親を健康保険の扶養に入れる際の注意点
前回は、親を税の扶養に入れる際の注意点を書きましたが、今回は、健康保険の扶養に入れる際の注意点を解説したいと思います。税の場合とはまた違った注意する点がありますので、ぜひ、参考にしてください。
親を健康保険の扶養に入れる際の条件等
子や配偶者だけでなく親も、条件に該当すれば、健康保険の扶養には入れて、健康保険証が発行されます。その条件を解説していきたいと思います。
親の年齢が75歳未満であること
健康保険の扶養に入れるためには、親の年齢が75歳未満である必要があります。なぜなら、75歳になるとすべての人が、今の健康保険を抜けて、「後期高齢者医療制度」へ移行するためです。そのため、すでに75歳になっている方は、現在、後期高齢者医療制度に加入しているため、扶養に入ることはできません。
現在、すでに親を扶養にいれている場合は、その親が75歳になったら、その扶養を抜けて後期高齢者医療制度へ加入することになります。
親の収入が180万円未満(60歳未満の場合は130万円未満)であること
もう一つの要件として、親の収入が180万円未満である必要があります。ただし、親の年齢が60歳未満の場合は130万円未満である必要があります。
税の扶養の場合は、収入ではなく所得で判断していましたが(詳しくは、親を扶養に入れる場合の税金(扶養控除)の注意点を参照)、健康保険の扶養の場合は「収入」でみます。また、この収入には、給与収入はもちろん、年金収入や雇用保険の失業給付、健康保険からの傷病手当金など基本的にすべての収入が含まれます。
また、もう一つ重要な点として、税の扶養の場合は過去の収入で判断(12月31日時点でその年の所得で判断)しますが、健康保険の場合は、将来に向かっての収入で判断します。そのため、例えば、今まで年収1千万円など高額な給与を貰っていたとしても、そこを退職等して、収入が全くなくなれば、退職後すぐに健康保険の扶養に入れることになります(退職後に雇用保険の失業給付を受ける場合はそれも収入とみなされるため失業給付が一定額以上の場合は、受給終了まで扶養に入れることはできません(給付制限期間は除く))。
親の収入が被保険者(子供)の年収の半分以下であること
もう一つ親の収入がたとえ180万円未満(60歳未満は130万円)だったとしても、その額が被保険者である子供の収入の半分以上であれば、原則として扶養に入れることはできません。例えば、親の年齢が60歳以上で年金収入が170万円あったとします。しかし、被保険者本人であるその子供の年収が仮に300万円だった場合、基本的には扶養にはいれないことになります。ただし、親の収入が被保険者である子供の収入の半分以上になる場合であっても、その子供の年収を上回らず、かつ、日本年金機構(判断は協会けんぽではなく日本年金機構が行います)がその親子の実際の生活の状態などを勘案して、被保険者である子供がその世帯の生計の中心的な役割を果たしていると判断した場合は、扶養にはいれる場合がありますので、半分以上だから絶対にダメということではありません。
上記は、親と同居の場合になります。別居の場合は、子供が親に仕送りをし、親の生計をその子供が維持していると認められる必要があります。そのため、親の収入が被保険者である子供の仕送り額よりも少ないことが条件になります。例えば、子供から親に月10万円の仕送りをしているのであれば、親の収入は月額で10万円未満である必要があります。
扶養の申請を出す際、親の収入によって添付書類が異なる
健康保険の扶養の申請自体は、勤めている会社が行いますが、添付書類が必要な場合は、その添付書類はこちらで用意しなければならないので、ここで確認しておきます。
まず、添付書類が必要のない場合からご説明します。
添付書類が必要ないのは、親と同居の場合でその親が税務上の扶養になってがいっている場合です。
(税務上の扶養になるかどうかは、前回の記事「親を扶養に入れる場合の税金(扶養控除)の注意点」で確認してください。また、マイナンバーを会社に伝えていないと、住民票等が必要になってきますので、会社に親の分も含めてマイナンバーを伝えてください)
次に、同居はしているが、親が税務上の扶養になっていない場合です。どういう場合かというと、給与収入が103万円を超える場合や、65歳未満で年金収入が108万円を超える場合、65歳以上で年金収入が158万円を超える場合などが挙げられます(これ以外にもあり得ます)。
この場合、添付書類として、課税証明書や年金額の改定通知書などの写しなどが必要になってきますので、事前に用意しておきましょう。
次に別居の場合は、子供が親へ仕送りをしている事実が必要になりますので、それを証明する書類が必要になります。もし、仕送りを振込で行っている場合は、通帳の写し、現金書留で送っている場合は、その時の控えを添付することになりますので、もし、別居の親を扶養に入れたい場合は、前もってこれらを提出できるように、準備しておく必要があります。以前は、これらの書類がいらない時期もありましたが、現在は基本的に添付が必要なので注意してください(ただ、各年金事務所のよって対応が異なる場合がありますので、必ず事前に確認してください)。
まとめ
今回は、以上になります。親に収入がなく、かつ、同居している場合は、特に問題なく手続きを行うことができますが、別居やある程度の収入がある場合は、すこし複雑になりますので注意してください。