雇用保険に加入している方が、子供を出産して、育児休業に入ると受給できるのが「育児休業給付金」です。
雇用保険から出るのですが、そもそもこの給付金の制度自体を知らないという方も多いですし、存在を知っていても、いつまでにどのように申請して、いくらもらえるかなど詳細までは、ご存じたい方が多いようです。
そこで、今回は、この「育児休業給付金」のしくみと具体的な申請方法について詳しく解説していきたいと思います。
育児休業給付金はどういった人が貰えるの?
まずは、ご自身が「育児休業給付金」を貰えるかどうかの確認をしましょう。
育児休業給付金を貰える人は、以下の条件に該当している人です。
条件1 雇用保険に加入していること
育児休業給付金は、雇用保険から支払われる制度なので、ご自身が会社で雇用保険に加入している必要があります。雇用保険に加入してれば良いので、パートさんであっても構いません。週20時間以上働くパートさんであれば雇用保険には加入しているはずです。普通に、正社員として働いているのであれば、雇用保険には加入しているはずです。ご自身が雇用保険に加入しているか心配なら、給与明細を見て雇用保険料が引かれていれば加入しています。
条件2 育児休業をしていること
「育児休業給付金」という名前のとおり、育児休業をしている必要があります。では。育児休業とはどういうものでしょうか?
ここで言う育児休業とは、平たく言うと「1歳に満たない子供を育てるために会社を休んでいること」となります。
もう少し厳密に言うと、出産後56日間は、会社を休んでいたとしても、育児休業ではなく「産後休業」となりますので、正確には、出産後57日目から子供が1歳になるまでの間で、かつ、会社を休んでいる期間が「育児休業」となります。
条件3 育児休業前に少なくとも1年以上雇用保険に加入していたこと
実は、この条件が一番、分かりにくいところです。正確な表現で言うと「育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヶ月以上あること」となっています。非常に分かりにくいですよね。
重要なのは「賃金支払基礎日数が11日以上」という点です。一般の方はこれを聞いてもよく分からないと思いますが、例えば、完全月給制(基本的に休んでも給料が減らない)の方は、その月の暦日数=賃金支払基礎日数となるので、特に問題はないと思います。
一般的に最も多いであろう完全月給制ではない「月給制」の場合はどうでしょうか?月給制の場合、欠勤した場合その分、欠勤控除されますが、その計算方法が、「欠勤しなかった場合の月給額÷月平均の所定勤務日数」となっている場合、欠勤しなかった月の「賃金支払基礎日数」=「月平均の所定勤務日数」となります。ですので、例えば月平均の所定勤務日数が23日で、1日欠勤したら、その月の賃金支払基礎日数は「22日」ということになります。
日給制の場合は、出勤日数=賃金支払基礎日数になるので簡単ですね。
では、パートさんなど時間給の場合はどうでしょうか?この場合も基本的には、その月の出勤日数が賃金支払基礎日数と考えて頂いて構いません。
こうやって計算した「賃金支払基礎日数」が11日以上ある月が、過去2年間に12ヶ月以上必要ということになります(もちろん雇用保険に加入している期間に限ります)。
尚、過去2年間というのは、別に同じ会社である必要はありません。転職等されている場合は、前後の会社の雇用保険加入期間で見ても構いません。ただし、前職を辞めた後に、失業給付を受給している場合は、前職の雇用保険加入期間は通算できませんので注意が必要です。
育児休業給付金はいくら貰えるの?
ご自身が上記の条件に該当しているとして、では、いくらぐらい「育児休業給付金」はもらえるのでしょうか?計算方法は以下になります。
さて、ここでまた聞き慣れない言葉が出てきています。「休業開始時賃金日額」です。この休業開始時賃金日額を計算しないといくら貰えるかわからないので、まずこれを計算します。
休業開始時賃金日額は、育児休業開始前、6ヶ月間に支払われた給与額を180で割って計算します。ボーナス等は含みません。
例えば、10月1日から育児休業を開始した場合は、4月、5月、6月、7月、8月、9月分の給与を合算して、それを180で割ります。
具体例で言うと、4月(23万円)、5月(24万円)、6月(22万円)、7月(24万円)、8月(22万円)、9月(23万円)だった場合、この6ヶ月の合計給与は138万円なので、これを180で割ると7666円となり、これが「休業開始時賃金日額」となります。
30日を一つの単位とするので、7666円×30日=229,980円となって、この金額の67%である154,086円が30日あたり貰える金額となります(但し、休業開始から6ヶ月経過後は支給率が50%に減らされるので、114,990円となります)。
また、上記の表のように、会社から一部、給与が支払われると、その分減額されますので注意してください。
育児休業給付金の申請はどうやって行うの?いつまでに行う必要がある?
今これをお読みになっているのが、育児休業を取得するご本人であれば、育児休業給付金の申請に関しては、基本的に会社が行ってくれるはずなので、申請書に本人の署名押印欄があるので、そこに署名押印するだけです。
ただ、現実には、会社がこの制度を知らないということもあり得ますので、会社に「育児休業給付金を取得したいんですけど・・・」と一言、伝えておいた方が良いと思います。
ここでは、会社の総務部などで、申請を担当する方向けに、申請方法を解説したいと思います。
会社で育児休業取得者が出たときに最初に行う手続は、「育児休業給付の受給資格確認手続」でこれは、初回の支給申請と同時に行うことが出来るので、通常は、初回支給申請と同時に行います。支給申請と同時に行う場合の提出期限は育児休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月の末日までとなっています。
例えば、10月21日に育児休業を開始したとすると、4ヶ月後は、翌年の2月20日なので、提出期限はその末日の2月28日ということになります。この提出期限は、1日でも遅れると受給できなくなるのでくれぐれも注意してください。
この最初の提出期限までに提出する書類は、
「雇用保険被保険者休業開始時陳月額証明書(育児)」と
「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」
です。
このほかに、対象者の賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、雇用契約書などが必要になります。
雇用保険被保険者休業開始時陳月額証明書(育児)ですが、過去に雇用保険の離職証明書(離職票)を作成したことがある方であれば、書き方はほぼ同じになります。
以下に記入例と注意点を表示しておきます。
(クリックで拡大できます)
この証明書の内容によって、ハローワークは、受給資格があるかどうかと、休業開始時賃金日額がいくらになるかを確認します。
次に、育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書です。こちらも記入例と注意点を以下に表示しておきます。
支給申請は2ヶ月ごとに行いますので、上記の記入例のように5月22日から育児休業を開始した場合の支給単位期間は、5/22~6/21と6/22から7/21の2ヶ月間となります。なお、暦日数が28日の月も31日の月も30日として支給額は決定されます。
ハローワークの窓口で、初回の支給申請をすると、その場で支給決定通知書と2回目の支給申請書がもらえます。
支給決定通知書には、今回の申請でいくら支給されて、次回の支給単位期間はいつからいつまでという情報と次回の申請期限まで載せてくれているので、次回以降はそれにしたがって申請すれば良いので、2回目以降は簡単に申請できると思います。
育児休業給付の延長について
育児休業給付は原則子供が1歳になるまでの受給になります。しかし、一定の条件のもと子供が最大2歳になるまで延長できます。
ただし、一度に2歳までの延長できるわけではなく、まずは1歳6ヶ月までの延長、さらに延長が必要な場合に限り、2歳までの延長になり、それぞれ手続きが必要になります。
また、無条件に延長ができるわけではなく、以下のいずれかの理由が必要となります。
①保育園等に預けるように希望を出しているが、定員オーバー等で入所ができない
②配偶者が育児を行う予定をしていたが、その配偶者が亡くなったり、病気やケガあるいは離婚等で急遽、配偶者による育児ができなくなった場合
上記の①又は②の理由が必要ですが、その多くは①だと思います。昨今は待機児童問題で入所できない方が多いためです。
延長手続きは会社が行ってくれますが、そこに添付する書類は育児休業取得者が用意しなければなりません。
必要なのは、市区町村等が発行する「保育所入所保留通知書」(名称はそれぞれの市区町村によって異なります)等ですが、注意点があります。
まず、この保育所入所保留通知書の宛名ですが、育児休業を取得されるのは妻であるケースが多いと思いますが、宛名が夫の名前になっているとそれだけでは受理されない可能性が出てきます。申し込みの際に、妻の名前で行うか、役所の受付印のある入所申込書も併せて添付することになります。
もう一つ注意点として、入所を申し込んだ日付です。入所申込日が子供が1歳になった後だと認められませんので注意してください。
また、無認可保育所も認められませんので、注意してください。
以上簡単ですが、育児休業給付金の申請方法になります。