有期契約社員の無期雇用転換ルールとは?2018年問題
今回は、いわゆる2018年問題について解説したいと思います。
労務関係における、2018年問題は主に2つあります。
一つは、2013年4月、労働契約法が改正されたことに伴い、有期の労働契約の期間が繰り返され、それが合わせて5年を超えると、期間の定めの無い契約つまり無期の労働契約に切り替えなければならないルールが新たに制定されました。これを「5年ルール」とか「無期転換ルール」といいます。これらのルールは、法改正があった2013年4月以降の有期契約からカウントするこことになるので、2013年4月から5年後である2018年にこのルールが適用される従業員が出ることから「2018年問題」といわれるようになりました。
もう一つは、2015年9月に行われた派遣法の大改正によるものです。それまでは、一定の業務に関しては、期間の制限なしで派遣が可能でしたが、この大改正以後は、個人単位についても、「3年」が上限とされました。3年を過ぎると、別の会社に移るか、同じ会社でも別の部署に異動しなければならなくなりました、2015年10月から3年後の2018年10月に丸3年をむかえることからこちらも「2018年問題」といわれるようになりました。
今回は、労働契約法の2018年問題について解説していきたいと思います。
労働契約法の「2018年問題」の概要
まずは、労働契約法の「2018年問題」からみていきたい思います。
有期契約から無期契約への転換条件
冒頭でも少し解説したように、無期転換のルールは、同じ会社での有期の労働契約が繰り返され、結果としてそれが5年を超える場合又は5年を超える予定の場合に、その有期労働契約を締結した労働者の方からの申し込みにより、それ以降は、無期の労働契約に切り替わるというものです。
例えば、最初の有期の労働契約の期間は1年間で、それが毎年、繰り返された場合、5回目の更新時、つまり6年目の期間に入ったときに、労働者には無期転換への申し込み権が発生します。労働者は、6年目の契約期間の1年間の間に、無期契約への転換を希望すれば、無期契約に切り替えることができます。
では、契約期間が3年の場合はどうでしょうか。この場合1回目の更新をした段階で、労働者には無期転換への申し込み権が発生します。労働者は2回目の契約期間の3年の間に、無期契約への転換を希望すれば、2回目の契約終了後に無期契約に切り替わることになります。
ただ、いずれも2013年4月以降に始まった契約からカウントします。
(図は厚生労働省 有期労働者の無期転換ポータルサイトより抜粋)
無期転換ルールの重要ポイント
無期転換には労働者の申し込みが必要。
無期転換には、必ず労働者からの申し込みが必要となります。逆に言えば、申し込みが無い限りは、企業側は無期転換にする必要はありません。無期転換への申し込みは口頭でも一応成立しますが、後のトラブルを防ぐ意味でも書面による申し込みを行ったほうが良いです。
無期転換の申し込みをされた場合、会社は拒否できない。
先ほど、無期転換には労働者からの申し込みが必要と言いましたが、労働者からの申し込みがあれば、企業側はそれを拒否することはできません。要件を満たした上で無期転換の申し込みが行われた場合は、必ず無期契約に切り替えなければなりません。
無期契約に切り替わってもその他の労働条件が良くなるわけではない。
無期転換ルールは、あくまで有期の労働契約を無期の労働契約に切り替えるためのものです。そのため、契約期間以外の労働条件については、直前の労働契約の内容と同じになります。もちろん会社と労働者との話し合いの上、双方が合意すれば、他の労働条件の変更も認められます。
クーリング期間とは?
一旦、労働契約の期間が終了し、その後、また同じ会社に有期の労働契約で勤務した場合に、前後の期間は通算されるのでしょうか?それとも、リセットされてしまうのでしょうか?
これは、前の契約期間と次の契約期間までどれだけ間が開いているかによります。この間の期間のことをクーリング期間といいます。
まず、一旦、退職する前の期間が1年以上だったか1年未満だったかによってクーリング期間は異なります。
一旦、退職する前の期間が1年以上あった場合、次の契約までの期間(再び同じ会社に勤めるまでの期間)が6ヶ月未満であれば、前後の期間は通算されます。6ヶ月以上であれば、前後の期間は通算されず、リセットされます。
一旦、退職する前の期間が1年未満あった場合、次の契約までの期間(再び同じ会社に勤めるまでの期間)に応じて、下記表の右欄にの期間に該当するときは、前後の契約期間は通算されずリセットされます。逆にこの期間未満の場合は、前後の契約期間は通算されます。
例えば、3ヶ月間の契約で勤務した後、2ヶ月の間を空けて、再び、同じ会社に勤めるようになった場合は、前後の期間の通算はありません。これがもし、1ヶ月の間が開くだけであれば、前後の期間は通算されることになります。
継続雇用の高齢者に対する特例
本来であれば、ここまで説明したように有期の労働契約の期間が通算で5年を超えて更新された場合は、労働者に無期転換の申し込み権が発生しますが、以下の場合は、特例として、申し込み権が発生しません。
・適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で
・定年に達した後、引き続き雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)
まとめ
如何でしたでしょうか?実質的に5年に到達するのは今年(2018年)4月になりますので、もう間もなくということになります。
有期の労働契約が繰り返されて5年に到達し、労働者からの申し出があれば、会社は無期転換を拒否できないという厳しいものですが、無期転換することが必ずしも会社にとってマイナスになることは無いと思います。特に、昨今は、深刻な人手不足が続いている状況で、無期転換により、労働者側も安心して働けるのであれば双方にとって良いことではないでしょうか。
ただ、そうはいってもこの制度を嫌う会社も当然出てきます。5年に到達する前に、契約を更新しない、いわゆる「雇い止め」を行う会社も出てくるでしょう。ただ、単純に5年に到達するからという理由だけで、雇い止めをすることはできません。会社側は、雇い止め法理に基づき、もし行うのであれば適正に行うことが求められます。