人事労務部

期間雇用者が仕事中に事故!解雇制限は適用されるか?

今回は、労災事故と解雇制限に関するご質問がありましたので解説したいと思います。

ご質問の内容は以下のとおり、

「当社では、繁忙期の1ヶ月だけ短期のアルバイトを大量に採用します。今回、そのアルバイトが機材の運搬中に転倒し大怪我をしました。全治2ヶ月ほどということです。この場合、休業中とその後30日間が経過しないと解雇できないのでしょうか?」

というものでした。

アルバイトでも労災は適用されるのか?適用されたとすると、療養のために休業する期間及びその後30日間は、解雇制限により解雇ができないのか?について解説していきたいと思います。

 

アルバイトでも労災は適用されるか?

業務上の理由で怪我をしたのであれば、雇用形態がどのような形であろうと、労災保険を使って給付を受けることは可能です。ですから、アルバイトやパートであってももちろん可能ですし、アルバイトが例え学生であっても給付内容に変わりはありません。日雇の方であっても同様です。今回のケースの1ヶ月間の短期のアルバイトの方であっても、通常の正社員の方と同様の給付を受けることが可能です。

ただ、会社の役員の方は、労災保険を使うことはできません。会社の役員は、労働者では無く、あくまで経営者であり、もらう給料(役員報酬)は労働の対価ではなく、職務遂行の対価です。そのため、労働者として認められない以上、労災保険(労働者災害補償保険)を使うことはできません。

役員の方の中には「兼務役員」といって、労働者としての身分と役員(経営者)としての身分の両方を有している方がみえますが、この方の場合、労働者として業務を行った間に起こした事故による怪我等であれば、労災保険を使うことができます。しかし、経営者としての職務を遂行中(例えば取締役会へ参加中など)に起こした事故の場合は、労災保険を使うことはできません。また、休業補償等もあくまで労働者としての身分に基づく賃金を基に計算されます。 

期間雇用のアルバイトでも解雇制限は適用されるか?

まず、解雇制限に関する条文を確認します。

労働基準法第19条です。

第19条
 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2.前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

となっています。

これだけを見ると、期間雇用者であっても解雇制限の適用を受けるのではないかと思いますが、そもそも、契約期間満了での退職は、解雇ではありません。雇入れの際に、あらかじめ雇用期間を定めて労働契約を結んでいる場合には、そのあらかじめ定めた雇用期間が満了すれば、当然に労働契約は終了することになります。これは解雇ではなく、労働契約の終了です。そのため、期間満了で退職してもらう分には、そもそも解雇制限の問題は生じないのです。そのため、結論としては、期間雇用者が仕事中に事故を起こして怪我をし、その怪我が治癒していなくても、事前に定めた雇用期間の満了日が到来すれば、労働契約は終了するということになります。

ただ、あたりまえの話ですが、雇用契約期間満了前に解雇することは許されません。会社は、満了日まで雇用する義務があります。

今回と同様の質問として「定年退職」の場合はどうか?というのもよくご質問されます。
定年退職の場合も、上記と考え方は同じで、あらかじめ就業規則等で明確に定年年齢が定められていれば、定年年齢に達すれば、雇用契約は自動的に終了することになりますので、この場合も解雇制限の問題は生じません。

 

 

モバイルバージョンを終了