労働基準法上の産前産後休業期間と出産手当金の受給期間、実は違う?!知っておきたい2つの制度のキホン

妊娠・出産は、女性にとって大きなライフイベントですよね。特に、仕事をされている方にとっては、産前産後休業(通称:産休)や出産手当金について、疑問や不安を抱える方も少なくないのではないでしょうか。

「産休っていつから取れるの?」 「出産手当金はいくらもらえるの?」

こういったご質問をいただくことが多いのですが、実は、労働基準法上の産前産後休業と、出産手当金の「産前産後休業」は、少し異なる点があることをご存知でしょうか?この2つの制度は、どちらも出産前後の女性を支えるためのものですが、その目的や根拠となる法律が違うため、期間の計算方法にも違いが生まれるのです。

今回は、この2つの制度の違いに焦点を当てて、わかりやすく解説していきます。  

労働基準法上の「産前産後休業」とは?

まず、労働基準法で定められている「産前産後休業」について確認しましょう。これは、働く女性の母体保護を目的とした制度で、企業が従業員に与えなければならない「休業」を定めたものです。

  • 産前休業: 出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から、女性が休業を希望した場合に取得できます。これは、法律で定められた「休業」であり、この期間は本人が希望しない限り、企業は就業を命じることができません。
  • 産後休業: 出産日の翌日から8週間は、原則として就業が禁止されています。ただし、出産後6週間を経過し、本人が希望し、医師が認めた場合は、就業が可能です。

出産手当金の「産前産後休業」とは?

次に、健康保険から支給される「出産手当金」についてです。これは、産前産後休業中に給与の支払いがなかった場合に、生活の保障として支給される手当金です。

  • 対象期間: 出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日の翌日以降56日までの範囲内で、仕事を休んだ期間が支給の対象となります。

出産手当金は、あくまで休業中の収入を補うためのものであるため、実際に仕事を休んだ期間に対して支給されます。

2つの制度の違い

さあ、ここからが本題です。上記の解説で、すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この2つの制度には、主に以下の2つの違いがあります。

項目労働基準法上の産前産後休業出産手当金の「産前産後休業」
根拠法労働基準法健康保険法
産前休業開始日出産予定日の6週間前から本人の請求により取得可能。出産日以前42日から。ただし実際に支給されるのは休業した日から。
期間の計算出産が早まった場合、出産予定日の6週間前から出産日まで。 出産が遅れた場合、出産予定日の6週間前から出産日まで。出産が早まった場合、出産日から遡って42日間。 出産が遅れた場合、出産予定日からの遅れた日数分が加算される。
目的女性労働者の母体保護休業中の生活保障

特に注意すべきポイント…

出産が予定日よりも早まった場合の、産前休業の開始日期間の考え方です。ここが、2つの制度の大きな違いが明確になるポイントです。

  • 労働基準法上: 産前休業は「出産予定日の6週間前から」と定められているため、例えば予定日の10日前に出産した場合でも、出産予定日の42日前から出産日までの期間が産前休業となります。つまり、休業の開始日は「出産予定日」を起点に数えることになります。
  • 出産手当金: 出産手当金の支給対象期間は「出産日以前42日」です。そのため、出産が早まった場合でも、実際の出産日から遡って42日間が支給対象となります。休業の開始日は「実際の出産日」を起点に計算されるため、労働基準法上の産前休業とは日数の数え方が異なります。

この違いによって、出産が早まると、労働基準法上の産前休業期間と出産手当金の支給対象期間に日数のズレが生じることがあります。

また、出産が予定日よりも遅れた場合も、期間の考え方が異なります。

  • 労働基準法上: 出産予定日を過ぎて出産した場合、産前休業は実際の出産日まで継続します。予定日はあくまで目安であり、出産日までは「産前」とみなされます。
  • 出産手当金: 出産が遅れた場合、出産手当金の支給対象期間は「出産予定日以前42日」に「出産予定日から実際の出産日までの日数」が加算されます。これにより、遅れた分も生活保障が確保されることになります。

まとめ

労働基準法上の産前産後休業は、働く女性の体を守るための「休業」を定めたもの。一方、出産手当金は、その休業期間中の収入減少を補うための「手当」です。

それぞれ目的や根拠となる法律が異なるため、開始日の考え方や期間の計算方法に違いがあります。特に「出産が予定日よりも早まった場合」と「遅れた場合」の期間計算には注意が必要です。ご自身の状況に合わせて、会社の人事担当者や健康保険組合に確認しながら、安心して出産に臨んでくださいね。

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