前回(労使協定方式Q&A解説1)の続きから解説していきたいと思います。

問1-4

派遣労働者は各々異なる派遣先に派遣されており、労使協定を締結する過半数代表者の選出が困難であるが、どのように選出すればよいか。

回 答

例えば、派遣労働者の賃金明細を交付する際や派遣元事業主が派遣先を巡回する際に、労使協定の意義や趣旨を改めて周知するとともに、立候補の呼びかけや投票用紙の配付をしたり、社内のイントラ ネットやメールにより立候補の呼びかけや投票を行わせることが考えられる。 なお、派遣元事業主は、過半数代表者が労使協定の事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならない(労働者派遣法施行規則第 25 条の6第3項)。
この「必要な配慮」には、 例えば、過半数代表者が労働者の意見集約等を行うに当たって必要となる事務機器(イントラネットや 社内メールを含む。)や事務スペースの提供を行うことが含まれるものである。 また、労働基準法 36 条に基づく時間外・休日労働に関する協定の締結や、同法 89 条に基づく就業規則の作成又は変更を行う場合にも、(過半数労働組合が存在しない場合は)当然に過半数代表者の選出が必要である。

https://www.mhlw.go.jp/content/rk1.pdf

〇独自解説
この質問は、今回の同一労働同一賃金とは直接は関係ありません。以前から、36協定や1年単位の変形労働時間制に関する協定書など、様々な場面で労使協定を締結してきたはずです。その際にも当然、労働者代表を選出してきたはずですので、これまで適正に選出が行われていれば、そのままで構いません。
もし、新設したばかりの派遣会社等で労使協定を締結していない場合は、上記の回答のように適切に労働者代表を選出する必要があります。

問1-5

既に締結されている労働協約をもとにして、労使協定方式とすることは可能か。

回 答

形式的には、法第30条の4第1項の労使協定を別途締結いただくことが必要であるが、労使協定に 定める法第 30 条の4第1項各号の事項について、労働協約を参照する旨を定めて労使協定として合意 することは差し支えない。また、派遣元事業主は、法第 23 条第5項に基づき、厚生労働大臣に毎年度提出する事業報告書に労使協定を添付しなければならないこととされているところ、法第 30 条の4第1項各号に掲げる事項が 労使協定自体ではなく、労働協約を参照する旨定められている場合には、労使協定本体に加えて、労使 協定で参照している労働協約もあわせて事業報告書に添付しなければならない。

https://www.mhlw.go.jp/content/rk1.pdf

労働協約を締結している派遣会社は、珍しいとは思いますが(基本的には比較的規模の大きな派遣会社で労働組合がある会社)、労働協約を締結しても上記のように労使協定を締結しなければなりません。労使協定方式を採用するためには労使協定の締結が絶対的な要件であるためです。労働協約と労使協定はイコールではありません。会社によっては、対象がことなる場合もあり得ます。対象者が同一で、かつ、労使協定も締結し、労働協約を参照する旨が記載されてあれば構わないということになります。どちらにしても、かなりレアケースなので、中小の派遣会社は特に気にする必要はないかと思います。