作業着のクリーニング代は労働者が負担しないといけないのか?

今回も顧問先さんからのご相談内容を基に解説したいと思います。
相談内容は、労働者には退職時に、作業着をクリーニングして返却するか、クリーニングしていない場合は、1万円を負担してもらうようにしているがこれは問題ないか?
というものでした。これ、工場や飲食店、小売店などでよく行われていることなんですが、法的な解釈を考えると実は、結構複雑で、専門家の中でも意見が分かれる部分でもあります。
私の個人的な意見も踏まえて考えてみたいと思います。

  

まずは、前提条件を考える

先程も書いたように、作業着等のクリーニング代を労働者に負担させるケースというのは、珍しいものではありません。ただ、負担させることについて、事前に労働者にどのように説明していたか、就業規則・労働契約書がどのようになっていたかによって、負担しないといけないのか、負担しなくても良いのかが変わってきます。

①事前に全く説明が無かった場合

入社の際に、退職時等に作業着のクリーニング代を労働者が負担する旨の説明が一切なく、また、仮に就業規則に負担する必要がある旨の記載があっても、その就業規則が周知されていない場合、労働契約書にもその旨の記載がない場合は、これは、ほぼ異論の余地なく、労働者はクリーニング代を負担する必要はありません。

②入社時に説明があり、かつ、就業規則、労働契約書にも記載がある場合

この場合は、基本的には、労働者はクリーニング代を負担する必要があります。ただ、クリーニング代の金額自体については交渉の余地があります。そもそも、余程特殊な作業着でもない限り、クリーニング代が1万円もかかりません。この点については交渉しても良いと思います(労働者本人が自らクリーニングに出したうえで返却するのであれば問題ないかと思います)。

③入社時に説明があり、労働契約書にも記載があるが、就業規則には記載がない場合

このパターンは判断が難しくなります。入社時に説明があり、労働契約書にも記載があるため、労働者もその点を納得した上で入社しています。
しかし、労働契約法第12条には、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。」と規定されています。これをどう判断するかで難しくなります。この規定は一般的には、就業規則で定める労働条件よりも、労働契約書で定めた労働条件のほうが低ければ、就業規則に定めた労働条件が適用されるというものです。この条文の解釈として、就業規則にはクリーニング代を労働者が負担する旨の記載はないわけだから、労働契約書にその旨の記載があってもそれは無効だする解釈もできますが、就業規則にはっきりとクリーニング代は労働者が負担する必要がないと記載があれば、確かにその通りなのですが、そもそも何も記載がない事項については、この判断が難しいのではなと思います。結論は、裁判でしか判断が付かないと思いますが、そもそもこの程度の事案で裁判になること自体が無いので、実務的には話し合いで決定という着地点かと思います。

④入社時に説明がなく、労働契約書にも記載はないが、就業規則には記載がある場合

そもそも就業規則にクリーニング代を労働者に負担させる旨の記載があるケースは稀だとはおもいますが、仮にあったとした場合、③の理屈で言うと就業規則が優先されるので、負担させることができそうですが、先ほどの労働契約法第12条は、就業規則に定める基準に達しない労働条件は無効という意味なので、労働者にとって不利な労働条件が就業規則に定められている場合にまで有効なのかは疑問が残ります。この場合も、結局は話し合いかと思いますが、個人的には負担させるには無理があると感じます。
(ただ、入社時に説明があったのか無かったのかの証明は、言った言わないの問題なので難しくなります)

労働者に負担させたい場合は、労働契約書も就業規則も整備しておくべき

会社側が、確実に労働者にクリーニング代を負担させたいと考えるのであれば、入社時にその旨をはっきり説明し、かつ、労働契約書にもその旨を記載し、かつ就業規則にも規定を整備したほうが良いかと思います。

また、金額についても、なにか懲罰的に不当に金額を高く設定するのではなく、一般的な金額にしておくべきかと思います。

まとめ

今回は、あくまで個人的な法解釈を含んでいますので、これが正解というわけではないので、その点はご了承ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。