年次有給休暇の前倒で付与する場合の注意点

今回も顧問先からの相談内容から解説していきたいと思います。

相談内容は、来月に入社予定の社員から、入社した月に有給休暇を取得したいので、半年後に付与予定の10日の有給休暇のうち半分の5日分前倒しで入社日に付与してもらえないかと言われたが、会社としてはどのように対応したらよいかというご相談でした。

まだ入社していないのに、なかなか大胆な要求をしてくる方もいるなんだなと個人的には感じましたが、会社側はどうしてもその方を採用したいようで基本的に認める予定だが、何か注意点はあるかとのご相談でした。

これに関してはいくつか注意点があるので解説します。

  

そもそも年次有給休暇の前倒し付与は適法なのか

これに関しては、現状、いろいろな説があるようですが、個人的には、適法というか少なくとも違法性は無いと考えています。結局、労働基準法には、有給の前倒し付与に関する条文はありませんし、そもそも労働者にとっては、有利になるものなので、これが違法であると考えにくいです。

ごくまれに違法だと言っている方がいるようですが、その方たちは、結局、本来の付与日に、本来の日数が付与されないからというのが理由らしいです。つまり、例えば入社日に5日付与、6ヶ月後に5日付与すると、その6ヶ月後は本来は10日必要なのに5日しか与えていないということだと思うのですが(すみません。詳しくはわかりません)、入社日に5日与えて、6ヶ月後に5日与えているのだから、入社から6ヶ月後には合計10日きちんと適法に与えているのだから問題はないはずです。

前倒し付与する場合の注意点

先にご説明した通り、前倒し付与自体は、特に問題はありませんが、適法か違法かとは別で、前倒し付与する場合に、特に会社側は注意する必要があります。

何に注意する必要があるかですが、まずは、平成6年1月4日に労働省労働基準局長が出した通達(基発第1号)の中身を見る必要があります。
全文は、ものすごく長いので、関係する一部分だけ抜粋します。

「次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。(例えば、斉一的取扱いとして、四月一日入社した者に入社時に一〇日、一年後である翌年の四月一日に一一日付与とする場合、また、分割付与として、四月一日入社した者に入社時に五日、法定の基準日である六箇月後の一〇月一日に五日付与し、次年度の基準日は本来翌年一〇月一日であるが、初年度に一〇日のうち五日分について六箇月繰り上げたことから同様に六箇月繰り上げ、四月一日に一一日付与する場合などが考えられること。)」

上記の主に後半部分が今回の前倒し付与に関係する部分になります。

少し分かりやすくして書いてみます。

有給休暇を分割して付与する場合、例えば、4月1日入社した従業員にその入社したときに5日間の有給休暇を与え、本来の有給休暇付与日である6ヶ月後の10月1日に5日間付与した場合、本来、次の有給休暇付与日は1年後の10月1日のはずですが、1年目に10日間のうち5日間を6ヶ月間繰り上げて4月1日に付与したため、基準日も6ヶ月繰り上がり、翌年の4月1日に次は11日付与する必要がある。
と書いています。

つまり、2022年4月1日入社で入社日に5日間付与、6月後の2022年10月1日にさらに5日間付与、その次は2023年4月1日に11日付与する必要があることになります。

結局、会社としては基準日が以後6ヶ月間前倒しになるので、会社にとっては不利となります。

気軽な気持ちで、前倒しの付与を行うと、その後の付与にも影響しますよということです。

前倒し付与する会社は、少なからずありますが、上記のことを理解しないまま行っていて、2年目の付与日は10月1日でOKだと思っている会社は多いです。

また、上記だけではなく、前倒し付与すると、有給の5日間の取得義務にかかる期間計算についても、複雑になってしまうので、基本的にはあまりお勧めはしていません。
(このあたりはまた別の機会に解説します)

ただ、従業員の方にとっては、前倒しで付与されることは、有利なので、従業員の方の満足度を上げる点では良いのかもしれません。

上記のことをきちんと理解し、日数の管理もきちんと行えるのであれば、行っても良いと思います。

 

 

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