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代表取締役を派遣元責任者にした場合で、その者が他社の代表取締役も兼務している場合、許可取得は可能か?

代表取締役が派遣元責任者になる予定ですが、別の会社でも取締役や代表取締役を務めている場合、労働者派遣事業の許可を取得できるのでしょうか。

複数の会社を経営する方から、実際によくご相談いただく問題です。結論からいうと、他社役員との兼務があるというだけで、一律に選任不可と決まるわけではありません。 ただし、他社での地位や勤務実態によって、申請前に慎重な確認が必要です。

この記事のポイント

① 派遣元責任者の「専属」は、同じ人が他の事業所の派遣元責任者を兼任しないという意味です。

② 他社の非常勤取締役と他社の代表取締役とでは、確認すべき事情が異なります。

③ 申立書や代表取締役の追加登記だけで必ず認められるわけではありません。愛知労働局への事前確認が重要です。

派遣元責任者は、他社の役員を兼務できる?

派遣元責任者は、労働者派遣法第36条に基づき、派遣労働者の雇用管理、苦情への対応、派遣先との連絡調整などを担う重要な担当者です。選任に当たっては、労働者派遣法施行規則第29条により、事業所ごとに「当該事業所に専属」の者を置くこととされています。

ここでいう「専属」は「派遣元責任者の仕事以外は一切できない」という意味ではありません。 厚生労働省の業務取扱要領では、他の事業所の派遣元責任者と兼任しないことを意味すると説明されています。

また、同規則は、派遣元事業主が法人の場合、その役員を派遣元責任者に選任すること自体は認めています。 したがって、代表取締役が自社の派遣元責任者になることも可能です。

一方で、別の会社の業務を多く担っている場合には、派遣元責任者として必要な雇用管理業務を適切に遂行できるかという実務上の問題が生じます。法律上の「専属」の意味と、実際に職務を果たせるかどうかは分けて考える必要があります。

他社の「取締役」と「代表取締役」では何が違う?

例えば、派遣業許可を取得するA社の代表取締役・乙さんが、別会社のB社でも役員になっているケースを考えてみましょう。

B社での立場確認すべき主な点申請上の考え方
非常勤の取締役実際の勤務日数・担当業務・A社での勤務状況兼務の事実だけで一律不可とはいえず、個別確認
常勤の取締役B社での業務負担・A社での責任者業務の遂行可能性勤務実態により慎重な検討が必要
代表取締役B社の経営・対外的責任・他の代表者や役員の体制特に慎重な事前確認が必要

この表は許可の可否を自動的に決める基準ではありません。登記上の肩書に加え、実際の業務内容、勤務場所、勤務時間、役割分担などを確認するための整理です。

ケース① 他社の非常勤取締役を兼務している場合

乙さんがA社で派遣元責任者となり、B社では非常勤の取締役にとどまっている場合です。B社では日常の業務執行をほかの役員等が担当し、乙さんはA社で必要な職務を行える、という状況が考えられます。

当事務所での申請実務でも、他社役員の兼務状況について申立書等で説明することを検討するケースがあります。ただし、申立書を添付すれば必ず選任が認められるという制度ではありません。必要資料や説明内容は個別の事情によって異なります。

「非常勤」と記載すれば、それだけで大丈夫?

いいえ。登記上の役職や「非常勤」という表現のみでなく、B社の業務に実際にどの程度関わっているか、A社で派遣元責任者の仕事を適切に行えるかが重要になります。

ケース② 他社でも代表取締役を兼務している場合

乙さんがA社とB社の両方で代表取締役を務めている場合は、さらに慎重な検討が必要です。代表取締役には会社を代表する権限があり、B社での業務への関与も含めて、A社の派遣元責任者として十分な体制があるかを説明する必要があります。

従来、当事務所が愛知労働局での申請実務を通じて把握した運用では、他社でも代表取締役を務めるケースは特に厳しく確認されることがありました。ただし、これを「法律上、他社の代表取締役を兼ねる人は例外なく選任できない」という全国一律の禁止規定として説明するのは正確ではありません。

重要:他社の代表取締役を兼務する場合

会社の登記や申立書の記載方法だけで結論が出るとは限りません。実際の経営・勤務状況を整理し、申請前に愛知労働局へ具体的に確認することをおすすめします。

他社の代表取締役を兼務している場合の対応方法

すでにA社・B社の両方で代表取締役となっている場合には、次のような選択肢が考えられます。いずれもその方法を採れば自動的に派遣業許可を取得できる、というものではありません。

方法① A社の派遣元責任者を別の人にする

A社の別の取締役や従業員の中から、必要な講習・経験等の要件を満たし、実際に職務を担える方を選任する方法です。役員構成を変更せずに進められる可能性があるため、まず検討したい選択肢です。

ただし、派遣元責任者が不在のときの職務代行者についても、別途適切な体制が必要です。職務代行者をそのまま派遣元責任者に変更する場合は、代行者を改めて確保する必要があります。

方法② B社の代表取締役を退任し、役割を見直す

B社での代表権を外し、必要に応じて取締役としての地位や業務関与を整理する方法です。取締役に残った場合でも、その勤務実態などに応じた確認が必要です。

役員変更の登記や社内の職務分担の変更が必要になる場合があります。登記だけを変えて実態が従前と同じままにならないよう注意してください。

方法③ B社に別の代表取締役を置き、業務分担を見直す

当事務所が過去に取り扱った事例でも、B社の代表取締役を複数とし、別の代表取締役に日常の業務執行を担当してもらうという方法を検討したことがあります。

ただし、乙さん自身の代表権が残る以上、ほかの代表取締役を追加したという事実だけで選任が認められるとは限りません。実際の職務分担、B社への関与、A社での責任者業務の遂行状況などを整理し、申請先で確認する必要があります。

申請前に整理しておきたい確認事項

  • A社で選任予定の方が派遣元責任者講習・雇用管理経験などの選任要件を満たしているか
  • B社での役職が取締役か、代表取締役か、また実際の業務執行の内容は何か
  • A社とB社、それぞれの勤務日数・勤務場所・担当業務を説明できるか
  • A社で派遣労働者の雇用管理・相談対応などを適切に行う実務上の体制があるか
  • 兼務状況を説明する申立書や登記事項などについて、申請先の愛知労働局に事前確認しているか
  • 派遣元責任者が不在の際の職務代行者を別途選任できているか

例えば、複数の会社を経営している方の役員構成を変更する場合には、派遣業許可以外にも会社法上・税務上・社会保険上の影響が考えられます。派遣業許可のためだけに拙速な登記変更を行わず、関係専門家と整理したうえで進めることが重要です。

よくある質問

Q.A社の代表取締役が派遣元責任者になることはできますか?

A.可能です。 労働者派遣法施行規則第29条では、法人の役員を派遣元責任者にすることが認められています。ただし、講習・雇用管理経験など、ほかの選任要件を満たす必要があります。

Q.B社では無報酬の取締役です。兼務は問題ありませんか?

A.役員報酬の有無だけでは判断できません。 実際にB社の業務を担っているか、A社で必要な業務を行えるかを確認します。

Q.B社で代表取締役をもう1名追加すれば、必ず選任できますか?

A.いいえ。 代表取締役を追加しただけで、必ず選任が認められるものではありません。代表権や実際の業務分担、申請先の確認結果を踏まえる必要があります。

Q.他社役員の兼務がある場合、申立書は必須ですか?

A.提出の要否や記載内容は、個別の事情や申請先の確認により異なります。 提出を前提に決めつけず、兼務状況と実態を整理して事前相談することをおすすめします。

まとめ|他社役員との兼務は、肩書よりも実態の整理が重要

派遣元責任者は事業所に「専属」である必要がありますが、それだけを理由に他社の役員を兼務する人がすべて選任できない、ということではありません。 一方、他社の代表取締役も兼ねる場合などは、実際の職務遂行体制について厳しく確認されることがあります。

当事務所では、愛知県内の労働者派遣事業許可申請について、派遣元責任者の選任・他社役員との兼務状況の確認から申請代行まで対応しています。役員構成を変更する前に、まずは個別の状況をご相談ください。

関連する要件については、派遣元責任者の選任要件、派遣元責任者の職務代行者もご参照ください。


参考法令・資料:労働者派遣法第36条、労働者派遣法施行規則第29条、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(2026年10月1日適用版)。厚生労働省の公開資料はこちら。

※本記事は一般的な制度と申請実務上の留意点を解説したもので、特定の兼務形態について許可や選任の可否を保証するものではありません。最終的な取扱いは個別事案について申請先の労働局で確認してください。(2026年10月確認)

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