1.特定労働者派遣事業の在り方について

e783c0b227dc49dc85942fbd25baae04_s法改正前までは、派遣事業者は、登録型と常用雇用型の両方をあつかう「一般労働者派遣事業」と常用雇用労働者のみをあつかう「特定労働者派遣事業」に分かれていました。一般労働者派遣事業は許可制で、事業所数は17,936事業所、特定労働者派遣事業は、届出制で56,686事業所がありました。

法改正の背景として、特定労働者派遣事業を行う事業者の中で、本来は常用雇用の労働者のみ派遣が可能なはずなのに、短期の有期契約労働者を派遣しているつまり、特定労働者派遣事業なのに一般労働者派遣事業を行っている事業者が多く存在したことがあげられます。また、行政処分の件数も、一般派遣にくらべて特定派遣のほうが圧倒的に多いという事実もあり、こういった背景の下、業界全体の健全化のために、特定労働者派遣事業は廃止し、全ての労働者派遣事業を許可制に移行することになりました。

○今回あらたに加わる許可基準と許可条件

基本的には、従来の一般労働者派遣事業の許可基準が適用されますので、例えば、資産要件として基準資産額2,000万円以上、現預金額1,500万円以上、基準資産額が負債総額の7分の1以上はかわりません。
また、労働・社会保険への加入義務や条件を満たした派遣元責任者の設置、概ね20平米以上の事務所など基本的な部分はかわりません。
ただ、従来の基準に加えて以下が追加されています。
・派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること。
・教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間は保存していること
・無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと
・雇用契約期間内に派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責めに帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法第26条にもとづく休業手当を支払う旨の規定があること
・派遣労働者に対して、労働安全衛生法第59条に基づき実施が義務付けられている安全衛生教育の実施体制を整備していること。
・雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行ったことを労働局から指摘され、それを是正していない者でないこと

2.雇用安定措置について

従来の派遣法では、派遣元事業者は、派遣契約終了後の派遣労働者に対して雇用継続を図る責務はありませんでした、これが派遣労働者の雇用の不安定さに繋がっているとして、改正法では、派遣元事業者に対し、継続就業の見込みが一定期間以上あり、継続就業を希望する有期雇用の派遣労働者について、以下のいずれかを実施する義務が課せられました。
①派遣先への直接雇用の依頼
②新たな派遣先の提供(※能力、経験等に照らして合理的なものに限る)
③派遣元での無期雇用
④その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(次の派遣先が見つかるまでの有給の教育訓練や紹介予定派遣など)
※①を講じた場合に、直接雇用されなかったときは、次に②~④までのいずれかを講じなければなりません。
※なお、これらの内容は事業報告にも盛りこまなけらばなりません。

3.派遣労働者のキャリアアップの推進のあり方について

派遣労働者は、正規雇用労働者に比べ職業能力形成の機会が乏しいため、改正法ではキャリアアップ支援が義務化されました。

◎派遣元が講ずべき措置

○労働者派遣事業の許可・更新要件に「キャリア形成支援制度を有すること」を追加→労働局に要件を満たす教育訓練計画を提出
○派遣元は、派遣労働者に対し、以下を実施する義務が課せられます。
・計画的な教育訓練
・希望者に対するキャリア・コンサルティング(無期雇用の派遣労働者には、長期的なキャリア形成を入れて実施)
○教育訓練等の実施状況について事業報告を求め、行政がチェックし、必要な指導を実施
○個人ごとの教育訓練等の実施状況は、派遣元管理台帳に記録し、その者が退職後3年間は保存。

◎派遣先が講ずべき処置

派遣先は、派遣元の求めに応じ、派遣労働者の職務遂行状況や遂行能力の向上度合など派遣元によるキャリアアップ支援に必要な情報を派遣元に提供する努力義務が課せられます。