いざ退職することが決まったとき、考えなければならないこととして、「健康保険」をどうするかがあります。次の転職先がすでに決まっている場合は、考える必要はありませんが、少しでも無職の期間が発生するのであれば、退職後の健康保険をどうするか慎重に選択しなければ、「損」することにもなりかねません、
今回は、退職後の健康保険で損しないために、どのような選択肢があるか、解説していきたいと思います。
退職後の健康保険の選択肢は3つ
冒頭でも少し書きましたが、今の会社を退職して、間をあけずに、次の再就職先が決まっているのであれば、強制的にその転職先の会社の健康保険に加入することになるので、その場合は、何も考える必要はありません。
しかし、少しでも無職の期間が発生するのであれば、その期間は、基本的に次の3つ選択肢から選ぶことになります。
①今の会社(退職前)が加入する健康保険に任意継続被保険者として加入する
②住所地の国民健康保険に加入する
③扶養してくれる家族がいる場合、扶養となり、その家族が加入している健康保険の被扶養者になる
上記3つの選択肢について詳しく解説したいと思います。
今の会社(退職前)が加入する健康保険に任意継続被保険者として加入する
ただし、この任意継続被保険者になることが出来るのは、前の会社で健康保険に2ヶ月以上加入していた方のみになります。そのため、入ってすぐ辞めてしまった方は申請できませんので注意してください。
協会けんぽの任意継続被保険者の申請書(申出書)はこちらからダウンロードできます。
また、申請できる期間が短いのでこちらも注意してください。申請できる期間は、退職日の翌日から20日以内です。前の会社では何もしてくれないので、ご自身で忘れずに手続する必要があります。退職後は、他の手続等でバタバタしてこの申請期間に間に合わなかったという方が、非常に多いです。是非、注意して申請を進めてください。
次に重要なのは、任意継続保険者の保険料です。これがいくらになるかですが、原則として退職時の標準報酬月額で決まります。標準報酬月額がいくらになっているかは、会社に確認してみてください。この標準報酬月額が28万円以下の方は、直近の給与明細で控除されている健康保険料を単純に2倍にした額が任意継続被保険者の保険料となります。会社に勤めている間は、本来の保険料の半額を会社が負担してくれていましたが、任意継続被保険者場合は、その会社が負担してくれていた分も自分で負担することになるので単純に倍の保険料がかかることになります。
標準報酬月額が28万円を超える方については、28万円の標準報酬月額として任意継続被保険者の保険料を計算してくれます。例えば、98万円の標準報酬月額の方が退職し、任意継続被保険者になった場合でも、保険料は標準報酬月額28万円として計算してくれるので、かなり「お得」になります。要するに、退職時の給与が高ければ高いほど、任意継続被保険者になったほうが「得」ということになります。
(この28万円は「協会けんぽ」の場合です。健康保険組合の場合は、それぞれ額が異なる場合がありますので、事前に組合に確認してください)
ちなみに任意継続被保険者でいられる期間は最長で2年間です。この2年間は保険料額がかわることはありません。
住所地の国民健康保険へ加入する
2つ目の選択肢は、市区町村の国民健康保険に加入するです。こちらを選択される方が一番多いのではないでしょうか?でも、安易に選択するのではなく、国民健康保険料と上記の任意継続被保険者の保険料を比べて、安いほうに加入されるのがベストだとは思います。
ただ、国民健康保険料は、各市区町村によっても異なりますし、ご自身の前年の年収によっても異なるので、一概にここで「保険料はいくらです」とは言えません。各市区町村の窓口で、国民健康保険に加入した場合、いくらの保険料になるかは教えてくれますので、そこで、正確な保険料を確認し、先にご説明した任意継続被保険者の場合の保険料と比べてみてください。
また、もし、解雇や会社の倒産などで退職せざるを得なかった場合など、市区町村によっては保険料を減額してくれるところもあるので、それらの制度の利用も考慮しつつ、保険料を比べてください。
国民健康保険への加入手続きは、原則として退職日翌日から14日以内に、健康保険の資格喪失証明書等を窓口に提出し確認を受け、手続きを行いますが、14日を過ぎても手続は可能です(早いにこしたことはないですが・・・)
扶養してくれる家族がいる場合、扶養となり、その家族が加入している健康保険の被扶養者になる
3つ目の選択肢は、扶養してくれる家族がいる場合、扶養となり、その家族が加入している健康保険の被扶養者になるです。こちらを選択することが出来るのであれば、一番お得な方法になります。なぜなら、被扶養者になることができれば、保険料はかからないからです。
ただ、要件がいくつかあります。60歳未満であれば、将来に向かっての年収が130万円未満、60歳以上であれば年金も含めて将来に向かっての年収が180万円未満である必要があります。さらにその額が同居の場合、扶養してくれる方の年収の半分未満であることが必要で、別居の場合は仕送り額より少ないことが必要になります。
少し例をあげてご説明します。
例えば、共働き夫婦のい家庭で、奥さんが仕事を辞めた場合は扶養に入れるでしょうか?退職した時点で、将来に向かっての年収は0円なので、要件を満たしますが、もし奥さんが、雇用保険の失業給付を受給する場合は、失業給付の日額が3,612円以上だと、失業給付受給中は扶養に入ることはできません(詳しくは、別記事「 健康保険の扶養に入る条件、外れる手続とタイミングを詳細解説」をご覧ください)。もし、失業給付を受給しない場合で他に収入が無いのであれば扶養に入ることは可能です。
次、息子さんが会社を辞めてお父さんの扶養に入ろうとしましたが、息子さんはすぐにアルバイトを始めて、月収は10万円ほどです。退職前の年収は500万円ほどです。この場合はどうでしょうか?
息子さんの将来に向かっての年収は10万円×12ヶ月で120万円です。要件の130万円未満なので要件を満たします。退職前の年収が500万円ありましたが、これは関係ないです。例え年収が過去1000万円あったとしても構いません。扶養に入ることが可能です。
以上のように、家族のだれかの健康保険(国民健康保険ではありません)の扶養に入ることが出来るのであれば、保険料の観点からは、それが最も良い選択だと言えます。
まとめ
退職後の健康保険は、上記の3つの選択肢がありますが、実務上、いろんな方の選択をみていますが、多くの方が、特に何も考えず家族の扶養に入れるのであれば、扶養に入り、入れなけば国民健康保険を選択する場合が、ほとんどのように思います。
ただ、見ていると、最初の「任意継続被保険者」をい選択したほうが、保険料が安くなるケースも多くあります(特に年収が高かった方については)。なので、面倒臭いとは思いますが、任意継続被保険者と国民健康保険の保険料を比較検討されることをおすすめします。