業務上のケガに対し、役員は健康保険が使えるか?

さて、今回も顧問先からのご相談内容。役員になっている社長の奥様が、仕事中にケガをしたとのこと。
役員は労働者ではないので、業務上のケガに対し、労災保険は使えないのか?使えないとしたら、健康保険でいいのか?
このあたりのことを解説していきたいと思います。このテーマは、以前からよく議論にあがりますが、当事者にとっては意外な結論かもしれません。

  

役員に労災は使えるのか?

労働者が仕事中や通勤途中でケガをした場合、治療費や休業補償が労働者災害補償保険(労災保険)から出ることはご存じの方も多いと思います。
労働者災害補償保険という名前からもわかるとおり、労災保険はあくまで、労働者に対する保険のため、経営者である役員に対しては、原則、適用されません。
一応、特別加入という制度があって労働保険事務組合を通して労働保険事務を行う場合は、役員であっても文字通り特別に加入することはできます。
これを行っていない限りは、役員に対し、労災保険が適用されることはありません。

業務上のケガに健康保険は使えるか?

これまで大原則として、業務上のケガは労災保険、業務外のケガは健康保険を使うことになっていました。
しかし、これを厳密に適用してしまうと被保険者自身が本業とは別で副業で行う請負業務中や被扶養者がシルバー人材センター等での勤務中、大学生の子供が職業体験中にケガをした場合など、業務中を理由として、健康保険が適用されなかったケースがありました。
これらを解消するために、平成25年10月1日に健康保険法が改正され労災保険の給付を受けられない業務上の負傷に関しても健康保険が利用できるようになりました。
このように書くと法人の役員も業務上の負傷に関し、健康保険が使えると思われると思いますが、現実には違います。

役員の業務上の負傷に関しては健康保険は使えない。

先程の平成25年10月1日の改正では、注意書きがあり、
「被保険者又は被扶養者が法人の役員である場合であって、その法人の役員の業務に起因する疾病、負傷若しくは死亡に対しては、引き続き健康保険から保険給付を行うことはできません。」
とされています。つまり、法人の役員に関してはこれまでと同様、業務上のけが等には健康保険は使えません。
ただし、もう一つ注意書きがあり、
「被保険者の数が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員であって、一般の従業員が従事する業務と同一である業務を遂行している場合において、その業務に起因する疾病、負傷若しくは死亡に対しては、健康保険から保険給付を行います。」
とされています。つまり被保険者5人未満の法人役員で他の労働者と同様の仕事をしている場合は、健康保険が使えることになります。

まとめ

では、被保険者数5人以上の法人役員が業務上のけが等を負った場合は、どうするかというと、この場合、公的保険の適用はありませんので、民間の保険に加入するか、先にも書いた労災保険の特別加入をするかという選択肢があるかなと思います。
なにはともあれ、法人役員の方は、業務上においてケガが無いようお気を付けください。

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