昔の会社は、就業規則で副業を禁止しているところが多かったです。なぜ禁止にするかというと、いろいろな理由がありますが、副業は本業が終わってから働くことになりますから、当然、夜間に働くことになり、場合によっては翌日の本業に支障が出ることも考えられます。そのため禁止にしている会社が多かったのです。しかし、昨今は、本業の賃金がなかなか上昇しない、残業も規制されるということもあり、副業を認める会社がかなり増えてきています。しかし、副業での賃金の支払い方には注意が必要となりますので、今回はこのあたりを解説したいと思います。
副業のアルバイトでは基本的にすべての時間で25%割増が必要となる
例えば、副業として、本業が終わった後に、コンビニや飲食店でアルバイトするケースで考えてみたいと思います。
本業の就業時間は、9時から18時(休憩1時間)だとすると、1日の労働時間は8時間になります。そして19時から22時までコンビニでアルバイトしたとしましょう。
本業の労働時間は8時間、副業のコンビニでの労働時間は3時間ですから、どちらも8時間以下ですから、一見、残業は発生していないので、割増賃金も必要が無いと考えるのは、普通のことです。
しかし、労働基準法38条において次の記載があります。
「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」
つまり、どういうことかというと、会社が違っても労働時間としては通算するので、1日8時間を超えた労働については、それをさせた会社が割増賃金を払わなければならないということです。
ですから、さきほどの例で言えば、本業で8時間勤務した後に、コンビニでのアルバイトの3時間を行うわけですからコンビでの3時間分はすべて時間外労働ということになり25%割増で賃金を計算しないといけないということです。
そのため、コンビニ側は、そのコンビニ以外でその人が働いているかどうかを確認しなければなりませんし、もし働いいるのであれば、それを考慮して25%割増で計算した賃金を支払う必要があります。
例えば、夜間のコンビニなので時給1200円で人を募集する場合、このうち960円が基本時給、残り240円を割増賃金の25%分として支払うように雇用契約書には明記しておく必要があります。
副業でアルバイトをする方が上記を意識して応募されるケースは少ないと思いますが、法律上、コンビニ側は割増賃金の支払い義務を負っているので、のちに、思わぬトラブルに合わないためにも、上記のような賃金設定を考えておく必要があります。
では、例えば、アルバイトに応募してきた方が、「他では働いていない」と嘘をついて場合はどうなるでしょうか?この場合、ケースバイケースですが、会社側が、きちんと確認したにもかかわらず、労働者が完全に嘘をついていた場合は、割増賃金の支払いまでは必要ないと考えます。ただ、面接時に、聞いただけだと、あとで言った言わないの水掛け論になる可能性もありますので、一筆、書いてもらったほうが良いかもしれません。
まとめ
基本的には、副業している会社側に、割増賃金支払いの義務が発生するのですが、場合によっては、本業側に割増賃金の支払い義務が発生する場合もありますので従業員の副業を解禁する場合には、届出制にするなど、従業員の勤務状況を適正に把握しておく必要があります。