出張手当は社会保険料算定の対象になるか?
今回も顧問先様からのご相談です。
その顧問先では、
「今後は、出張した際に、出張手当を支給したいのだが、都度支払うのではなく、給与と一緒に支払いたい。その場合、社会保険料は上がってしまうのでしょうか?」
というものでした。
一般的な手当ては、原則としてすべて社会保険料を算定する際に含めなければなりませんが、今回の出張手当の場合はどうでしょうか?
今回は、この点について解説したいと思います。
そもそも出張手当とはどういうものか?
まず出張手当とは、そもそもどういものでしょうか?
出張手当の中身については、各社によって内容が異なるため、一概に言うことはできず、各社の「出張旅費規程」に基づき支給されるものを言います。
出張旅費規程では、出張に関するルールや旅費等の支給に関する基準が定められ、主に、交通費・宿泊費・日当に関して定めることになります。
この出張旅費規程の定め方も各社によって変わるので、これが正解というものはありません。
重要なのは、それが「実費弁済」として支給されるものであるかどうかです。
実費弁済とは、出張を行うために必要になった費用を弁済するということです。
実費弁済と認められる範囲で支給されたものであれば、社会保険料の算定の基礎には含まれませんし、所得税もかからないことになります。
厚生労働者が出している「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」において、
「報酬」・「賞与」にはどのようなものが含まれるか?
の問いにたいして、以下の記述があります。
”事業主が負担すべきものを被保険者が立て替え、その実費弁償を受ける場合、労働の対償とは認められないため「報酬等」に該当しない。
【例】出張旅費、赴任旅費”
例えば、出張の交通費として8,000円、宿泊費として10,000円が実際にかかていた場合、出張手当として18,000円を仮に給与に含めて支給したとしても、社会保険料の算定の基礎には含まれないことになります。

旅費日当は、労働の対価か?実費弁済か?
交通費、宿泊費、日当の中で、判断が難しいのは旅費日当です。
旅費日当は、本来は、労働の対価として支払われるものではなく、交通費や宿泊費以外にかかるであろう雑費の補填のために支払われるものです。
そのため、こちらも実費弁済として支払われている限りは、社会保険料の算定の基礎には含まれません。
一般的には、役職別に旅費日当を出張旅費規程で定めるところが多いです。
例えば、社長6,000円、役員5,000円、部長職4,000円、課長職以下3,000円といった感じです。
細かな雑費を1円単位で計算するのは大変なので、1日○○○円といった感じで決定します。そのため、細かく計算した実際にかかった費用と日当は必ずしも一致しないことになります。
これくらいの金額であれば、実費弁済として認められる可能性が高いですが、より高額、例えば1回の出張で、旅費日当が数万円になるような場合は、実費弁済とは認められず、社会保険料の算定の基礎に含む必要がでてくるので注意が必要です。
この辺りの判断は、所得税の対象になるかどうかと社会保険の算定の基礎になるかどうかでは、必ずしも一致しませんので注意が必要です。
(所得税の対象にはならないが、社会保険の対象になるはなる可能性はゼロではありません。所得税は税務署が判断しますが、社会保険は年金事務所が判断するため)
手当の名称で決まるわけでは無い
これは、当然のことなのですが、「出張手当」や「旅費手当」という手当の名称にすれば、すべて社会保険料の算定の基礎から除くことができると思っている方が実際には結構みえるのですが、そう単純な話しではありません。
きちんと規程が整備されており、実際にかかった費用分のみを弁済していなければ除くことはできませんので注意してください(旅費日当については相当額)。
まとめ
出張手当(日当、交通費、宿泊代等)を社会保険の算定の基礎から除くためには、原則としては出張旅費規程を整備し、適切な範囲で支払うことが求められます。
ただ、交通費や宿泊代については、実際にかかった費用をそのまま弁済する場合は必ずしも出張旅費規程がないと認められないわけではありません。
出張手当を支給する場合は、それが社会保険の対象になるのか、所得税の対象になるのか慎重に判断するようにしてください。