前回の続きからご説明します。

前回は一般賃金のうち「基本給・賞与・手当等」と「退職金」についてご説明しました。

通勤手当の決定

では次に、通勤手当についてご説明します。

通勤手当に関しても、他の労働者との比較が必要になります。通勤手当を支払っていない派遣元もあるかと思いますが、法改正後は支払いは必要になります。
通勤手当は、その支給方法によって異なります。「実費支給」なのか「定額支給」なのかで異なることになります。実費支給の場合は、かかった通勤費をそのまま支給する形なので、他の労働者との比較は必要ありません。しかし、定額支給で行っている場合には、こちらも局長通知で「一般通勤手当」の額が公表されるので、その額以上の通勤手当の支払いが求められます。
具体的には、例えば1日8時間、週5日勤務の場合、局長通達の時間当たりの通勤手当は2018年で72円ですので、
72円×8時間×5日×52週÷12ヶ月=12480円となるので、月次で12480円以上の支払いが必要となります。
人によっては、大幅な通勤手当の上昇が考えられるので、実費支給にするのか定額支給にするのか慎重に選択する必要があります。

賃金テーブル、昇給・評価制度の整備

ここまで説明した基本給・賞与・手当・退職金・通勤手当が局長通達の金額よりも上回らないといけないため、現状の賃金テーブルがそれを下回っているのであれば、賃金テーブル自体を見直さなければなりません(現状、中小零細の派遣会社であれば、賃金テーブル自体が存在していない場合もあるかもしれませんが、今後は、下記の昇給制度と共に整備しておく必要があります)。

派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験等の向上があった場合には、基本給や賞与が適切に改善される仕組み、つまり適切に昇給する仕組みを設けることが必要です。その昇給自体もきちんと基準が決められており、正当な評価のもとに昇給するものでなければなりません。

どのように昇給させる制度を設けるかは、基本的には会社の自由ですが、当然ながらそれが派遣労働者の成果、意欲、能力、経験等が適切に反映されるものである必要があります。
例えば、職務の内容を初級、中級、上級の3ランクにわけて、まず、そこでのベースの賃金額を決め(もちろん、すべてのランクで局長通達以上の額にする必要があります)、そのランクの中でも経験や技能等が少しでも伸びれば、別の手当をつけたり、基本給自体を上昇させたり、あるいはある程度のスキルの上昇が見込めた場合には、CランクからBランクへ引き上げるなどの制度が必要となります。
厚生労働省の「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」にも以下のような賃金・評価制度の例を示しています。

企業規模にもよりますが、中小の派遣会社であれば、それほど複雑な賃金・評価制度は必要ないと思います。ただ、この派遣労働者は、なぜ、この賃金なのかが明確に説明できる状態にしておく必要がありますので、簡易的な評価制度であっても、それに基づいて、毎回、評価を適正に行い、その評価を基に賃金を決定する必要があります。
このあたりは、なかなか難しいと感じる方も多いとは思いますので、社会保険労務士等の専門家に制度構築を依頼するのも一つです。