また、投稿までに時間が空いてしまいました。申し訳ありません。今後も業務量が落ち着いたタイミングで投稿することになりますのでよろしくお願いいたします。
今回は、2024年10月からの社会保険の適用拡大について解説します。ご存じの方も多いとは思いますが、おさらいの意味でも解説いたします。
社会保険の適用拡大の概要
社会保険の適用は段階的に拡大されてきた
社会保険の加入要件は、本来、一般的な社員の方の月の所定労働日数と週の所定労働時間の4分の3以上であれば、加入義務が発生します。
例えば、正社員の方の週の所定労働時間が40時間、月の所定労働日数が20日の会社の場合(このパターンの会社が一番多いと思います)は、週の所定労働時間が30時間以上かつ月の所定労働時間が15日以上の場合で加入義務が発生します。
上記が、原則ではありますが、パートやアルバイトにも社会保険を適用させるために、2016年10月から従業員数(注)が501人以上の会社についてパートやアルバイトの社会保険加入が義務になりました(要件を満たしたパート・アルバイトのみ。要件は後述)。
そして、2022年10月からは、101人以上500人までの会社もそれが義務化になり、今回2024年10月からは51人以上の会社もその対象となるわけです。
※注:従業員数は厚生年金被保険者数を指します。
新たに加入対象となるパート・アルバイトの要件
①週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方
これまでは30時間以上の方が対象でしたがこれからは20時間以上で対象となるということです。何で判断するかというと労働契約書で判断します。ただし、契約書上は週20時間未満とされていても、実働として2ヶ月連続で週20時間以上勤務しており、それが今後も続くと見込まれるときは3ヶ月目から加入義務が発生します。
②給与額が月額で8万8千円以上
基本給と手当を合計額で、残業代や賞与等は含みません。週20時間以上は確定なので、月平均で言うとのだいたい86時間程度になるかと思います。
例えば愛知県の2024年最低賃金は1,077円ですので、1,077円×86時間=9万2622円となるので、週20時間以上働いて、最低賃金以上を払っていれば概ね8万8千円を超えてくるかと思います(もちろん都道府県によります)。
③2ヶ月を超える雇用見込みがある(従来からある要件)
こちらも労働契約書で判断します。あくまで2ヶ月以内の契約期間でかつ更新の見込みがない場合のみ対象から外れます。そのため労働契約書に「更新する場合がある」となっている場合は対象になるので注意が必要です。対象にならないのは、2ヶ月以内の契約期間でかつ「更新しない」場合に限られます。
④学生でないこと(従来からある要件)
文字通り学生の場合は対象から外れますが、夜間の学生等は対象になります。
加入させる必要があるかどうか注意する点
週の労働時間が20時間以上30時間未満の判断で注意する点
週の労働時間が20時間以上であるかどうかの判断は、あくまで契約書で判断します。
契約書の労働日・労働時間から算出した週の所定労働時間が20時間未満であれば、結果的に実働時間が20時間以上となっても対象とはなりません。
ただし、契約上の時間が週20時間未満であっても、実働の労働時間が2ヶ月連続で週20時間となり、それ以降も週20時間以上が続く見込みであれば、3ヶ月目から加入対象となることに注意が必要です。
逆に言うと、実働が1ヶ月間は20時間以上、その次の月は20時間未満となった場合は対象にはなりません。
従業員数のカウント方法にも注意が必要
2024年10月から従業員数51人以上の企業が、社会保険適用拡大の対象になるわけですが、この従業員数のカウント方法には注意が必要です。
このカウント方法を勘違いしている方が非常に多い印象です。
この51人以上の対象となるのは
「フルタイムで働く従業員数」+「1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数がフルタイムの3/4以上の従業員数」の数になります。
つまりは、2024年9月時点で社会保険に加入している方が51人以上いるかどうかです。そのため、社会保険に加入する必要が無いフルタイム労働者の3/4未満の労働時間であるパートやアルバイトを含めての数ではないことに注意が必要です。
勘違いされている方の多くは、労働時間がかなり短いパートやアルバイトであっても、すべて従業員数にカウントする必要があると思っているようです。
例えば、飲食店の会社などで、フルタイムの正社員は10人程度だが、1日4時間・週5日程度勤務するアルバイトが50人いたとしても、この会社は今回の適用拡大の対象ではないことになります。
給与に含めるもの、含めないものにも注意
今回、給与額が月額8.8万円以上の従業員が対象となりますが、この8.8万円の対象になる給与とならない給与があるので注意が必要です。
原則として基本給と各種手当が対象となりますので、賞与は対象ではありません。
あと、基本給については問題ないかと思いますが、手当については除外するものが結構あります。
まずは時間外手当つまり残業代です。一見、対象のように感じますが、月によって変動があるこれらは除外します。
最低賃金に算入しないことがあらかじめ定められている通勤手当、家族手当、精皆勤手当も除外するので、ここは特に注意が必要です。
ただ、先にも述べましたが、大都市圏などの場合は、週20時間以上の労働時間で、かつ最低賃金以上を支払っていれば、おのずと月額8.8万円を超えるケースが多いかと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか、この記事の公開が10月下旬ですので、すでに適用拡大に伴い、加入手続きをとられた会社も多いかと思います。まだの会社は急ぎ手続きを開始してください。
対象になるかどうかの判断には、迷う場面もあるかと思いますが、年金事務所等で確認しつつ、進めて頂ければと思います。
また、自身の会社が対象になっているかについて、今回、対象の会社には「特定適用事業所該当通知書」という書面が年金事務所から届いているはずですので、それでご判断ください。
今回は以上となります。