有期雇用の労働者が労災事故にあった場合、期間満了で退職させることはできるか?

おかげさまで多数のご依頼を頂いており、なかなか更新が出来ず申し訳ありません。今後も更新頻度は少なめになりますが読んで頂けると幸いです。
今回も顧問先からのご相談。ある従業員が仕事中にケガをし、休業が必要になるとのこと。労災の申請は進めるが、この従業員は有期契約であり、間もなく契約期間が満了となるが、そのまま期間満了で退職としても良いのか?
というご相談でした。
今回はこちらについて解説したいと思います。

  

結論としては、期間満了で退職としても構いません

そもそもなぜ、今回のご相談者が期間満了で退職とするこができるか疑問に思ったのかをまず考えたいと思います。
これは、労働基準法第19条に起因していると思われます。
労働基準法第19条は以下のようになっています。
「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。」
この条文はいわゆる「解雇制限」に関する条文です。
この条文によれば、労働者が労災事故にあい、その療養のために休業する期間とその後30日間は「解雇」できないとしています。
そう、あくまでこの条文では「解雇」ができないとしています。つまり、期間満了によるものまではこの条文の対象にはしていませんので、今回のケースのように、たとえ労災事故の療養中であっても、有期契約の労働者を契約期間満了で退職としても、問題ないことになります。

ただし、有期契約であっても、労基法19条の適用を受ける場合がある

有期契約であっても、その契約が過去に反復して更新されていて、契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められる場合(労働契約法19条に該当する場合)には、先の労働基準法19条が適用される場合がありますので、注意が必要です。
※関連する法律が労働基準法も労働契約法もどちらも19条なので混乱しないようにご注意ください。

期間満了で退職後も労災保険からの給付は引き続き受給可能

結論として、労災事故で治療中であっても、期間満了で退職とすることは可能ですが、もちろん、退職後であっても、引き続き治療や休業が必要であれば、労災保険から治療費や休業補償が支払われます。
それは、労働者災害補償保険法第12条の5に以下の規定があるので退職後も引き続き受給可能です。
労働者災害補償保険法第12条の5
「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない」

ただ、在籍中は、会社が労災の手続きをしてくれますが、退職後は、ご自身で手続きを行なう必要があるため、その点は注意が必要です。

今回は以上です。

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