代休と振替休日と割増賃金 勘違いしやすいポイントを詳細解説

今回は、代休と振り替え休日との違いについて解説したいと思います。

私は、社会保険労務士という仕事柄、経営者の方とお話することも労働者の方とお話しすることも多々あるのですが、どちらの立場の方も、この代休と振替休日については、しかっりと違いを理解している方ももちろんおみえですが、勘違いして理解している方も非常に多いように思います。

そこで、あらためて、代休と振替休日の違いを解説するとともに、代休や振替休日を行った際の、割増賃金の計算は、どうなるか?などについても解説していきたいと思います。

 

 

振替休日とは?

振替休日とは、「会社であらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とすること」ですが、これだけ見ると代休と変わらない様に思いますが、振替休日とするためには、以下の2つを満たす必要があります。
①必要がある場合には、休日を他の日に振り替えることができる旨が就業規則等に定めてあること
②もともとの休日だった日(労働させる日)が来る前に、振り替える労働日(休日にする日)を具体的に示すこと

これらを満たすことが必要になります。簡単に言うと、振替休日を行うことについて、就業規則にきちんと規定してあって、その上で、振替を行う前に、具体的に、いつといつを振り替えるということを労働者に伝えることが必要ということになります。
例えば、本来は、日曜日が会社の法定の所定休日だとして、日曜日に労働させたい場合は、その日曜日が来る前に、具体的に「次の日曜日に出勤してもらうけど、その次の火曜日は振替休日として休んでください」と労働者に明確に伝える必要があるということです。これらが出来て、はじめて振替休日といえます。

振替休日は、上記の例だと、休日自体が、日曜日から火曜日に替わることなので、基本的に、割増賃金の問題がが発生しないことになります(後に解説しますが、振替休日であっても割増賃金が発生する場合があります)。

代休とは?

次に、代休についてですが、代休については、振替休日と違って、特に要件のようなものは無く、単純に休日労働をさせた後に、任意で休みを与えることを言います。振替休日との違いは、休日労働の前に、休日を指定する必要がない点です。つまり、代休は、休日労働を行った後に、与えればよいですし、そもそも休日労働をしたからと言って必ずしも代休を与える必要もありません。
ただし、代休を与えた場合でも、休日に労働したという事実は変わりませんので、この場合、必ず割増賃金は発生することになります。先の例で言うと、法定休日の日曜日に(後の代休を指定することなく)労働させて、その後に、火曜日に労働者が代休を取得したとすると、日曜日の休日労働の事実は変わらないので、135%の割増賃金の支払いが日曜日の出勤について発生することになります。ただし、その後の火曜日に代休をとった場合は、先ほどの135%のうち100%分については相殺が可能なので、結果的には、35%分の割増賃金だけ支払えばよいことになります(代休を与えなければ135%のまま)。

 

振替休日でも割増賃金が発生する場合とは?

振替休日を行った場合、絶対に割増賃金が発生しないかというとケースによっては、発生してしまう場合があります。

例えば、一日6時間で労働日は月曜日から土曜日の週36時間の職場があったとします。このような職場で、日曜日に出勤させて振替休日として、翌週の平日をしてした場合、結果として、日曜日の出勤を含んだ週には休日ない状態になってしまったときは、いくら振替休日を行っても休日労働の割増賃金が発生してしまいます。これは、労働基準法第35条第1項で「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」としているためです。

ちなみに、この「毎週」の「週」とは、必ずしも日曜日からはじまり土曜日までのいわゆる暦週とする必要はありませんが、例えば、火曜日から翌週の月曜日までをその会社で1週間と決めたいのであれば、それを就業規則等に規定しなければなりません。それらの規定が無ければ日曜日から月曜日の暦週が週の単位とされ、その間で1日の休みを確保しなければなりません。

上記のような場合に休日労働の割増賃金の発生を防ぐために、変形休日制というものがあります。これは、どういうものかというと、労働基準法35条第2項に次のような条文があります。

「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」

つまり、週1日の休日ではなく、4週間の中で4日の休日を確保できていれば良いということになります。よって、ある週には休日がなくでも翌週に2日の休日が確保できてれば、問題ないので、先の例でも休日労働の割増賃金の発生はなくなります。
しかし、この変形休日制を採用するためには、この4週間の起算日を就業規則等で何月何日から始まる4週間なのかその起算日を明確に規定しておく必要があります。また、この変形休日制の採用によって、休日労働に対する割増賃金はなくすことができますが、通常の時間外労働に対する割増賃金まで回避することはできません。先の例だと、日曜日に出勤した週については1日6時間×7日=42時間なので、週40時間を超えてしまっているので、超えた分については25%の割増賃金が必要となります。

まとめ

如何でしたでしょうか?振替休日と代休の違いについては、ご理解いただけたのではないかと思いますが、より深いところまで見ていくと、特に割増賃金との関係については、分かりづらい点もあるかと思います。

実際、色々な会社の給与計算等を見させていただくと、代休や振替休日を行った月の給与計算が間違っているケースというのは非常に多く見られます。
ただ、支払う会社側も給与を受け取る労働者側もどちらも、その間違いに気付いていないことが多く、そのまま何事もなく過ぎてしまっている場合がほとんどです。
もし、振替休日や代休を頻繁に行っている会社は、一度、本当に今の計算方法が正しいのかどうか見直してみてはいかがでしょうか?

 

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