諭旨退職、懲戒解雇、依願退職、諭旨解雇の違いとは?

ニュース等で不祥事を起こした労働者が「依願退職した」とか「懲戒解雇にあった」などと報道される場合が、ありますが、そもそも、依願退職、懲戒解雇、諭旨退職などの違いは非常に分かりにくいと思います。
そこで、今回は、それらの違いを解説したいと思います。

そもそも、諭旨退職や依願退職などは、法律上の規定があるわけではないので、明確な定義があるわけではありません。そのため、会社によって、微妙に使い方が異なる場合があるので注意が必要です。
ここでは、一般的な使い方でご紹介します。

  

諭旨退職・依願退職と諭旨解雇

まず、冒頭でもご説明したように、諭旨退職も諭旨解雇も法律に規定されている用語ではないので、実際には、各社によって取り扱いが異なります。諭旨退職も諭旨解雇も同じ意味でとらえている会社もありますし、きっちり分けている会社もあります。
諭旨退職は、不祥事などを起こした従業員に対し会社が行う懲戒処分の一種です。そのため、諭旨退職を行う場合は、必ずその会社の就業規則に諭旨退職に関する規定が必要となります。
諭旨退職は、例えば、横領などの場合に、本来は懲戒解雇に該当するが、その従業員が、全額を返金していて、十分反省しているなど情状酌量の余地がある場合に、一段、懲戒のレベルを引き下げて、諭旨退職とし、就業規則で定めた期間内に、その労働者が退職を申し出て、退職届等を提出した場合には、懲戒解雇にはせずに、自己都合退職として処理するというものです。そのため、退職届を提出しなければ、懲戒解雇となる場合が多いようです。
就業規則には「退職願を提出させて諭旨退職とする。」「諭旨のうえ退職を勧告して諭旨退職とする。10日以内に退職届を提出しない場合には懲戒解雇とする。」といった表現が取られることが多いです。
通常の自己都合退職とは違い、退職金等が一部減額される場合もあります。このあたりのことも就業規則の規定に従うことになります。
諭旨解雇と趣旨退職は、懲戒解雇よりも懲戒レベルを一段引き下げるという意味では同じですが、諭旨退職は、退職届を提出させるのに対し、諭旨解雇はあくまで解雇の形をとるので、退職届は受理しませんが、解雇であるため、会社側は30日以上前に解雇予告するか、30日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。
そのため諭旨退職を選択する会社のほうが多いようです。

一方、依願退職は、ニュース等でよく使われるため、悪いイメージを持っている方も多いかもしれませんが、依願退職は、諭旨退職や諭旨解雇とは違い、懲戒処分ではありません。
退職を自分から申し出ることを依願退職と言い、要するに、ごく一般的な退職はすべて「依願退職」となります。別に悪いことをしたから退職を申し出たという意味ではありません。

懲戒解雇

懲戒解雇は、会社が行う懲戒処分の中で最も重いものです。そのためどういった場合に懲戒解雇に該当するかは就業規則に必ず規定しなければなりませんし、規定されていない理由で懲戒解雇することは基本的にはできません。
また、逆に規定されているからと言って、必ずしも懲戒解雇が有効になるわけではないことにも注意が必要です。
懲戒解雇に該当するのは、例えば会社の名誉を著しく損なうような犯罪行為(業務に関連する横領等だけでなく私生活上であっても殺人や傷害、誘拐など犯罪行為を行った場合にも該当します)、経歴詐称(資格の有無や学歴・経歴詐称など)、1ヶ月以上の無断欠勤などがあります。
懲戒解雇に該当する場合は、労働基準監督署長の認定が取れれば、即時解雇も可能でその場合は解雇予告手当も必要ありません(ただ、認定を取るのに時間がかかります)。
また、基本的には退職金の支払いもない会社が多いようですが、一部のみ支給するという会社もあります。それぞれの退職金規程に従うことになります。

まとめ

諭旨退職や諭旨解雇、懲戒解雇にしろ懲戒として行う場合には、必ずそれ相応の理由が必要になります。勤務成績が他者と比べて悪い程度では、これらを課すことはできないことは言うまでもありません。
実際、懲戒をめぐって裁判となることは珍しくありません。特に、懲戒解雇や諭旨解雇により、退職金が不支給になったり、大幅に減額されたりする場合には、訴訟リスクがあることも十分に理解したうえで、それらを課す必要があります。

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