人事労務部

社会保険の同月得喪とは?注意点も解説

コロナウイルスの影響も少し和らぎ、最近は、少しずつ、企業の入退社が増えてきたころかなと思います。新卒で入社したにしろ、中途で入社したにしろ、会社としては、出来るだけ長く勤めていただきたいものですが、実際には、そうはいかないケースも多いです。会社としてはせっかく求人広告等を使って苦労して、入社してもらったのに、すぐに辞めてしまったというケースも少なくないでしょう。
そんな時、注意しなければならないのが、社会保険の同月得喪です。
今回は、この同月得喪がどういうものなのかとその注意点について解説したいと思います。

  

社会保険の同月得喪とは

社会保険の同月得喪とは、文字通り、同じ月内で社会保険の取得日と喪失日があることを言います。
例えば、4月1日に入社して、4月20日に辞めてしまった場合などを言います。
この同月得喪は、あくまで暦月内での取得と喪失を指しますので、例えば、給与が20日締めの会社で4月21日に入社し、5月10日に辞めた場合は、同じ給与計算期間内ですが、入社した月と退職した月が違うため同月得喪にはなりません。

同月得喪の注意点

同月得喪が生じた場合の注意点は、保険料の徴収についてです。
通常、例えば4月20日が退職日の場合、4月分の社会保険料はかかりません。これは、社会保険のルールとして、「退職日の翌日が存在する月の前月までが社会保険料の徴収の対象となる」というのがあるためです。
そのため、例えば4月30日退職の場合は、その翌日である5月1日が存在する月は「5月」なので、その「前月」分まで社会保険料がかかるということは「4月分」までがかかることになります。
一方、先ほどの例で、4月20日退職の場合は、4月20日の翌日である4月21日が存在する月は「4月」なのでその前月である「3月」分までの保険料が必要ということになります。
よく会社にとって退職日は、末日の1日前が良いとされるのはこのためです。4月29日の退職であれば、4月分の社会保険料はかかりません。
話を戻しますが、上記が原則ではありますが、例外として、今回の「同月得喪」があります。
同じ月に取得と喪失がある場合は、退職日が末日でなくても、その月の社会保険料がかかることになります。
よって、4月1入社、4月20日退職の場合は、「4月」分の保険料が1ヶ月分まるまるかかることになるので、給与計算の際には、この20日分の給与から、1ヶ月分の社会保険料を控除しておく必要があります。
そのため、例えば、4月1入社で4月5日に辞めてしまった場合でかつ社会保険には加入してしまった場合は、この5日分の給与から社会保険料を控除しなければならず、この場合、給与額よりも社会保険料のほうが高くなる可能性があります。
その場合は、労働者から別途、徴収しなければなりません。
このあたりを忘れるケースもありますし、労働者からの徴収は事実上できないので、その分は会社が持ち出しするケースも少なくありません。

徴収した保険料を還付しなければならなくなるケースも存在する!

同月得喪が発生した場合は、上記で説明したように、1ヶ月分の社会保険がかかり、原則として、給与から控除しなければなりません。あくまで、これが原則となります。
そのうえで、徴収した保険料のうち厚生年金保険料のみ数ヶ月後に、労働者に還付しなければならないケースがあります。
どういうことかと言うと、
「厚生年金保険の資格を取得したその月にその資格を喪失し、さらにその月に国民年金または厚生年金保険の資格を取得した場合は、先に喪失した厚生年金保険料等の納付は不要となる」
というルールがあるためです。
分かりやすい例でいうと自社に4月1日入社し、4月20日に退職、そして、4月25日に他社へ入社し社会保険に加入した場合などが考えられます。
あるいは辞めてすぐの4月21日に国民年金への加入手続きを取った場合も考えられます。

上記のようなケースが起こった場合、おおむね退職から6ヶ月後くらいに、会社に「厚生年金保険料等の調整に関するお知らせ」が管轄の年金事務所から届きます(タイトルは年金事務所によって異なる可能性があります)。
これが、もし届いたら、労働者から徴収した保険料の内、厚生年金保険料分を還付する必要があります。
これが届かなかった場合は、還付する必要はありません。

まとめ

上記のように、ケースによっては還付が必要となる場合もありますが、原則的には、保険料は徴収しなければならないので、注意が必要ですね。ただ、実際に還付すると、労働者からは、そもそも給与計算が間違っていたんじゃないかと思われることもありますが、計算自体を間違えたわけではないので、そのあたりは、上記を説明して、納得していただく必要があるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

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