労働者派遣法により、すべての派遣事業主には「マージン率」をはじめとする情報公開が義務付けられています。しかし、このマージン率を「単なる利益」と誤解しているスタッフや派遣先も少なくありません。

本記事では、社労士の視点から、トラブルを防ぐための正しい計算方法と、公開時の実務上のポイントを詳しく解説します。


1. マージン率の公開は「義務」:怠った際のリスク

平成24年の法改正以降、マージン率などの情報提供は法的義務となりました。

  • 公開方法: 常時インターネット(自社HPや人材サービス総合サイト)で閲覧できる状態にするか、事業所に書類を備え付ける必要があります。
    労働局からは、インターネットでの提供を求められます。自社ホームページが無いのであれば、人材サービス総合サイトで公開しましょう。

  • 違反のリスク: 労働局による定期調査や是正指導の対象となります。改善されない場合は、最悪の場合、事業停止命令や許可の取消しに繋がるリスクもゼロではありません。

「忘れていた」では済まされない、コンプライアンスの基本と言えます。


2. 間違いやすいマージン率の計算方法

マージン率は、単純な売上総利益率とは異なります。以下の計算式に基づき、小数点第2位を四捨五入(または切り捨て)して算出するのが一般的です。

マージン率 =(派遣料金の平均額-派遣労働者の賃金の平均額)/派遣料金の平均額×100

注意:ここでの「賃金」に含まれるもの

賃金には、基本給だけでなく、賞与、手当、交通費(非課税限度額内を含む)をすべて含めて計算します。派遣料金についても同様に、消費税を除いた「税抜き」ベースで統一して算出するのが実務上のセオリーです。


3. マージンに含まれる「コスト」の内訳を明示する

ここが最も重要な実務のポイントです。

マージン率が「30%」と表示されていると、労働者は「会社が3割も中抜きしている」とネガティブに捉えがちです。しかし、この30%の中には以下の膨大なコストが含まれています。

  1. 社会保険料の事業主負担: 約15%前後(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)。

  2. 有給休暇の費用: スタッフが有給を取得した際の賃金も派遣元が負担します。

  3. 教育訓練・キャリアアップ支援費: 研修講師の謝礼、eラーニングの利用料、研修中の賃金。

  4. 募集費・広告費: 求人サイトへの掲載料や採用担当者の人件費。

  5. 運営経費: オフィスの賃料、光熱費、システム利用料、そして派遣元責任者の人件費。

これらを差し引いた後に残る「営業利益」は、一般的に1〜5%程度と言われています。公開時には、これらの内訳を円グラフや箇条書きで併記することで、スタッフの納得感を高めることができます。

よくSNS等で派遣会社はマージンを取りすぎだみたいな書き込みを見ますが、実際には、派遣会社の利益は、想像しているよりずっと少ないです。特に同一労働同一賃金実施後は、派遣会社の利益はかなり圧縮されており、倒産する会社も増えてきています。


4. 令和時代の情報公開:必須項目リスト

マージン率以外にも、以下の情報をセットで公開する必要があります。

  • 派遣労働者数: 直近の事業年度末日時点の人数。

  • 派遣先数: 直近の事業年度中に派遣を行った事業所数。

  • 教育訓練に関する事項: どのようなキャリアアップ教育を実施しているか(具体的に)。

  • 労使協定の締結状況: 「労使協定方式」か「派遣先均等・均衡方式」か、およびその対象範囲。

  • 福利厚生に関する事項: 慶弔見舞金や施設の利用など。


5. 実務上の「トラブル防止」チェックリスト

公開にあたって、以下の点に漏れがないか確認しましょう。

  • データの更新: 毎事業年度終了後、速やかに(遅くとも数ヶ月以内には)最新の数字に更新しているか。

  • アクセス性: 自社サイトのトップページから、1〜2クリックで到達できる場所に掲載されているか。

  • キャリアアップ計画との整合性: 公開している「教育訓練」の内容が、労働局に届け出ている計画書と一致しているか。


6. まとめ:適正な運営が「良い人材」を惹きつける

マージン率を隠さず、かつその内訳(社会保険料の負担や教育研修への投資)を誠実に説明している会社は、労働者にとっても安心感があります。

「計算方法が合っているか不安」「労働局の調査に備えて一度チェックしてほしい」という事業主様は、ぜひ派遣法の実務に詳しい当事務所までご相談ください。