禁止しているマイカー通勤をしていた従業員が事故。労災はおりる?

今回ご紹介するのは、通勤災害による労災保険に関してです。

ご相談の内容は以下の通りです。

「当社では、従業員のマイカー通勤を全面的に禁止していますが、先日、会社に黙ってマイカー通勤をしていた従業員が、そのマイカー通勤の途中で、事故を起こし入院することになりました。相手方もいるようで、双方とも重症のようです。会社が禁止しているにもかかわらず、マーカー通勤をした場合でも労災は下りるのでしょうか?また、それとは別に、この従業員に対して、懲戒処分を行っても問題ないでしょうか?」

というものでした。

地方だとマーカー通勤を禁止しているところは少ないですが、都心部だと禁止している会社もあります。これは、マイカー通勤を認めている場合、途中で事故を起こした場合、事故を起こした本人が責任を負うのはもちろんですが、状況によっては、会社が一部の責任を負う場合があるため、それを未然に防止する意味合いで禁止としていると思われます。マイカー通勤が禁止されている中で、通勤途中で事故を起こした場合、通勤災害として労災保険から給付が受けられるでしょうか?受けられるとなった場合でも、この従業員に対して何らかの懲戒処分を行うことはできるのでしょうか?このあたりを詳しく解説したいと思います。

禁止のマイカー通勤中の事故、労災認定されるか?

労災保険法上、通勤災害とは、どのように定義されているかをまず見てみたいと思います。

労災保険法の第七条の第一項は以下のように規定しています。

「この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
1 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
2 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
3 二次健康診断等給付」

2号で労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡に関しても労災保険から給付をするとなっています。では、ここでいう「通勤」とはどういうものを指すのでしょうか?これについても法律上明確な規定があります。同じく第七条の第二項です。

「前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
1 住居と就業の場所との間の往復
2 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
3 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)」

つまり、簡単に言うと労災保険法で言う「通勤」とは、家と職場を合理的な経路と方法で往復すること言えます。

労災保険法では、どのような手段(自動車なのか自転車なのか電車なのか)で通勤するかについては定めておらず、合理的な方法であれば、どんな手段で通勤しても構わないということになります。そのため、会社がマイカー通勤を禁止していても、保険給付をおこなう行政側からみて、マイカーによる通勤が「合理的な方法」であると判断されれば、問題なく労災保険から給付が受けられることになります。泥酔して運転していたとか、危険薬物を服用して運転していた等の特別な事情が無い限りは一般的に見て、車で通勤すること自体は、合理的な方法と認められるので、今回のご相談者のケースでも、労災はおりることになります。

 

通勤災害と認定された場合でも、懲戒処分できるか?

就業規則等で、マイカー通勤が明確に禁止されている中で、マイカー通勤をしていた事実が発覚したのであれば、これに対し就業規則に則って、服務規律違反として懲戒処分を課すことになんら問題はありません。これは、通勤災害として認められたか否かは、全く関係ありません。そのため通勤災害と認められたからと言って、懲戒処分ができないということはありません。
おそらくですが、ご相談者は、通勤災害ではなく仕事中の事故(業務災害)の場合に、解雇制限等がつくので、それとの関係で通勤災害においてもなんらかの制限があるのでは?と思われたかもしれません。
先ほども述べましたが、そういうことはありませんので、懲戒処分は可能です。
では、仮に、会社側がマイカー通勤の実態を知っていたが、黙認していた場合はどうでしょうか?黙認していたとしても、労災に関しては変わりませんし、使用者責任等を問われることもないと思われますが、懲戒処分の決定に際しては、一定の配慮はなされるべきかなとは思います。

まとめ

以上のように、就業規則に違反して、マイカー通勤を行って事故を起こしても、労災からの給付は受けられることになります。ただ、労働者の方は、会社側も理由があって規制しているわけですから、くれぐれも就業規則に従った通勤方法で通勤してください。

 

 

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