労災保険と解雇制限

久しぶりの投稿になってしまいました。助成金がひと段落したので、これから不定期ですが更新していきたいと思います。取り上げてほしい内容等がありましたら、コメントいただけるとうれしいです。
さて、今回は、関与先さんからのご相談です。業務以上の事故により、けがをした従業員の方がおり、治療をはじめて1年以上が経過してているようです。まだ、治療の必要があるようですが、昨今のコロナの影響で、人員整理をすすめており、この従業員の方の解雇も考えているとのことでした。
この場合、会社の業績悪化を理由に解雇はできるのか?というご相談でした。
最近は、こういいた解雇に関するご相談がかなり増えてきています。法律上可能なのかの観点から解説していきたいと思います。
  

ますは、法律を確認しましょう

今回のご相談の件について、法律上どうなっているのかを確認しましょう。
労災にて療養中の労働者の方の解雇については、労働基準法に条文があります。

労働基準法第19条になります。内容は以下の通り。

労働基準法 第19条  

  1. 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。
  2. 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

いつもながら難しい言い回しで書かれているので、簡単に解説すると、
業務上の負傷つまり労災事故の治療のために、会社を休まざるを得ない間と復帰してからその後30日間は解雇できないということになります。

よって、今回のご相談のお答えは「現時点では解雇できない」ということになります。

ただし、治療等のために会社を休んでいる間とその後30日間なので、例えば、労災事故によりけがを負ったが、まったく休まなかった場合は、この条文は適用されませんし、1週間程度休んですぐに復帰した場合は、その1週間とその後30日間は解雇できませんが、その後は解雇できるということになります。

なお、あたり前の話ですが、復帰して30日間経過したとしても、解雇するに正当な理由がなければ解雇できませんの注意してください。

絶対に解雇できないわけではない

では、もし、治療が5年とか10年とか長期にわたってしまう場合は、その間、一切解雇できないのでしょうか?

さすがに、それでは会社の負担があまりにも大きくなるので、労働基準法第81条に打切保証というものが定められています。

では、今回も条文を見てみましょう。

労働基準法 第81条

 第75条の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

簡単に言うと、治療を始めて3年を経過しても、そのけが等が治らなかった場合は、平均賃金の1200日分を支払えば、その後は解雇が可能ということになります。

1200日分ということは、仮に平均賃金が5000円の方だと600万円に、10000円の方であれば1200万円となりますので、会社の負担はかなり大きいといえます(ちなみに、月給30万円の方でだいたい平均賃金が10000円になります)。

また、この打切補償を支払う以外に、労災保険から傷病補償年金というものを受給している場合は、打切補償を支払ったと同等と扱われ解雇が可能になります。
こちらについては労働者災害補償保険法第19条に記載があります。

労働者災害補償保険法 第19条

業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けることとなつた場合には、労働基準法第19条第1項 の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該三年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなつた日において、同法第81条 の規定により打切補償を支払つたものとみなす。

注意しないといけないのは、傷病補償年金を受給しているだけではダメで、治療を開始してから3年を経過した時点で傷病補償年金を受給している必要があります。

対象となるのは業務上の事故のみ

今回のような解雇制限の対象になるのは、あくまで業務上での労災事故のみです。通勤上の災害、いわゆる通勤災害は対象ではなりませんので注意が必要です。

また、例えば、治療の途中で、会社の定年年齢に達した場合は、そのまま定年による退職が可能となります(これは解雇ではないので・・・)

さらに、例えば、もともと1年間の雇用契約を締結した従業員の方が労災事故で治療することになっても、契約期間が満了した場合は、期間満了日での退職となります(更新条項等がない場合)。

労災

まとめ

労災事故が起きると、被災した従業員の方ももちろん大変ですが、事故を起こしてしまった会社も大きな負担を負うことになります。もちろん、治療費や被災した労働者の方の休業補償は労災保険から出ますが、休んでいる間の社会保険料(会社負担分)負担や上記のような、打切補償は会社が負担することになります。
いまだに、労働保険にすら加入していない事業所をたまに見かけますが、直ちに加入すべきです(加入すべきというか、本来、強制加入ですが・・・・)。
労働保険への加入はもちろん、日ごろから事故を起こさないように、安全管理体制を強化することも重要です。

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