健康保険の扶養に入る条件、外れる手続とタイミングを詳細解説
会社の健康保険に入っていて、家族を被扶養者として健康保険に入れたいと考える場面は多いと思いますが、どういった家族が入れて、また、それはいつからOKなのか?実は正確に把握している人は少ないと思います。
例えば「35歳無職の息子」は扶養に入れるのか?「50歳パートの実姉」は?「離れて暮らしている義父」は?など、なかなか即答できる方は少ないのではないでしょうか?
また、逆に、様々な事由で、一旦、被扶養者として健康保険に入れた家族を扶養から外さないといけない場面というのもでてきます。その際、どのタイミングで外せばいいのか?また、外すのを忘れていたらどうなるのか?など、今回は健康保険の扶養に関する疑問に答えていきたいと思います。
(ここでご紹介するのは、あくまで会社で加入している健康保険です。自営業者などが加入する「国民健康保険」とは異なりますので、ご注意ください)
被扶養者にはどんな人がなれるの?
あらためて、どんな人が健康保険の被扶養者になれるのでしょうか?
同居していなくてもOKな人
以下の方は、被保険者の方と同居していなくても被扶養者になれる可能性があります。
・配偶者
・子供
・孫
・父母・祖父母など直系尊属(直系尊属とは、実の父母、祖父母、曽祖父の方などです。配偶者の父母等は該当しません)
よって、大学進学などで離れて暮らしている息子さんなどはもちろんOKですし、離れた実家に住んでみえる実のご両親や祖父母などもOKということになります。
同居が条件になる人
一方、同居していないと被扶養者になれない方は以下のとおりです。
・上記「同居していなくてもOKな人」以外の3親等内の親族
具体的には、例えば、甥や姪、叔母や叔父、あるいは配偶者の父母(義理の父母)、祖父母(義理の祖父母)、甥や姪の配偶者も含まれます。
甥や姪と同居するケースは珍しいですが、義理の父母と同居することは、あり得るのでその方たちはもちろん対象となります。
被扶養者になるための収入条件は?
上記の被扶養者になれる方であっても、収入が多い方は、被扶養者になることができません。ではいくらの収入未満であれば、被扶養者になれるのでしょうか?
扶養に入れるのは原則として年間収入が130万円未満の方です。ただし、60歳以上の方や障害者の方は、年間収入180万円未満となります。
よく勘違いされている方がいるのですが、これは、前年の収入ではありません。現時点で、将来に向かって、この収入が得られる予定の方ということになります。よって、パートなどで働かれている方は、現在の月収が108,333円を越えている場合は、扶養に入ることはできません。逆に、例えば、前年の収入が1,000万円など高額であっても、退職して、無職のため現時点での収入が0円であれば、扶養に入ることは可能です。
また、この収入というのは、お給料だけではありません。例えば、年金の受給も収入に入りますし、雇用保険の失業給付も収入に含まれます。これ以外に、健康保険から出る出産手当金や傷病手当金も収入になります。
この中で、よく問題になるのは雇用保険の失業給付(失業保険)ですね。例えば、共働き夫婦だった家庭で、奥様が仕事を辞めた場合、失業給付を受給すると原則として、受給中は、扶養に入ることはできません。ただし、自己都合退職した場合、通常、3ヶ月の給付制限期間(要するに手続を取ってから3ヶ月後しか失業給付がもらえない)が設けられますが、この給付制限期間中は扶養にはいることができます。ただし、受給を開始したら扶養から外れなければなりません(後ほどもう少し詳細に解説します)。また、あまり無いケースですが、失業給付の日額が3,611円以下の場合は、失業給付を受給していても扶養に入ることができます。この3,611円というのは、先ほどの収入要件130万円を360日で割った数字になります。
この130万円や180万円という数字は、聞いたことがある方も多いと思いますが、実は、これ以外に、もう一つ、収入に関して要件があるのですが、あまり知られていないようです。その要件というのは、
・同居の場合は、被扶養者の収入が、被保険者の収入の半分未満であること
・別居の場合は、被扶養者の収入が、被保険者から受ける仕送り額より少ないこと
です。「え?」と思われた方も多いのではないでしょうか?
どういう場合に、これが問題になるか具体例で見てみましょう。
例えば、同居しているお父さんを扶養に入れたいと考えたケースです。ご自身(被保険者)の収入は月収25万円だったとします。しかし、お父さんの年金額が月額13万円(年間156万円)だったとすると、お父さんは60歳を超えているので、最初の要件である180万円未満はクリアしているのですが、息子さんの収入の半分を超えてしまっているので、原則として扶養に入れないことになります。
次のケースとして、離れた実家に一人暮らししているお母さんを扶養に入れたいと考えた場合です。お母さんの収入は年金の月額8万円のみだった場合、当然180万円を下回っているので、最初の要件はクリアしているのですが、特に定期的に仕送りをしていなかった場合、この場合も原則として扶養にいれることはできません。
あくまで、実態として、被扶養者の生計を被保険者が維持しているという事実が必要ということになります。
(ただし、日本年金機構が特別に認めた場合は、被扶養者の収入が被保険者の収入の半分以上であっても認められることがあります)
扶養に入れる年齢は?
被扶養者の年齢に関する規定は、ありませんので、原則として年齢は問わないことになります。
そのため冒頭で紹介した「35歳無職の息子」や「50歳パートの実姉」などの方でも収入等の要件を満たしている限り被扶養者になれることになります。
ただ、1点、被扶養者の方が、75歳になった場合は、その方たちの健康保険は「後期高齢者医療制度」に移行されますので、扶養からは外れることになります(65歳以上75歳未満の方でも一定の障害がある場合など、後期高齢者医療制度へ移行される場合がありますので、その場合は、移行した日で扶養を外れることになります)。
被扶養者から外すタイミングは?
扶養に入れることもあれば、当然、外す場面も出てきます。ここでは場面ごとにいつ外すべきなのかを解説したいと思います。
就職し、就職先の健康保険に加入したとき
最も多いであろう場面がこれです。例えば、大学生や高校生のお子様が、就職し、就職先の社会保険(健康保険)に加入したときは、就職した日をもって扶養からは外れるので、会社に就職日を伝えましょう。お子様に限らず、例えば、専業主婦の奥様が、就職し健康保険に加入したとき、定年退職したお父様を扶養に入れていたが、再就職されたときなど、どちらにしても、被扶養者の方が、就職した場合は、就職日で扶養を外します。
離婚したとき
離婚した場合は、原則として、離婚日で扶養から外れることになります。被保険者の方がお子様を養育しない(相手方が引き取る)のであれば、お子様も扶養から外れることになります。
失業給付(失業保険)を受給するとき
先ほども少し触れましたが、例えば、共働きの夫婦で、奥様が会社を退職した場合、そのまま再就職せず失業給付の受給をしないのであれば、退職日の翌日から扶養に入れるのですが、失業給付を受給する場合は、一旦、退職日の翌日で扶養に入り、その後、給付制限期間(自己都合退職であれば通常3ヶ月)までは、そのまま被扶養者でいられますが、受給を開始したら、扶養から外さなければなりません。いつから外れるかですが、失業給付が振り込まれた日ではありませんので注意してください。給付支給対象となった最初に日で外すことになります。
亡くなったとき
被扶養者の方が亡くなったときは、死亡日の翌日で扶養を外すことになります。
以上が、代表的なものですが、これ以外にも外さなければならない場面というのはありますので、その都度、適切に対応しましょう。
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