今回は、健康保険組合の「特例退職被保険者」について解説したいと思います。
実は、この「特例退職被保険者」については、お恥ずかしい話ですが、私も最近、知りました。それは、今まで、一度もこの制度に触れたことがなかったためです。実は、少し特殊な制度になります。そのあたりも含めて解説します。
特定被保険者制度の概要
一部の健康保険組合にのみ存在する特殊な制度
特例退職被保険者制度は、誰でも利用できる制度ではありません。現状では、健康保険組合の中で一部の健康保険組合のみに存在する制度になります。
健康保険組合というのは、主に大企業等あるいは同じ職種ごとに健康保険法の下で独自に運営する健康保険制度になります。一般的に、中小企業は協会けんぽの健康保険、大企業や一部の中小企業がこの健康保険組合の健康保険、自営業者や無職の方は、市区町村の国民健康保険組合に加入することになります。
で、この健康保険組合というのは、現在、約1400弱の組合が存在していますが、今回紹介する特例退職被保険者制度は、この健康保険組合の中で特別に認可を受けた「特定健康保険組合」にのみ存在します。現在、この「特定健康保険組合」の数は、「61」しかありません。主な組合名を挙げると「ソニー健康保険組合」「パナソニック健康保険組合」「日本生命健康保険組合」「三菱UFJ銀行健康保険組合」「野村證券健康保険組合」などがあります。
つまり、社会保険労務士であっても、顧客にこれらの健康保険組合に関係がある方がいないと触れることはありません。
基本的には「任意継続被保険者」と同じ
特例退職被保険者制度は、基本的には、任意継続被保険者と同じです。任意継続被保険者は、会社を退職後2年間に限り、これまでの健康保険を継続できるものです。この制度と基本的には、同じなのですが、最大の違いは、加入できる期間です。先にも書いたように任意継続被保険者は、退職後2年間しか加入できませんが、この特例退職被保険者は、なんと「74歳(75歳になるまで)」まで加入できます(75歳以降は後期高齢者医療制度へ移行するため)。
ただ、特定健康保険組合に加入していた方すべてが、特例退職被保険者になれるわけではありません。
特例退職被保険者になるための要件は以下です(組合によって異なる場合があります)
・被保険者期間が通算20年以上(または40歳以降に10年以上)ある方
・老齢厚生年金の受給申請を行った方
・日本国内に住民票を有する人
任意継続被保険者に比べると、厳しい要件になっています。特に老齢厚生年金の受給申請をおこなっている必要がありますので、現在(R3年)ですと男性は65歳以降、女性は62歳以降の申請ということになります。
そのため、退職時には上記要件を満たせなくて、一時的に国民健康保険に加入したとしても、その後に老齢厚生年金の受給申請を行った場合は、年金証書受領日の翌日から3カ月以内に申請することで、特例退職被保険者になることができます。
要件は厳しいですが、保険の内容自体は、現役の被保険者とかわらないのでメリットは大きいですが、一度、加入すると資格喪失事由に該当しない限り、資格を喪失することはできませんので注意が必要です。
また、一度、資格喪失すると、再加入はできなくなるので、この点も注意が必要です。
まとめ
特例退職被保険者は、かなり特殊な制度なので、関係ある方は、かなり少数ですが、上記の特定健康保険組合にお勤めの方は、有益な制度ではありますので、一度、組合等で確認されてはいかがでしょうか。