有給休暇義務化で迷う?ダブルトラック期間とは

有給休暇の5日間の取得義務化が始まって間もなく1年が経とうとしていますが、多くの会社が対応を済ませていることと思います。その中で、有給休暇の管理を簡略化する目的で、基準日制を採用した会社も多いようです。
そこで対応に迷うであろうダブルトラック期間について解説したいと思います。

  

基準日制について確認

まずは有給休暇の基準日制について確認しておきましょう。
有給休暇の発生日は、通常の場合で言うと、入社日から6ヶ月後に10日発生し、そこから1年後、つまり、入社からカウントすると1年6ヶ月後に11日発生し、その後は1年後ごとにその勤務年数に応じた有給休暇が発生することになります。
そのため、各労働者の入社日によって、有給休暇の発生日が異なるため、人数が多いとその管理が大変になります。
そこで、この煩雑さを解消するために、有給休暇の発生日を統一し、この日を基準日として有給休暇を管理する方法があります。
例えば、4月1日を基準日とした場合は、通常の場合その後の5月1日に発生する方も、翌年の3月1日に発生する方もすべて4月1日に繰り上げて付与するということになります。
但し、入社後最初の有給休暇については、6ヶ月後に発生し、2回目以降の発生日のみ基準日に統一する会社もあれば、入社日に前倒しで10日分(又は入社月に比例)を付与し、その後は基準日に付与するという会社もあります。このように、入社後最初の有給休暇については、各社によって対応がまちまちですが、2回目以降の付与日については基準日に統一されることになります。
会社としては、通常の場合に比べて前倒しで付与することになりますが、その分、管理が楽になることになります。

有給休暇の取得義務化とは?

有給休暇の取得義務化についても簡単に確認しておきましょう。
有給休暇の取得義務化とは、会社側は、労働者に対し、その労働者ごとに有給休暇を付与した日から1年以内に最低でも5日間は有給休暇を確実に取得させなくてはならなくなりました。
但し、この義務化は年10日以上有給休暇を付与される方のみが対象なので一部のパートの方は対象外となります。
今回ポイントとなるのは、有給休暇を付与した日から1年以内に取らせなければならない点です。

ダブルトラック期間とは

ダブルトラック期間とは、簡単に言うと、入社後最初に付与される有給休暇発生日とその次に付与される有給休暇発生日が異なるため、5日の有給休暇の使用義務の期間に重複が生じることを言います。
どのような基準日制を採用しているかは各社によってさまざまなので、ここでは入社から6ヶ月後に10日の有給休暇を付与し、その後は、基準日として4月1日に有給休暇を付与する場合を想定して解説します。

例として、2019年4月1日に入社、6ヶ月後の2019年10月1日に10日の有給休暇を付与、その後2020年の4月1日に11日を付与するものとします(その後は毎年、4月1日に付与)。

上記の場合、1年目の有給休暇については2019年10月1日から2020年9月30日までに最低5日の取得義務が発生し、2年目の有給休暇については2020年4月1日から2021年3月31日までに5日の取得義務が発生するため、2020年4月1日から2020年9月30日までの間は、1年目の有給休暇と2年目の有給休暇の取得義務の期間が重複することになります(この重複期間をダブルトラック期間といいいます)。図にすると以下のようになります。

厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 分かりやすい解説より

この場合、あくまで原則としては、2019年10月1日からの1年間に5日、2020年4月1日からの1年間に5日を取らせる必要があります。この場合、きっちりそれぞれの期間ごとで管理しておかないと間違えやすくなります。
そのため、この管理を簡便化するために、2019年10月1日から2021年3月31日までの18ヶ月に年平均5日を達成する形でも良いことになっています。
計算としては、18ヶ月÷12月(1年)×5日(年の義務日数)=7.5日となりますので、つまり、この18ヶ月の間に7.5日消化すれば良いことになります。
図にすると以下のようになります。

厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 分かりやすい解説より

まとめ

基準日制を採用していない会社は、このダブルトラック期間が生じることはないので、消化しなければならない日数で迷うことはありませんが、基準日制を作用している場合は、ほとんどの場合でダブルトラック期間が生じるので、法令違反にならないように注意して管理しましょう。

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