自営業者が65歳目前に亡くなったら年金は掛け捨てになるか?

もし仮に、ずっと自営業の方は、国民年金の第1号被保険者として、最大で40年間自分で保険料を納めてきたことになります。保険料を納めるのは60歳までですが、老齢基礎年金を受給できるのは65歳からです。では、もし、60歳から65歳までの間にその方が亡くなったら、40年分の保険料はすべて掛け捨てになってしまうのでしょうか?この点について解説したいと思います。

  

現在の国民年金保険料は 月額16,410円です。仮にこれを40年間納めたとしたらいくらになるでしょうか?
16,410円×480月=7,876,800円
800万円近い保険料をおさめることになります。これが掛け捨てになるのは避けたいところです。
一般の生命保険であれば、掛け捨ては当然だと思われる方が多いとは思いますが、公的年金が掛け捨てになるのは、納得がいかないという方が多いのではないでしょうか?

遺族基礎年金

公的年金は掛け捨てにならないために、遺族基礎年金があるではないかと思われる方も多いと思いますが、表題の事例ではあまり現実的にはありません。

遺族基礎年金が受給できるのは、その方の「子供」か「子供がいる配偶者」です。単なる「配偶者」では受給できないのが特徴です。ここで言う「子供」とは18歳に到達した後、最初の3月31日までの子を言います(20歳未満で障害年金の等級が1級又は2級の子供も含みます)。要するに一般的に言えば高校生以下の子供ということになります。この子供がいなければ、そもそも受給ができませんし、この子供がいたとしても受給できるのは子供が高校を卒業するまでということになります。表題の例では、この自営業の方が60歳から65歳に亡くなった場合ですので、年齢的に、高校生以下の子供がいる方はかなりの少数であると言えます。また、仮にいたとしても高校卒業が近い子供である可能性が高いのではないでしょうか。表題のケースでは多くの遺族は、遺族基礎年金が受給できないか受給できたとしも1~2年程度の可能性が高いと言えます。
ちなみに遺族基礎年金の額は
780,100円+子の加算額
になります。
子の加算額は、第1子と第2子はそれぞれ224,500円、第3子以降は一人につき74,800円になります。

寡婦年金

遺族基礎年金に似た制度にもう一つ「寡婦年金」というものがあります。こちらのほうが受給できる方は多くなります。
どういった制度かというと、第1号被保険者として10年以上国民年金保険料を納めた方が亡くなった場合に、その方と10年以上婚姻関係にあった妻に対して支給されるものです。

支給金額は、この旦那さんが第1号被保険者だった期間から計算した老齢基礎年金の4分の3となります。仮に満額を受給できるはずだった場合、今年度(令和1年度)で計算すると、老齢基礎年金の満額は780,100円ですので、その4分の3ということになると、585,075円ということになります

受給できる期間は、妻が60歳から65歳になるまでということになります。
ここが一番のポイントになります。例えば、夫が亡くなった時に妻がすでに65歳になっていたら、受給できないことになります。夫が亡くなったときに妻が64歳であれば1年のみの受給ということになります。最大5年間受給しようと思ったら、妻は夫が亡くなった時点で60歳未満である必要があります。

寡婦年金の注意点としては、まず「妻」しか受給できない点です。仮に夫婦で自営業をやっていて、夫も妻も同じように第1号被保険者として毎月二人分の国民年金保険料を納めていたとしても、妻が亡くなった場合は、夫は寡婦年金を受給できません。

死亡一時金

上記2つ以外にもう一つ受給できるものがあります。それが「死亡一時金」です。これは、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間が36ヶ月以上納め、老齢基礎年金も障害基礎年金も受給しないまま亡くなった場合に、その遺族に対して、一時金が支給されるものです。
金額は、保険料を納めた月数によって以下のように6段階に分けられます。
36ケ月以上180ヶ月未満・・・120,000円
180ヶ月以上240ヶ月未満・・・145,000円
240ヶ月以上300ヶ月未満・・・170,000円
300ヶ月以上360ヶ月未満・・・220,000円
360ヶ月以上420ヶ月未満・・・270,000円
420ヶ月以上・・・320,000円

受給できる遺族は、亡くなった方と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、一番順序が上の方にのみ支給されます。
もし配偶者と子供と父母が遺族の場合は、配偶者にのみ支給されるということです。

この死亡一時金の注意点としては、この方が、過去に障害基礎年金を受給していた場合は支給されない点と、その遺族がもし、上記で説明した「遺族基礎年金」を受給できる場合は、そちらが優先され死亡一時金は支給されない点、また、上記で説明した寡婦年金を受給できる場合は、この死亡一時金と寡婦年金のどちらかを選択して受給することになります(一般的には寡婦年金を受給したほうが受給額が多くなると思います)。

表題のように、国民年金の第1号被保険者として長く保険料を納めてきた方が、60歳から65歳の間になくなった場合に、遺族が受給できる可能性があるのは上記の3つということになります。

まとめ

上記で説明したもののうち、遺族基礎年金や寡婦年金が受給できるのであれば、まだいいですが、表題の例だと、「死亡一時金」のみしか受給できない可能性も高いです。死亡一時金は最高でも、わずか32万円です。
800万円近い保険料を納めてもわずか32万円しか返ってこない可能性があるということです。
健康や事故には気を付けて長生きしたいものです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です