派遣許可を取得する上でまずは最も重要な「資産要件をチェック」

派遣業の許可を取得するのに、まずはクリアしなければならないのが資産要件です。決算書からどのように資産要件をクリアしているか判断するかを詳しく解説します。

決算書の資産額、負債額、現預金額を確認

既存の会社で派遣業許可を取得する場合、3つの資産要件を満たしているかどうかを直近の決算で判断します。そのため、決算書の「貸借対照表」を用意してください。
以下は、とある会社の貸借対照表のサンプルです。
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まず、一つ目の資産要件は、上記の①から②および④を引いた額が2,000万円以上必要です(④の繰り延べ資産は無い会社も多いと思いますが、なければ無視して結構です)。
上記の例だと①が80,800,000円、②が52,000,000円、④が1,500,000円なので、①-②-④は27,300,000円で2,000万円以上なので要件を満たします(この27,300,000円を基準資産額といいます)。
2つ目の要件は、一つ目で算出した基準資産額が②の負債額の7分の1以上であることです。
上記の例だと、②の額の7分の1は、52,000,000円÷7=7,428,571円で先程の基準資産額27,300,000円のほうが上回っていますのでクリアしています。
3つ目の要件は、現預金が1,500万円以上です。上記、貸借対照表の③の額です。上記の例だと現預金は38,000,000円なのでクリアしています。
このように直近決算の貸借対照表から3つの要件を確認します。

直近の決算で資産要件を満たしていなくても、派遣許可取得の可能性はまだある?!

直近の決算で上記の資産要件を満たせていない場合は、次の決算まで待たなければ派遣業の許可は取得できないのでしょうか?
いいえ、月次決算+公認会計士又は監査法人の監査証明で満たせる可能性があります。
直近の決算で資産要件を満たしていない場合は、まず、どの部分が足りないかを判断します。例えば、基準資産額2000万円と現預金の1500万円が満たせていない場合は、増資し登記をしたうえで、月次決算を行い、それを公認会計士か監査法人に依頼して監査証明を出してもらいます。この監査証明付きの月次決算で資産要件を満たしていれば、許可要件を満たすことが可能です(なお、監査証明は税理士では行うことは出来ませんので、別途、公認会計士か監査法人への依頼が必要です。私共で公認会計士をご紹介することも可能です)。

新規設立の派遣会社の場合は、資本金及び資本準備金の額を確認すればOK

まだ、設立したばかりの会社で、決算を一度も迎えていない会社で派遣業の許可取得を考える場合は、設立時の資本金及び資本準備金の額で判断するのみです。単純に現金出資で、資本金2,000万円の会社設立であれば、それですべての資産要件を満たすことになります。

○ワンポイント
消費税の免税を受けるために、資本金を900万円、資本準備金を1100万円にしたいと言われる方がたまにみえますが、会社法445条第2項によって「資本金の払い込み又は給付に係る額の1/2を超えない額は、資本金として計上しないことができる」とされているので、1000万円を超える資本準備金を計上することはできません。
ただ、1期目のみ免税がとれる裏技的な手法がないわけでないようですが、この辺りは税理士さんへご相談をお願いします(当事務所は社会保険労務士事務所のため税務関連のご相談は法律上行なうことができません)。

その他の派遣業許可要件・条件を満たす

資産要件以外の派遣業許可要件は主に以下のようになります。

○法人については、法人及びその役員が欠格事由に該当していないこと。個人事業については事業主が欠格事由に該当していないこと。欠格事由については「欠格事由」のページで詳しく解説しています。

○雇用管理経験3年以上で、派遣元責任者講習を受講済みの派遣元責任者を有していること。派遣元責任者については「要件を満たす派遣元責任者を確保」のぺージで詳しく解説しています。また、派遣元責任者の職務代行者に関してご質問が多いので「派遣元責任者の職務代行者について」のページで詳しく解説しています。

○労働保険・社会保険に加入していること(労働保険については、派遣許可申請時に労働者がいる場合のみ)こちらについては「社会保険・労働保険への加入」のページで詳しく解説しています。

○風俗営業や性風俗特殊営業等が密集するような場所に派遣業の事務所が無いこと

上記以外にも細かい要件があります。