10月から本年度の最低賃金が適用になっていますが、10月分の給与計算において、労働者の方の給与が本当に最低賃金以上になっているか不安だというご相談を受けましたので、今回はその確認方法を解説したいと思います。
最低賃金については、以前にも解説しているので一部、重複する箇所があるかもしれませんがご了承ください。
最低賃金を満たしているかの確認方法
時間給の場合
時間給の場合は、単純にその時間給が最低賃金を上回っていれば良いだけなので問題ないかと思います。
ちなみに愛知県の令和5年10月からの最低賃金は「1,027円」ですのでこれを超えていれば良いことになります。
昨年までは製鉄業、製鋼・製鋼圧延業、鋼材製造業、輸送用機械器具製造業については、特定最低賃金として、通常の最低賃金とは金額が異なっていましたが、今年に関しては、すべて「1,027円」となっていますのでご注意ください(特定最低賃金という制度自体が無くなったわけではありません)。
あと、飲食店などで、深夜の時間帯の時給を例えば「1,250円」となっている場合、これは深夜割増分(25%割増)を含んでいることが多いため、この場合、ベースの時間給は1,000円となり、最低賃金を下回るため注意が必要です(違反している飲食店が実際にあります)。
あと、実物給与として食事の支給がある場合はそれを時給換算して加算できるのでこの点も注意してください。
日給の場合
日給の場合は、その日額をその日の所定労働時間で割ることで確認できます。
例えば日給9,000円でその日の所定労働時間が8時間であれば、9,000円÷8時間=1,125円となり、最低賃金以上になっていると確認できます。
日給の場合も先程の時間給の場合と同じで、深夜勤務の場合は深夜割増分を除いて計算する必要があるので注意が必要です。例えば深夜10時から翌朝6時までの8時間勤務の場合(愛知の例)、(1,027円×7時間×1.25)+(1,027円×1時間)=10,014円となり、日額がこの金額以上であれば問題ありません。
月給制の場合
月給制の場合は、
(基本給+諸手当<但し皆勤手当、通勤手当、家族手当、残業や賞与などは除く>)÷1ヶ月平均の所定労働時間
が最低賃金額を上回っていれば問題ないのですが、この1ヶ月平均の所定労働時間が分からないという方も多いです。
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基本的には、以下で計算できます。
(365日<閏年は366日>-年間休日日数)÷12×1日の所定労働時間
でも、変形労働時間制を採用していたり、日によって1日の所定労働時間が異なる場合は、これでは計算できないので注意が必要です。
月により所定労働時間が異なる場合には、年間の総所定労働時間を 12 か月で除したものになります(シフト制の場合などはこちらを使ってください)。
歩合給がある場合
営業マンなどで、毎月固定の給与とは別に歩合給(インセンティブ)の支給がある方も多いかと思いますが、この場合は、具体例で説明します。
Aさん
基本給100,000円、営業手当50,000円、通勤手当10,000円、その他の手当は無し。但し、残業代は別途支給。
今月の歩合給 125,000円、今月の総労働時間200時間。
月平均所定労働時間170時間。
上記の場合で説明します。
まず固定給部分を時間給換算します。
基本給100,000円+営業手当50,000円=150,000円(通勤手当・時間外手当は含めてはいけません)。
150,000円÷月平均所定労度時間170時間=882.352…円
(これだけでは最低賃金を下回ります)
次に歩合部分の計算
歩合給125,000円÷200時間=625円
先程の固定給部分の時間換算額を足すと882円+625円=1,507円となり、最低賃金を上回るので問題ありません。
仮に、普通に勤務したが営業成績が悪く歩合給が0円だった場合は、最低賃金を下回るので注意が必要です。
その他の注意事項
※派遣労働者の場合は、派遣元ではなく派遣先所在地の最低賃金が適用されます。
※パート・アルバイトでも当然に最低賃金が適用されます。
※試用期間中でも最低賃金は適用されます(減額特例の許可を受ければ下回ることも可能ですが、きわめてハードルが高いため通常は適用されると考えてください)。
※以下の賃金は最低賃金の対象にはならないので除外して計算してください。
①臨時に支払われる賃金(結婚祝い金など)
②1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
③時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金など)
④精皆勤手当、通勤手当、家族手当(名称に関わらず実態で判断)