試用期間満了での解雇に予告手当は必要か?

前回は、試用期間の延長に関して解説しましたが、今回も試用期間について別の角度から解説したいと思います。

今回は、

・例えば試用期間を3ヶ月に設定している会社で、試用期間中の勤務成績等があまり良くなかったため試用期間満了で解雇する場合、解雇予告の実施又は解雇予告手当の支払は必要になるか?

・上記の場合で解雇予告又は解雇予告手当の支払が必要だとして、もしそれらを行わないで解雇した場合、解雇自体無効になるのか?

について解説していきたいと思います。試用期間の運用に関しては、勘違いされている方も多いので参考になればと思います。

試用期間中でも解雇予告又は予告手当の支払は必要か?

試用期間とは、ご存知の通り、本採用を行う前に、従業員の勤務態度、勤務成績、能力、技能、適性などを会社側が見極める期間といえます。一般的には、1ヶ月から6ヶ月の間で設定することが多く、調査によると3ヶ月の試用期間を設ける会社が最も多いようです。

本採用前の期間であるから、本採用拒否(解雇)についても自由にできると思っている経営者の方もいるようですが、本採用を行わない場合でも、本採用を行わない客観的で合理的な理由がなければ、本採用を拒否することはできません。もちろん、本採用後の解雇と比べれば、より広い範囲で解雇の自由が認められますが、それでも、明確な合理的理由がない本採用拒否は認められないことは認識しておくべきです(単に社長が、その従業員となんとなく合わないといった程度では本採用拒否できないということです)。

上記を踏まえて、試用期間中の解雇(本採用拒否)でも解雇予告又は解雇予告手当の支払が必要かどうかですが、この点については労働基準法21条に記載があります。

労働基準法第21条
 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
1.日日雇い入れられる者
2.二箇月以内の期間を定めて使用される者
3.季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
4.試の使用期間中の者

冒頭の「前条」は、解雇予告についての条文です。21条の最後、第4号に「試の使用期間中の者」とありますが、これが試用期間中の労働者を指します。つまり、試用期間中の労働者については、解雇予告については適用しないが、「十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない」としているので、結局、14日を超えて勤務している場合は、試用期間中の者であっても、解雇予告又は解雇予告手当の支払が必要になるということになります。
ですから、試用期間を1ヶ月とか3ヶ月に設定している会社が、試用期間満了時に本採用拒否する場合でも解雇予告は必要ということになります。

 

解雇予告をしないで行った試用期間満了による解雇は有効か?

実は、これについては学説・判例とも分かれていますが、最高裁の判例において、以下のように述べているので、この考え方が主流になっています。
「使用者が労働基準法第二十条の所定の予告期間をおかず、又は予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、又は通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生するものと解すべきであって、本件解雇の通知は30日の期間経過と共に解雇の効力を生じた」(細谷服装事件)。

判例なので少し分かりにくい表現をしていますが、つまり、試用期間満了でその労働者に解雇を通知した場合、満了日に解雇は成立しないが、解雇予告の通知としては成立するので、その日から30日後に解雇は成立することになります(満了日に30日分の解雇予告手当を支払えば、満了日でも解雇は成立します)。
例えば、3ヶ月間の試用期間を設けている会社が、試用期間中の勤務態度等で判断して本採用を拒否しようとしても、実際に解雇できるのは3ヶ月の試用期間+30日が必要ということいなります。では、試用期間の2ヶ月が過ぎたところで解雇の予告をすれば良いかと言うこのになりますが、それでは試用期間を3ヶ月に設定する意味がなくなります(実質の試用期間は2ヶ月間ということになるので)。

試用期間満了日から解雇が成立するまでの間の賃金はどうなるのか?

先に述べたように、試用期間満了時に解雇を通知しても、その解雇が有効に成立するのはその30日後ということになります。そうなると満了日から解雇成立日まで、会社と労働者との雇用関係は継続していることになります。おそらく、この労働者はその間、勤務することは無いでしょうが、会社の一方的な判断で、この労働者を休業させていることになりますので、少なくとも休業手当の支払は免れないと思われます。ただ、休業手当を支払ったとしても、労働者側には賃金の全額を請求する権利が残されているものと思われます。

そのため、個人的には、試用期間満了時に30日分の解雇予告手当を支払って、満了日で解雇を有効に成立させるのが最も良い方法ではないかと思います。

まとめ

上記のように、本来、試用期間満了で解雇するためには、色々な制約が出てきます。でも、実際の現場では、おそらく、試用期間満了時に本採用拒否(解雇)を通知して、多くの労働者もそれを受け入れているのが現状ではないでしょうか。

しかし、その場合、法的に問題があるのも事実ですので、こういった知識を踏まえつつ、試用期間についてもう一度検討されてはいかがでしょうか?

 

 

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