サービス残業をやらされたり、残業したのに残業代が出ないのは、言うまでもなくブラック企業認定なのですが、残業代が出たとしても、その残業代の計算が間違っており、不当に低い金額しかださない企業についてもブラック企業になりうる場合があります。
計算が間違っているのを知っていて行っている会社もあれば、知識が無くて間違っているケースもあります。どちらにしても法律を順守する姿勢が低いと言えます。
今回は残業代計算においてどのような間違いが多いのかをご紹介します。
基本的な残業代(割増賃金)の計算方法
まずは、割増率について確認しておきましょう
残業(時間外労働)を行わせた場合、会社は、通常よりも高い時給での残業代を支払わなければなりません。通常の時間単価に「割増率」を掛けて計算することになりますので、まず、その割増率を確認します。
例えば、時給1000円の方(月給の方も時間給に換算して計算します)が、平日に所定労働時間の8時間を超えた場合には1時間あたり1000円×1.25=1,250円を支払わなければなりません。また、この残業が午後10時を過ぎる場合は、午後10時以降は1時間当たり1,000円×(1.25+0.25)=1,500円を支払わねければならないことになります。
休日労働の割増賃金は、あくまで法定休日に労働した場合です。土日が休日の会社の場合は、どちらか一方(一般的には日曜日)に労働した場合に休日労働の割増賃金が適用されます。法定休日ではない休日に労働した場合は、通常の時間外労働の割増賃金が適用されます。
また、休日労働が8時間を超えても割増率は35%のままです。ただし、休日労働が午後10時以降におよんだ場合のみ割増率は60%(35%+25%)になります。
問題となるケース
これまで説明したように、1日8時間を超えて働かせた場合、週40時間を超えた場合、法定休日に働かせた場合、深夜に働かせた場合は、割増率を掛けた時給で支払わなければならないのに、この割増率を掛けずに支払っているケースがみられます。
または、上記の場合よりはましですが、法定休日の労働に対しては35%の割増で計算しなければならないのに、25%で計算しているケースもみられます。
割増賃金(残業代)の計算式
時間給の場合は、単純に「時間給×時間外・休日労働時間数×割増賃金」となるので簡単ですが、月給制の場合は、以下の計算式によって行うことになります。
ここで問題なのは分子の「その月の賃金総額」です。いわゆる月給の総額ですが、その総額から以下の手当は除外することができます。
賃金総額から除くことができる手当というのは以下の7つのみになります。逆に言うと下記以外の手当はすべて含める必要があります。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
当然ですが手当の名称のみを上記のようにすればすべて除外できるわけではありません。実際の支給基準等で判断されます。
例えば、家族手当であっても、家族の有無や、家族の人数によって金額が変動するのではなく、一律に支給されるような家族手当は除外できません。
特に住宅手当については間違いが多いようです。例えば、賃貸のマンションやアパートに居住している労働者には2万円、持家に居住している労働者には1万円を支給しているというような企業は多いかと思いますが、この場合は、割増賃金の計算の基礎から除外することはできません。除外したい場合は、家賃の一定割合を支給又はローン額の一定割合を支給するなどの変更が必要になります。
問題となるケース
最も多いケースは、上記で説明した「 その月の賃金総額」を「基本給のみ」で計算しているケースです。会社によっては、残業代を減らすために、基本給を少なくして、その分手当を増やしている会社も見られますが、手当を増やしたところで、本来は、それらも含めて計算しなければならないので意味がありません(上記で説明したように一部の手当は除く) 。そもそもそういう思考がブラック企業なのですが・・・
まとめ
最初に書いたように、残業したのに、残業代が出ないのは、例外なくブラック企業と認定してよいと思います。
残業代を払っている会社でも、上記で説明したように、本来の額よりも低い額で支払っているケースもあります。このことが直ちにブラック企業となるかは別にしても、法律を遵守する姿勢は低いと言わざるを得ません。
残業代を貰っている方は、ぜひ、自分が行った残業時間と実際に支払った残業代が正しく支払われているかを、上記の計算式に当てはめて計算してみてください。
そしてもし間違っていたら会社に事情を聞いてみてください。そこでの対応でブラック企業かどうかの判断ができると思います。
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