人事労務部

1日のズレで大損!?社労士が教える育休中の社会保険料免除ルールと失敗しないスケジュール構築術

「育休を取れば社会保険料が浮くんでしょう?」

そう考えて計画を立てている従業員や人事担当者の方、ちょっと待ってください!

実は、令和4(2022)年10月の法改正により、育児休業中の社会保険料免除ルールは大幅に変更・厳格化されました。旧ルールの感覚(「月末に1日だけ休めばボーナスの社会保険料も浮く」など)のまま手続きを進めると、「免除されると思っていた保険料が手取りから引かれてしまった…」という大トラブルになりかねません。

本記事では、社会保険労務士の立場から、法的な根拠に基づき「毎月の給与」「賞与(ボーナス)」それぞれの免除条件を分かりやすく整理し、失敗しない取得タイミングを解説します。

1. 法改正の背景:なぜルールが変わったのか?

以前は「月末時点で育児休業を取得していれば、その月の社会保険料(給与・賞与ともに)が免除される」というシンプルなルールでした。

しかし、短期の男性育休(産後パパ育休など)が推進される中、「ボーナス支給月の末日だけ1日育休を取得して、高額な社会保険料免除を受ける」という、実質的な節税対策のような利用が横行したことが問題視されました。

そこで、「短期育休を取得しやすくする(緩和)」一方で「不自然な節税目的の取得を防ぐ(厳格化)」というバランスをとる形で、健康保険法および厚生年金保険法上の免除要件が見直されたのです。

2. 【毎月の給与】社会保険料が免除される条件と「開始月」の判定

毎月の給与(標準報酬月額)にかかる社会保険料の免除期間は、健康保険法第159条第1項および厚生年金保険法第81条の2第1項に規定されています。

【法的根拠】 「育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間…(以下略)」において保険料を免除する。

この条文に基づき、毎月の給与にかかる社会保険料は、以下のいずれかを満たす場合に免除されます。

パターン A:育休期間に「月の末日」が含まれている場合(月末判定)

育休開始日が月の中旬(例:10月15日)や月末日(例:10月31日)などの月途中であっても、その月の末日に育休中であれば、開始した「その月(10月分)」全体の保険料が免除されます。

パターン B:同月内に育児休業を開始・終了し、その日数が「14日以上」ある場合(同月完結)

月末を含まない短期育休であっても、同一月内で育休を開始・終了し、その育休期間が14日以上あれば、その月分の保険料が免除されます。

💡 社労士の補足ワンポイント

「14日以上」のカウントには、会社の所定休日(土日祝日など)も含まれます。シフト上の休日を含めたカレンダー上の暦日で判定するため、休日の挟み方を含めて日数を計算することが重要です。

3. 【賞与(ボーナス)】ここが一番の落とし穴!免除の厳格化

最も注意が必要なのが賞与にかかる社会保険料です。

給与のように「月末にたまたまかかっていた」「14日休んだ」だけでは、賞与の社会保険料は免除されません

判定ルール(賞与)

【OK例とNG例で比較】(6月15日に賞与支給/6月30日が末日のケース)

⚠️ 注意!「1か月超」の計算方法と法的根拠(民法第143条)

社会保険上の「1か月」という期間計算は、**民法第143条(暦による期間の計算)の規定が適用されます。

同条第2項の規定(「起算日に応当する日の前日に満了する」)に基づき、例えば6月20日開始であれば、翌月応当日の前日(7月19日)までがちょうど「1か月」となります。

したがって、法律上の「1か月を超える」**を満たすには、7月20日以降まで取得して初めて免除対象となります(7月19日終了では「ちょうど1か月」のため不可)。行政通達(昭和50年4月30日保発第25号等)におきましても、この民法の暦年計算に則り厳格に判定されます。

4. 人事・従業員が知っておくべき実務上の「損をしないテクニック」

取得時期を数日スライドさせるだけで、手取り額(免除額)が数万円〜十数万円変わることがあります。

① 「産後パパ育休」を分割取得する場合の注意

産後パパ育休は2回に分割取得できますが、同月内でそれぞれ「7日間+7日間=計14日間」取得した場合、同一月内の合計が14日以上となるため、その月の給与保険料は免除対象となります。ただし、月をまたぐ分割の場合は各月ごとに判定されるため注意が必要です。

② 復職日を「月末」にするか「翌月1日」にするか

例えば、5月下旬から育休に入り、5月末で復職するか、6月1日復職にするかで大きく変わります。

まとめ:正確な法理解と事前シミュレーションが不可欠

育児休業中の社会保険料免除は、従業員にとっても手取りに直結する非常に重要な制度です。しかし、制度が複雑化した現在、「良かれと思って設定した日程のせいで、免除対象外になってしまった」というトラブルが後を絶ちません。

人事担当者様におかれましては、就業規則や社内制度の周知とともに、申請を受け取った時点で「給与・賞与の免除条件を両方満たしているか」をチェックリスト等で必ず確認することをおすすめします。

計画段階で疑問が生じた場合は、自己判断せず、担当の社会保険労務士までお気軽にご相談ください!

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