営業スタッフの残業代計算は間違いが多い?

働き方改革で労働時間の削減が叫ばれる一方、人手不足により、労働時間がなかなか減らない現状もあります。昨今は、労働基準監督署の調査も増え、未払い残業が問題になるケースも多いですが、会社が問題ないと思っていても、実は、その残業代計算自体が間違っていたというケースも少なくありません。特に営業スタッフ等で歩合給がある従業員の残業代計算が間違っているケースが多いので、今回は、営業スタッフの残業代計算を詳しく解説したいと思います。

  

営業スタッフの残業代計算の具体例

具体的に営業スタッフの残業代の計算事例を紹介したいと思います。ここで言う営業スタッフとは、営業活動等の実績により「歩合給」が支給される方をいいます。

<営業スタッフAさんの場合>

Aさんの基本給20万円、諸手当5万円、歩合給0円から17万円(営業成績により変動)。
月の平均所定労働日数21日、月の平均所定労働時間168時間、残業時間10時間から40時間

Aさんのある月の状況

歩合給は17万円、この月の残業時間は40時間、法定休日の労働はなし、深夜勤務もなし、この月の残業時間を含めた総労働時間は208時間

この月の残業代の計算

(基本給20万円+諸手当5万円)÷月平均所定労働時間168時間=1488円(←これが残業1時間当たりのベース単価)

1,488円×1.25(割増率)×40時間=74,400円

となり、いわゆるこれが時間外手当(=残業手当)になりますが、実は、ここで終わってしまう会社が非常に多いです。実際には、歩合給にも残業代がかかります。

ただ、上記で計算した一般の残業代とは別に以下のように計算します。
歩合給にかかる残業代は、歩合給の額を「総労働時間」で割って時間単価を算出し、そこに割増単価と残業時間を乗じて計算します。

歩合給額170,000円÷総労働時間208時間=817円(これが単価)

817円×0.25(1.25のうち「1」の部分は、すでに通常の残業代のほうで支払っているのでここでは0.25のみを乗じます)×40時間=8170円
となり、これが歩合給部分にかかる残業代です。

よって、この月のAさんの残業代の総額は、74,400円+8,170円=82,570円となります。

歩合給の場合は、平均所定労働時間を使って単価を計算するのではなく、「総労働時間」を使うことを忘れずに!

もう一例、より複雑な例をご紹介します。

<営業スタッフBさんの場合>

Bさんの基本給25万円、諸手当5万円、歩合給0円から20万円(営業成績により変動)。
月の平均所定労働日数21日、月の平均所定労働時間168時間、残業時間10時間から45時間

Bさんのある月の状況

歩合給は20万円、この月の残業時間は35時間(このうち10時間は深夜労働(法定休日の深夜でない))、法定休日の労働は1日あり(8時間)、この月の残業時間・休日労働を含めた総労働時間は212時間

この月の残業代計算

(基本給25万円+諸手当5万円)÷月平均所定労働時間168時間=1,786円(←これが残業1時間当たりのベース単価)

1,786円×35時間×1.25(割増率)=78,138円(通常残業分)
1,786円×10時間×0.25(割増率)=4,465円(深夜割増分)
1,786円×8時間×1.35(割増率)=19,289円(法定休日労働分)
合計101,892円
次に歩合給にかかる残業代計算をします。
200,000円(歩合給)÷212時間=943円(これが単価)
943円×35時間×0.25(割増率)=8,251円 (通常残業分)
943円×10時間×0.25(割増率)=2,358円(深夜割増分)
943円×8時間×0.35(割増率)=2,640円(法定休日労働分)
合計 13,249円
Bさんのこの月の総残業代は、115,141円となります。

歩合給制で、深夜や休日労働があると残業代の計算は、かなり複雑になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?実際、従業員が1000人以上の会社でも、これらの計算ミスが見られる場合があります。一般的な残業代は、基本給や諸手当に変更がない限り単価が固定されるので、あとは、残業時間さえ入力すれば、自動的に計算してくれるシステムはたくさんあると思います。
しかし、歩合給部分は、毎月変わるので、システム自体がそこまで対応していないという場合もあるようです(もちろんきっちり計算している会社も多いです)。一度、ご自身の会社も確認してみてはいかがでしょうか?

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