労働基準法で定める「付加金」とは何か?

今回は、少しマイナーな話題ですし、ほとんどの方は接することもない内容なので、興味のない方は呼び飛ばしてください(最近、私のほうでは、この付加金に接する機会があったので、これを機に解説したいと思います)。

  

付加金とは何か?

付加金と聞くとまずは、付加年金のように国からもらえるお金かなと考えそうですが、全く違います。

付加金は、労働基準法第114条に規定されています。まずは、条文を見てみましょう。

労働基準法
第114条(付加金の支払)
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

労働基準法

これだけ読んでもよく分からないので、少しかみ砕いて説明します。

使用者(会社)が、解雇予告手当、休業手当、有給休暇中の賃金を支払わなかった場合に、労働者の請求により「裁判所」が、これらの未払い金に加えて、同一額の「付加金」の支払いを「命じることができる」という内容になっています。

一番多いケースとしては、残業未払いで会社が労働者から訴えられているケースです。

実際の未払い分に加え、同額を付加金として支払いを命じられるため、会社は、本来の額の2倍支払う必要があるということです。例えば、残業(割増賃金)の未払い額が150万円あったとしたら、総額の150万円の付加金の支払を命じることができ、結果として300万円の支払いが必要ということです。

つまりは、会社に対する制裁金の意味合いがあると思っていただければ結構です。

どんな場合でも付加金の支払が必要なわけではない

この付加金ですが、割増賃金の未払いが発覚して、労働者が労働基準監督署に訴えただけでは、その支払いの対象ではありません。

条文にも記載がありますが、付加金の支払を命じるのはあくまで「裁判所」となているところに注意が必要です。つまり、支払いを命じるかどうかの裁量は裁判所が持っているということになります。

労働者が労働基準監督署に残業未払いを訴えるケースは、非常に多いですが、一般的には、労働基準監督官が事実確認を行い、未払いが認められれば、是正勧告という形で会社に支払い命令が出て、それを会社が労働者に支払って終結する場合がほとんどなので、付加金の話がでることもありません。この付加金はあくまで、労働者が裁判所に訴えて、判決が確定して初めて支払い義務が発生するものとなります。

また裁判に訴えられたとしても、口頭弁論終結時までに、未払いとなっている割増賃金全額と遅延損害金の支払が完全に完了している場合は、裁判所は、付加金の支払を命じることができないと解されており、最高裁もそのように解しています。

つまり、実際に付加金の支払が命じられるケースというのは、きわめて稀だということになります。

まとめ

割増賃金の未払いで、裁判にまで発展するケースで、弁護士さんの業務をサポートするケースは、私も何件か経験がありますが、だいたいは、和解で決着します(裁判所も通常、和解を勧めます)。

そのため、付加金の支払いまで発生するケースというのは、私の経験上ではありません。ただ、今回は、その話までは出たケースを経験したので、解説してみました。

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