有給休暇に関して、少し変わったご相談がありましたのでご紹介したいと思います。
ご相談の内容は、
「当社では、6ヶ月(半年)の契約社員と季節的な業務に従事する7ヶ月間の契約社員がいます。いずれも、基本的に契約更新はありません。有給休暇は6ヶ月間勤務後に発生するのですが、そもそも6ヶ月間しか契約期間がない社員に有給休暇は発生するでしょうか?また、7ヶ月間の契約期間の社員の場合は有給休暇は発生するとしても、発生してから契約終了まで残り1ヶ月間しかないのに10日の有給休暇を与えないといけないのでしょうか?」
というものでした。
こういったご相談は、初めてでしたが、確かに疑問に思うのも当然のことだと思います。
そこで、今回は、有給休暇の発生するための要件等について解説していきたいと思います。
(パートタイマーやアルバイトの有給休暇については以下の記事も是非、ご覧ください。
「パート・アルバイトの有給休暇の疑問を徹底解説!知っておきたい3つの重要ポイント」)
6ヶ月ちょうどの契約期間で有給休暇は発生するか?
労働基準法第39条第一項において以下のように規定されています。
「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」
もう少し簡単に言うと、フルタイム勤務の方で、6ヶ月間勤務して、その6ヶ月間の出勤率が8割以上であれば、10日の有給休暇がもらえるということです。
確かに、労働基準法上は6ヶ月勤務すれば有給休暇は発生しますが、雇用契約期間が6ヶ月ちょうどの場合でその後も契約更新が無いのであれば、有給休暇は発生しません。
どういうことかと言うと、有給休暇が発生するのは、6ヶ月間の継続勤務が完了した翌日に発生するためです。そのため6ヶ月ちょうどの場合は、契約最終日において有給休暇はまだ発生していないことになります。
7ヶ月の雇用契約の場合、有給休暇発生後1ヶ月しかないが、10日の有給休暇を与える必要があるか?
有給休暇の発生に関して、労働基準法は先ほども書いたように6ヶ月間継続勤務して、その間の出勤率が8割以上であれば、有給休暇が発生するとだけ規定されています。つまり、有給休暇発生要件は、過去の勤務状態のみを課しているのであって、将来、どれだけその会社で働くかは、一切要件としていません。
よって、結論として、7ヶ月の有期雇用契約であっても、フルタイムで働く方であれば、6ヶ月経過した時点で8割以上の出勤率を保っているのであれば、6ヶ月経過後の翌日に10日の有給休暇が発生することになり、残り1ヶ月間でその全てを消化してもなんら問題はないことになります。
この点について、以前、ある経営者の方とお話していたときに、その方は、例えば上記のような事例の場合、10日間の有給休暇を与えるのではなく、残りの契約期間に応じて按分して与えれば問題ないのではないか?とおっしゃっていました。
つまり、上記で言うと、次の有給休暇発生まで1年間あるので、本来はその1年間の間に有給を消化することを前提に与えているのだから、もし残存期間が1ヶ月しかないのであれば、本来の日数の12分の1、(端数は切り上げて)1日だけ与えれば良いのではないか・・・という意見になります。
これについて、実は過去、最高裁での判例(沖縄米軍基地事件 昭59.7.5)がでていて、残存期間に応じて比例按分してあたえることは出来ないと明確に判決がでています。
では、もう少し極端な例でみてみましょう。
例えば、1月16日から7月の末日までの更新なしの雇用契約を締結したとします(フルタイムでの勤務)。契約期間は半年+16日ですね。末日を給与の締日とする会社なら十分ありえる契約だと思います。
この場合、出勤率が8割以上であれば入社から6ヶ月経過後の7月15日の翌日、つまり7月16日に10日の有給休暇が発生することになります。しかし、契約更新はないので、発生日を含めて残り16日を経過すると契約期間満了で退職になります。しかも、これは暦日ですので、所定労働日で言うと(月から金曜日が所定労働日とするならば)、2016年のカレンダーだと7月16日は土曜日で18日は海の日で祝日ですから、労働日は19日から22日の4日間と、25日から29日までの5日間の合計9日間しかありませんので、有給休暇発生後、所定労働日にすべて有給休暇を当てても、1日あまることになります。もちろん、この余った1日については、単に消化しきれなかっただけなので、会社は手当等を支払う必要はありません。ただ、実質上、有給休暇発生後、1日も出勤しないまま退職が可能となります。
多少理不尽に感じるかもしれませんが、法律上は、上記の場合でも10日の有給休暇を必ず与えなければなりません。