自動車運転業務の2024年問題 その1

弊事務所の顧問先の中にも何社か運送業をされている会社が何社かありますので、今回は運送業における2024年問題について解説していきたいと思います。

2024年問題は、簡単に言えば自動車運転業務において、時間外労働の上限規制がかけられることによって発生する様々な問題を指します。
(分かりやすくお伝えするため、例外はできるだけ無し解説しますのでご了承ください)

  

時間外労働上限規制の概要

ここで少し時間外労働の上限規制についておさらいしたいと思います。
働き方改革関連法の成立により、時間外労働に規制がかかりました。
といっても今まで規制がなかったわけではありません。
原則として、三六協定を締結して、月45時間、年360時間までという規制はこれまでもありました。ただ、この規制は法律上のものではなく「大臣告示による上限」規制でした。大臣告示と言っても、実務上は、特別条項のない月45時間、年360時間を超える三六協定を締結しても、労働基準監督署では受付されないので、実質的には規制がかかっていたと言えます。
大きく変わったのは、三六協定に特別条項がある場合です。特別条項というのは、やむを得ない事情が発生した場合に、先の「月45時間、年360時間」を超えて、時間外労働を可能にするものです(特別条項を設けても年6回までしか月45時間を超えられない)。
この特別条項を設けた場合は、三六協定に特別条項を発動した場合は、その月は100時間まで時間外労働を可能にするといった内容で協定するわけですが、この超えることができる時間の規制はありませんでした。なので100時間を超えるような時間を協定することも一応可能でした(ただ、これについても実務上は、極端に長い時間を定めた場合は、監督署の窓口で修正を求められます。ただ、法的拘束力は無いので強引に提出することは可能です。)

それが、この働き方改革で法律による上限が定められ、
まず、いままで大臣告示による上限であった「月45時間、年360時間」という規制が法制化されました。
さらに特別条項の場合には規制が無かった上限が
「年720時間、複数月平均80時間、単月100時間未満」
という上限が定められました。
「年720時間、複数月平均80時間、単月100時間未満」はあくまで特別条項を設けた場合ですので、ここは間違わないようにしてください。

また、上記の規制は、大企業は2019年4月1日~、中小企業でも2020年4月1日~適用されています。

なぜ2024年問題と言われるか?

上記で解説した通り、時間外労働の上限規制は、大企業で2019年4月から、中小企業でも2020年4月から適用されているのに、なぜ2024年が問題なのかというと、上記規制を猶予されている事業・業務があったためです。

「建設事業」「自動車運転の業務」「医師」この3つについては、上記の規制が猶予されておりました。

それが、2024年4月からは、猶予期間が終わり、規制が始まるため「2024年問題」とされています。
2024年4月から規制が始まるわけですが、一般の事業とは異なる部分もあります。
今回は、「自動車運転の業務」についてのみ解説します。

2024年4月からの時間外労働上限規制

「自動車運転の業務」の2024年4月からの規制は、
「複数月平均80時間、単月100時間未満」
については一般の事業と同じです。
異なるのは、年間の上限時間です。
一般の事業は「年720時間」でしたが、自動車運転の業務に関しては、これが
「年960時間」となります。
ただ、2024年問題は、なにも年間の上限規制が適用になっただけという話ではありません。
もっと大きな影響があるため2024年問題とされています。
長くなりましたので、次回で詳しく解説します。

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