最近、同じグループ企業内に派遣をしたいんですけど・・・というご相談が少しずつ増えてきています。10年ほど前は、こういったご相談は多かったと記憶していますが、2012年の改正で、グループ内派遣が規制されてからは、徐々に減ってきた印象です。
ただ、最近は、労働者の働き方、企業側の事情、そしてパートへの社会保険適用拡大などが重なり、再び、グループ内派遣を検討する会社が増えてきているのかもしれません。
ということで、あらためて、グループ内派遣の8割規制について解説したいと思いますが、実は、結構、勘違いしている方も多いのでは?と思いっています。
グループ内派遣が規定されているのは、派遣法第23条の2ですので、まずは条文を確認します。
(派遣元事業主の関係派遣先に対する労働者派遣の制限)第二十三条の二 派遣元事業主は、当該派遣元事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者その他の当該派遣元事業主と特殊の関係のある者として厚生労働省令で定める者(以下この条において「関係派遣先」という。)に労働者派遣をするときは、関係派遣先への派遣割合(一の事業年度における当該派遣元事業主が雇用する派遣労働者の関係派遣先に係る派遣就業(労働者派遣に係る派遣労働者の就業をいう。以下同じ。)に係る総労働時間を、その事業年度における当該派遣元事業主が雇用する派遣労働者のすべての派遣就業に係る総労働時間で除して得た割合として厚生労働省令で定めるところにより算定した割合をいう。)が百分の八十以下となるようにしなければならない。
いわゆる「8割規制」です。
派遣元は、経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者(つまりグループ企業=関係派遣先)に派遣する場合は、その派遣割合は全体の8割以下にしなければならないということです。
8割かどうかの計算方法は以下です。
(全派遣労働者のグループ企業内での総労働時間-60歳以上の定年退職者のグループ企業での総労働時間)/全派遣労働者の総労働時間
よく、グループ内派遣がしたいがために、派遣の許可を取得する場合、グループ会社のみに派遣(つまり10割がグループへ派遣)はダメですよということです(10割派遣したいというご相談が多いです)。
このグループ会社への派遣割合は、毎年、労働局へ報告しなければならないので、1年目だからバレないだろうということはありませんので注意してください。
さて、では、何を勘違いしているケースが多いかというと「グループ企業(関係派遣先)」の定義です。
厚生労働省の説明ではどう言っているかというと以下の通りです。
〇派遣会社が連結子会社の場合
・派遣会社の親会社
・派遣会社の親会社の子会社
上記は、グループ会社(関係派遣先)となりますが、これは、連結決算しているので疑問の余地はないかと思います。
問題は次です。
〇連結会社が連結子会社でない場合
・派遣会社の親会社等
・派遣会社の親会社等の子会社等
上記のような書き方をしています。(「等」が付いただけですね)
さらに注意書きで
「親子関係は外形基準で判断(議決権の過半数を所有、資本金の過半を出資など)」
となっています。
つまり、簡単に言えば、株式会社であれば、親会社が子会社の発行株式の過半数を所持していれば、親子関係となるということです。
比較的、大き目の会社であれば、この説明でなんとなくわかると思いますが、問題は、中小の会社で、代表取締役である社長が、いくつかの会社の株の過半数を「個人」で所有している場合です。
この場合、自社の中ではこれらの会社も「グループ会社」と呼んでいますが、外形的には「親会社」が「子会社」の株を過半数所持していなければ、親子関係にはなりません。つまり、仮に社長個人が100%株を所持している会社が3社あって、そのうち1社が許可を取得し、残り2社に派遣しても、関係派遣先への派遣ではないので報告義務はないということになります。グループ企業だと勘違いして、はなから派遣は無理だと勘違いされている方も見えます。
※但し、上記のように関係派遣先に該当しなくても、その2社にしか派遣しなければ「専ら派遣」となり、状況に応じ、指導勧告の対象となるので注意が必要です。
外形的に関係派遣先になっていれば、当然に8割規制がかかるので、その場合は、注意が必要です。ただし、あくまで社長個人が各社の株を過半数所持していても、それは関係派遣先にはならないということになります。