もう一度おさらいになりますが、労使協定方式を採用する場合の派遣スタッフの賃金のうち「一般基本給・賞与等」は、以下の計算式をもとに計算します。

「一般労働者の職種別の勤続0年目の基本給・賞与等」×能力・経験調整指数×地域指数」

上記のうち地域指数については、前回「地域指数をどう使うか?」でご説明しました。

今回は、職種別の勤続0年目の基本給・賞与額の最低基準となる額をどうするかについてご説明します。

この最低基準となる金額は、毎年、職業安定局長が公表することになっており。大きく以下の2つが公表されます。
・賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)
・職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)

では、実際に金額を見てみます。愛知県は製造業が多いので製造業務で見てみます(基準値となる0年数字です)。
まず、 賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算) です。
・自動車組立工・・・1,074円
・機械組立工・・・1,100円

次に 職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算) です。
・生産工程の職業(大分類)・・・1,060円
・機械組立の職業(中分類)・・・1,044円
・自動車組立工(小分類)・・・1,032円
・輸送用機械器具組立工(小分類)・・・1,059円

以上のようになっています。自動車の組み立ての業務に就いている場合は、職業安定業務統計の小分類を使ううと一番低くなることが分かります。職業安定業務統計は、大分類、中分類、小分類がありますが、どれを使っても良いことになっています。

次に同様に運送業のトラックドライバーで(普通・小型)見てみましょう。
まず、 まず、 賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算) です。
・営業用普通・小型貨物自動車運転者・・・1,045円

次に 職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算) です。
・輸送・機械運転の職業(大分類)・・・1,218円
・自動車運転の職業(中分類)・・・1,226円
・貨物自動車運転手(小分類)・・・1,294円

上記のようになっています。貨物ドライバーの場合は、先ほどとは逆で賃金構造基本統計調査を使ったほうが、一番低くなることになります。

このように、職種によって金額が異なるため、どちらの数字を使うかは正直迷うところです。ただ、地域指数の説明でも触れましたが、上記のように2つの調査で高い職種もあれば低い職種もあるとなると、当然、比べて低いほうを採用したいと考えると思いますが、賃金を引き下げる目的で、二つの調査を職種ごとに選択することは許されません。職種ごとに選択するためには、正当な理由が必要となります。

つまりは、一度決めた調査数字は、基本的には、すべての職種で適用され、賃金を引き下げる目的でも変更もできないことになります。

労使協定の更新の際に変更することは可能ですが、結果的に、賃金が引き下がることになるような場合は、明確な理由が無い限り、あるいは労働者の個別同意が無い限り認められない可能性が高くなります。
その意味でも、最初の労使協定の締結はとても重要になりますので、注意してください。