出産手当金の申請手続きが誰でも分かる!計算期間と申請手続のすべて(記入例付)

会社で健康保険に加入している方が、出産のために会社を休んだ場合「出産手当金」が健康保険から支給されます。

でも、この「出産手当金」は待っていてももらえません。協会けんぽや各健康保険組合に申請手続きをしなければ、貰えないのです。

では、どうやって申請すればいいのか?どのような条件の人がもらえるのか?そもそも、自分で手続きしなければならないのか?会社がやってくれるのか?いつもらえるのか?いくらもらえるのか?などの疑問をお持ちの方もいいのではないでしょうか?

そこで、今回は、出産手当金の仕組みからどのように申請手続きを行うのかまでをかなり詳細に解説していきます。

この記事を見て頂ければ、誰でも申請手続きができるようになることを目指していきたいと思います。

出産手当金とは?

出産手当金は、会社の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に加入している方が、出産のために、会社を休んだ場合に、給料の6割程度を保障してくれる健康保険からの給付制度です。基本的に、出産前42日間と出産後56日間の給与を保障してくれます。
会社の健康保険に加入している必要があるので、自営業者などが加入する国民健康保険では、出産手当金はもらえません。
また、会社を休んでいても、その間、会社から給料が全額支払われている場合も受給は出来ません。あくまで、出産前後の所得保証の意味合いをもっています。

出産手当金を受けるための4つの条件

1.健康保険の被保険者であること(被扶養者はダメ)

会社で健康保険に加入していればOKです(ご自身が加入している必要があるので、旦那さんの扶養に入っているだけではダメです)。当然ですが、女性のみが対象となります。
パートさんであっても、健康保険に加入していれば、当然、受給できます。

2.出産のために仕事を休んでいること

例えば、出産ぎりぎりまで勤務を続けた場合、その勤務していた期間については、出産手当金は支給されません。ちなみに法律上、出産してから少なくとも6週間は働くことを禁止されているので、少なくともこの期間は確実に仕事を休むことになります。

3.休んでいる間、給与が支払われていないこと

出産のため会社を休んでも、その間、給与を全額支払ってくれる会社もありますが、その場合は、出産手当金は支給されません。また、もし、給料の一部が支払われている場合は、出産手当金からその給与額を控除した差額が支給されます。

4.妊娠4ヶ月(85日)以上の出産であること

死産(流産)や人工妊娠中絶でも支給はされますが、妊娠から85日以上経過している必要があります。

自分でできる出産手当金の計算と額

では、次に出産手当金がいくらもらえるかを計算してみましょう。
出産手当金の額を計算する上で、まず最初に、ご自身の「標準報酬日額」というものを把握しておかなければなりません。この標準報酬日額は。毎年4月、5月、6月に支払われた給与の平均額から算出された標準報酬月額を日額に直したものですが、自分がいくらになっているのか分からないという方も多いと思います。
もし分からなければ、会社に聞いてもいいのですが、聞きづらいという方もいると思うので、そんなときは、給与明細から逆算しましょう。
まず、給与明細の健康保険料の欄をみてください。その数字を覚えて、次に以下のページから会社の所在地の都道府県をクリックしてください。
平成31年度(令和元年度)保険料額表
例えば、東京都だと以下のような保険料額表がでてきます(画像をクリックすると拡大されます)。
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上記赤枠の中から、給与明細で引かれている健康保険料を探します。
例えば「11,964円」が控除されているのであれば、上記からその数字を探して、そのまま左のほうの標準報酬「月額」欄をみます。そうすると「240,000」と書かれていると思います。つまり、この方の標準報酬月額は「24万円」ということになります。

これで、標準報酬月額額がわかりました。
出産手当金の1日あたりの額の計算は、以下の計算式で算出します。

◎標準報酬月額÷30日×2/3

上記の例だと、24000円÷30日×2/3=5,333円となるので、この方は出産のため、会社を休むと1日あたり5333円(円未満は四捨五入)が支給されることになります。

ただ、厳密にいうともう少し複雑になります。標準報酬月額というのは、基本的に9月に変更されますし。9月以外でも基本給等が変更されれば、変更から4ヶ月目(又は5ヶ月目)に変更されることもあります。直近1年間で変更がなければ上記のままで結構ですが、変更がある場合は支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額を12で割って、平均額を算出する必要があります。もちろん、申請者が計算する必要はありません。協会けんぽのほうで自動で計算してくれます。

また、支給開始日までに健康保険加入期間が1年に満たない場合は、加入月から支給申請日がある月までの平均額と30万円のいずれか低いほうが標準報酬月額とされます。

出産手当金はいつからいつまでもらえるか(支給期間)?最大で98日+α貰える!

次に出産手当金は、いつからいつまでもらえるか?ですが、支給期間は以下のように決まっています。

◎出産の日以前42日+出産の翌日以後56日の期間

上記は単純計算で合計98日間ですが、これ以上貰える場合があります。

それは、出産予定日よりも遅れて出産した場合です。というのも、出産前の42日については、基本的に出産予定日を基準にその日以前42日間会社を休むことになります(まだ出産していないので、予定日から判断するしかない)。そして、実際の出産が予定日から遅れた場合には、実際の出産日の翌日から56日間なので、予定日翌日からから実際の出産日までの日数が加算されることになります。

少々わかりにくいので具体例をあげてご説明します。
例えば、出産予定日が10月21日だったとすると、この日以前42日に該当する日は9月10日ですので、9月10日から会社を休んだとします。そして、実際の出産日が予定日よりも5日遅れて10月26日だった場合、この日の翌日から56日間なので12月21日まで受給できます。

つまり、9月10日から12月21日までの103日間分受給できることになります(もちろん会社を休んでいる場合です)。

では、逆に予定日よりも早く生まれた場合はどうなるでしょうか?ケースによりますが、98日よりも少なくなることが多いです。
例えば、先ほどの例で出産予定日が10月21日でしたが、実際に生まれたのは10月16日だった場合、受給できる出産前の期間は10月16日以前42日なので、9月5日から受給できるのですが、会社を休んでいないといけません。余裕をもって会社をこの9月5日以前から休んでいるのであれば、問題ないのですが、予定日以前42日を計算して休んでいる場合は、9月10日から休んでいるので、9月5日から9月9日まで勤務しているとその分は受給できないことになります。期間を申請する際、間違えやすいポイントでもありますので、上記例を参考に自分がもらえる期間を計算してみてください。

出産手当金の申請は誰が行うか?

ここまでで、出産手当金の制度のしくみはご理解いただけたと思います。それでは、次に実際の申請手続きに移るのですが、そもそもこの出産手当金の申請は誰が行うのでしょうか?

原則として本人が行うが、会社が代わりに出してくれるところも多い

出産手当金に限らす、基本的に健康保険から受給できる給付の手続は、本人(今回で言うと出産する人)が行います。ただ、出産手当金や傷病手当金は会社が証明を行わなければならない箇所もあるので、会社が証明したらそのまま協会けんぽへ提出してくれるケースも少なくありません。このあたりは、一度、会社の総務か事務担当者に確認してください。

複数回に分けて申請も可能だが、1回で済ませたほうが良い

出産手当金の申請は、例えば1ヶ月ごとに分けて申請することも可能ですが、そのたびに、医師や事業主の証明を取らなければならない場合も多いので、出産後56日が経過した後にまとめて申請するのがおすすめです。

出産手当金支給申請の流れ

1.まずは支給申請書を入手!

会社が協会けんぽ(全国健康保険協会)の健康保険に加入しているのであれば、こちらから申請書がダウンロードできます。会社が独自の健康保険組合を持っている場合は、会社の総務部等に問い合わせてみましょう。

2.支給申請書に記入

では、記入方法を一つずつ見ていきましょう。
出産手当金申請書その1
(↑クリックで拡大できます)
生年月日、氏名、住所、電話番号は問題ないと思います。そのままお書きください。
一番最初の「被保険者証の記号番号」ですが、保険証の以下を見てください。

健康保険証見本
この数字をそのまま書き写してください。

次に振込口座の欄です。

出産手当金申請書その2
(↑クリックで拡大できます)
ここも出産者本人の振込口座を書くだけですので特に問題ないかと思います。口座名義の区分は「1」申請者にしてください。

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(↑クリックで拡大できます)
次に申請内容についてです。1番目は、出産前の申請か出産後の申請かを聞いています。先ほども書きましたが基本的に出産後にまとめて申請したほうが手間が省けますので、出産後の申請の場合は「2」を記入してください。
次は、出産予定日と実際の出産日をそのまま記入してください。
3番目は、実際に会社を休んだ期間を記入してください。ただし、出産予定日以前42日と出産後56日の範囲内になります。
4番目は、もし、3番目に記入した期間の給料を会社からもらっている場合は「1」をもらっていない場合は「2」を記入してください(通常はもらっていないケースが多いです)。
5番目は4番目で「1」の給与をもらっていると回答した場合は、いつからいつまでの分でいくらの給料をもらったかを記入してください。

次は医師又は助産師が記入する欄です。

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(↑クリックで拡大できます)
ここは、病院等で書いてもらう箇所なので、くれぐれもご自身で記入しないように注意してください。

最後は会社の証明欄です。

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(↑クリックで拡大できます)
ここもあくまで会社が記入する欄なので、ご自身では記入しないようにしてください。ただ、会社に証明してもらったら、出勤状況や給与額などに誤りがないかどうかは確認してください。

3.申請書を会社を管轄する協会けんぽ(全国健康保険協会)の支部へ郵送

先ほども書きましたが、会社が代わりに出してくれることもありますので、会社に一度相談してください。ご自身で提出する場合は、健康保険証の下のほうに協会けんぽの支部名と住所が書いてあるので、そこに郵送すればOKです。
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出産手当金はいつ入るか?(支給日はいつか?)

最近は、出産手当金申請後約3ヶ月~4ヶ月で指定した振込口座に入金されるようです(時期や都道府県によっても異なるようです)。

退職後でも出産手当金はもらえるか?

退職後でも出産手当金を受給できる場合があります。それは、以下の2つの条件を満たしている場合です。

①退職日までに1年以上継続して被保険者期間があること
同じ会社で1年以上ある必要はありませんが、2つの会社を通算する場合は前の会社と次の会社との間が1日も空いていない必要がります。また、任意継続被保険者の期間は被保険者期間として認められません。

②健康保険の資格喪失時(退職日の翌日)時点ですでに出産手当金を受給しているか、または申請をしていないだけで受給する条件をすべて満たしている場合は、退職後でも申請が可能です。ただし、引継ぎ等で退職日当日に、出勤してしまうと受給でなくなってしまうので注意が必要です。退職日よりも前に引継ぎを完了しておきましょう。

まとめ

如何でしたでしょうか?申請書の作成については、出産者ご自身が記入する部分については、それほど難しい箇所は無かったのではないかと思います。実は、この申請書の中で一番大変なのは、会社の証明欄です。もちろん、会社の証明欄なので、出産者自身が書くことはないのですが、会社の事務担当者の方は意外と苦労されているようです。
私は、社会保険労務士という仕事柄、出産手当金の申請書を見せていただくことも多いのですが、実は会社の証明欄で間違って記入されていることも少なくありません。ですので、会社に証明してもらったら、一度、内容をご自身でも確認してみてください。

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