.8万円以上(残業代や一部の手当ては除外)
③1年以上雇用される予定
④学生でないこと
上記①~⑥に該当していないのに社会保険へ加入していない場合は、法律に違反している可能性があります。
なぜ、一部の会社では加入が2~3ヶ月後なのか?
実際に、フルタイムで働いているにも関わらず、入社日から社会保険には加入させずに、加入を2~3ヶ月後にする会社は特に中小企業ではいまだに多く見られます。
なぜ、会社はこのようなことをするのでしょうか?一番の原因は、入社してすぐにやめてしまう人が多いためです。例えば、入社から1週間や2週間で辞めてしまった場合でも1ヶ月分の保険料はかかります。保険料の半分は会社が負担しているので、その分、損してしまうと会社は考えます。また、例えば3日程度で辞めてしまった場合でも社会保険の加入手続きを入社日に行っていた場合は、1ヶ月分の社会保険料がかかります。半分は会社負担ですが、もう半分は労働者から徴収しなければなりませんが3日分の給与からは引けない可能性もあります。そうなった場合、労働者から別途、会社に振り込んでもらう等をしなければなりませんが、連絡がとれないなどで難しい場合も多いです。
実際、特に最近は、入社から1ヶ月以内で辞めてしまう方というのは非常に増えてきています。
もう一つの理由は、単純に2ヶ月から3ヶ月分の保険料を払いたくないためです。先ほども書いたように、保険料の半分は会社負担なので、会社の負担を少しでも減らしたいという会社の思惑があります。
では、この行為自体は問題ないのでしょうか?
すぐには加入させない多くの会社は加入日を2ヶ月後にずらしています。これは、先に説明した 社会保険へ加入する義務のない方の②が関係しています。
「 ②2ヶ月以内の期間を定めて雇用される方 」
つまり2ヶ月以内の労働契約をまず結んで、その期間は社会保険へは加入せずに、その契約期間経過後にそのまま正社員として雇用し、そこから社会保険へ加入する方法をとっています。ただ、この場合、この2ヶ月以内の期間を「試用期間」として設定している場合(面接でそういった説明をしている場合)は、入社日から社会保険に加入させなければなりません。最初は、2ヶ月で雇用契約を終了していたが予定がかわって、その期間を過ぎても雇用することになった場合は加入は2ヶ月後で構いませんが、最初から正社員として雇用することが前提となっている場合は、最初の入社日から社会保険に加入させなければならないのです。
本来は、試用期間にあたるのに社会保険に加入させなかった場合は法的に問題があることになります。
まとめ
2ヶ月から3ヶ月後に社会保険に加入させることについて、法的に問題があるかどうかは別にしても、こういったことを行う理由のほとんどは、先ほど説明したように「労働者のため」ではなく「会社のため」です。
そういった考えが根底にある会社がホワイト企業と言えるでしょうか?
個人的にはブラック企業になる要素を秘めていると言わざるをえません。
ですから、面接時に、いつから社会保険に加入することになるかをぜひ確認してみてください。
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