Q&A9の内容

ここでは、厚生労働省が発表している平成27年改正のQ&A集の中で雇用安定措置に関するものを独自解説します。

Q9  キャリアアップ措置について、労働者派遣事業関係業務取扱要領において、「派遣労働者一人あたり、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の機会の提供が必要」とあるが、「最初」とは、雇用開始時点か。それとも改正法が施行された年(平成27年)のことか。

A9  雇用開始時点である。

平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A

上記Q&Aに対する解説

キャリアアップに資する教育訓練については、あくまで雇い入れてから少なくとも3年間は必ず行わなければなりません。法改正から3年ではないので、逆に言うと、法改正時点で雇い入れから3年未満の派遣労働者が上記で言うキャリアアップ措置の「毎年1回以上の機会の提供」義務化の対象となります。ちなみに「3年間」を強調していますが、4年目以降はまったくキャリアアップに資する教育訓練を行わなくても良いという趣旨ではありません。 労働者派遣事業関係業務取扱要領には、上記の続きが記載されており、そこには「キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等が用意されていること」とされているので、4年目以降は、毎年キャリアアップに資する教育訓練を行うことまでは求めていないものの、派遣労働者が常にキャリアアップできるように節目ごとに教育訓練を実施することを求めていることになります。

Q&A10の内容

Q10  安全衛生法に基づく安全衛生教育はキャリアアップ措置として認められるのか。

A10  安全衛生法に基づく安全衛生教育については、キャリアアップ措置としては認められず、キャリアアップ措置の実施実績時間にも算入しない。

平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A

上記Q&Aに対する解説

安全衛生教育は、許可申請時の計画書にも必ず盛り込まならず、実施も行わなければなりませんが、安全衛生教育はあくまで派遣労働者を安全に働かせるために必要な教育であり、この教育が派遣労働者のキャリアアップに繋がるわけではありません。そのため、安全衛生教育とは別に、キャリアアップに資する教育訓練を実施しなければななりません。

Q&A11の内容

Q11 キャリアアップ措置について、通信教育やeラーニング等の正確な時間管理ができない場合の取扱いはどうすればよいか。

A11  キャリアアップ措置は有給かつ無償で行うことが必要であることから、派遣元事業主は時間を管理する必要がある。 通信教育やeラーニング等により教育訓練を実施する場合は、電子機器のアクセス時間等により訓練時間を管理する方法のほか、これら教育訓練に要する標準的な所要時間をもって実施時間とすることとしても差し支えない。

平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A

上記Q&Aに対する解説

最近は、eラーニング環境がかなり整ってきていますので、eラーニングを使って教育訓練を行ったほうが安価で確実に実施できる場合も多く、導入する会社も増えてきています。ビジネスマナーやエクセル・ワードなどの一般的な講座だけでなく、業種別の専門性の高い講座も用意しているeラーニング提供会社もどんどん増えています。そういった eラーニング提供会社の多くは、派遣労働者が何月何日の何時何分に受講したかが分かるシステムになっているはずです。そのため、むしろeラーニングのほうが正確に受講時間を把握できるはずです(逆にそういったシステムになっていないeラーニングで正確に受講時間が把握できないのであれば導入すべきではないと思います)。ただ、正確に時間が分かるからと、派遣労働者に対し「いつでもいいから都合のいい時間に受講して」と受講時間を完全に派遣労働者に任せてしまうのは危険です。受講時間は有給である必要があります。つまり労働時間としてのカウントとなりますので、人によっては時間外割増や深夜割増が必要になります。そのためできる限り派遣会社側でいついつに受講してもらうように指示しておいたほうが良いでしょう(もちろんある程度の裁量を与えるのは構わないと思いますが)。派遣元管理台帳にも記載が必要ですので、ある程度こちらで把握しておかないと後で処理が大変になります。