第二章 採用及び異動等

(採用手続き)
第4条
 会社は、就職希望者のうちから選考して、従業員を採用する。

(採用時の提出書類)
第5条
1.従業員に採用されたものは、次の書類を採用日から2週間以内に提出しなければならない。
(1)履歴書
(2)住民票記載事項の証明書
(3)職歴のある者にあたっては、年金手帳及び雇用保険被保険者証
(4)その他会社が指定するもの
2.前項の提出書類の記載事項に変更を生じたときは、速やかに書面でこれを届出なければならない。

(試用期間)
第6条
1.新たに採用した者については、採用の日から「 ヶ月間」を試用期間とする。ただし、会社が適当と認めるときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。
2.試用期間中に従業員として不適格と認められた者は、解雇することがある。
3.試用期間は、勤続年数に通算する。

(労働条件の明示)
第7条
会社は、従業員との労働契約の締結に際しては、採用時の賃金、就業場所、従事する業務、労働時間、休日、その他の労働条件を明らかにするための労働条件通知書及びこの規則を交付して労働条件を明示するものとする。

(人事異動)
第8条
 会社は、業務上必要がある場合は、従業員の就業する場所又は従業員の業務の変更を命ずることができる。

(休職)
第9条
1.従業員が、次の場合に該当するときは、所定の期間休職とする。
(1) 私傷病による欠勤が「 ヶ月」を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないと認められたとき「 年」
(2) 前号のほか、特別の事情があり、休職させることが適当と認められるとき「必要な期間」
2.休職期間中に休職事由が消滅したときは、元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難であるか、又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3.第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職する。

上記規定の解説・問題点

 この「第2章 採用及び異動等」もトラブルの多い項目です。トラブルを防ぐためによく吟味して規定を作成しましょう。
  この章には、「内定の取消」についても定めておくと良いでしょう。内定者は、労働基準法上の労働者ではありません。しかしながら、内定と言えども一応は労働契約が成立している状態にあると言えます。特に最近は、内定取消に関する問題も多く発生している情勢も考えると、リスク対策として内定取消事由の規定を設ける意義はあると言えます。また、労働条件の明示を、就業規則を提示することにより行なう場合には、この内定取消事由が記載されていることにより、その内容も労働契約の内容と解されることになります。

 第5条(採用時の提出書類)ですが、上記の書類だけでは不十分と言わざるを得ません。上位以外にも、秘密保持、競業避止に関する誓約書、自動車を使用する場合であれば免許証、通勤経路に関する書類なども採用時に提出してもらうべきでしょう。
 また、この中に、「住民票」や「戸籍謄本」「戸籍抄本」を加えている会社は多いのではないでしょうか。行政指導によりこれらの書類の提出は、出来ないことになっていますので、注意が必要です。交通費などの関係で、住所地を確認したい場合は、「住民票記載事項の証明書」で対応します。
 この就業規則には含まれていませんが、 提出書類には、身元保証書も加えておくことをお薦めします。昨今は、会社に損害を与えたまま、行方が分からなくなる社員もいますので、そういった万が一の場合にも対応できるようにするためにも必要なことだと思われます。加える場合には、単に提出書類の中に「身元保証書」と加えるだけでなく、保証人の人数、保証人の要件、保証期間、更新手続などについて詳細に定めれば、スムーズな手続きが行なえます。
 あとは、提出書類の内容についてもう少し具体的に明示し、さらに会社の裁量で省略できる旨を明示しておきましょう。また、 提出期限を過ぎても提出しない者に対する処分方法についても定めておくことで、確実な提出を促すことが可能となります。

 次に第6条(試用期間)についてですが、まず試用期間の長さについては、 あまりに長い(1年を超えるような)ものについては、無効になる場合がありますので注意が必要です。
 試用期間中に解雇(本採用の取り消し)する場合があると思いますが、上記のような規程では、解雇の根拠を通常の解雇事由に求めざるを得なくなってしまい、 トラブルの原因になります。もう少し、工夫した規程が必要です。
 また、試用期間の延長についても、本採用について柔軟に対応できるように設けておいた方がいいと思います。しかし、 試用期間の延長を行うためには、合理的な理由が必要ですので、「本採用の取り消し」の条文と絡めて規定する必要があります。

 次に第8条(人事異動)です。人事異動は、多くの会社で実施していると思いますが、これもトラブルが多い項目の一つです。まず、人事異動の命令に対し、社員は「正当な理由がない限り、これを拒むことができない」旨を必ず規定します。 この文言がないと、社員が人事異動を拒否した場合にトラブルになりかねません。また、異動の種類についても詳しく規定しておきます。これにより、採用時に会社にどんな人事異動があるのかが分かるため、社員も自分に今後どんな人事異動があり得るのかが明確になります。さらに、異動に伴う業務の引継ぎについて、いつまでに引継ぎを完了させるのか、また、不完全な引継ぎを行った場合の対応についても規定しておけば、スムーズに人事異動が行えるでしょう。会社によっては、出向や海外転勤があるところもあると思いますが、その場合には、別規程でより詳しく定めたほうがいいでしょう。

 次に第9条(休職)です。休職制度は、ほとんどの会社に設けてあると思いますが、法律で規定されているわけでは、ありませんので、設けるかどうかは、会社の自由です。 トラブルの多い制度でもありますので、設ける場合には慎重に規定を設ける必要があります。
 規定する場合は、 適用される社員の範囲、休職となる事由、休職期間、一時復職し再び休職した場合の通算の取り扱い、休職中の賃金、復職について、休職期間が満了した場合の取り扱い等、かなり詳細に規定する必要があります。あいまいな規定では、実際に休職者が出た場合に必ずと言っていいほどトラブルになります。

 このほかには、異動ではありませんが、例えば、役職の昇格や 降格、資格等級の昇級や降級なども重要な事項でかつトラブルになりやすい項目ですので必ず定めるようにします。